レベル0――死んで、殺されて、そしてオレは最強になる。~転生スキルの捨てられた少年~

十本スイ

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第二十七話

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 ――今、写楽たちは【ニッケア山岳】という場所の麓までやって来ていた。

 何故ここへ来たのかというと、ここにいるモンスターには面白いスキルを持った存在がいるからだ。

 その名も――《空歩くうほ》。その名の通り、空中を歩くことができる不思議なスキルのこと。

 それがあれば、写楽もまた、空を飛べずとも、空島まで行くことができると踏んだ。この情報を持っていたのはノージュであり、彼女の案内でここまでやってきたというわけである。

「しかし、貴様の言うように、本当に《空歩》を体得することができるだな?」
「ああ、けど一回では無理かもしれないけどな」

 ランダムに異能を獲得するので、お目当てのものを引き当てるのは難しいかもしれない。まあ、そのモンスターがそのスキルのみしか持っていないのであれば一回で確実だが。

「よく分かりませんけど、嘘はついてないですね」
「コニムたちに嘘をつく必要がないしな。同じ旅をしている者同士だし、それにコニムたちは自分のことを教えてくれた。だったら今度はオレの番だ」
「でもモンスターからスキルを体得できるスキルとは、聞いたこともないがな。普通スキルというものはレベルを上げて自然に身につくか、誰かに教わって習得するかなどだ。モンスターから学ぶというのは初めて聞くぞ」
「学ぶんじゃない。手に入れるんだ」
「む? 何か違うのか?」
「まあ、見ていればいい。実際にやってみせた方が早いし、な」
「それもそうですよ、お姉ちゃん」
「ではその時を楽しみにしていようか」

 ノージュは少し渋々といった感じではあったが、それ以上は追及してはこなかった。
 三人で山岳の中腹へと登りかかった時、ノージュが突然何かに気づいたようにハッとなって、

「おい、お前たち! 今すぐに木陰に隠れるぞ!」

 そう言って彼女はコニムを抱き、写楽も咄嗟に彼女を追った。

「おい、一体何が――」
「しっ、上を見ろ」
「ん……あ!」

 写楽の視界に飛び込んできたのは、見覚えのある者たちの姿。空を自由に飛び回り、眼下を探るように視線を動かしている。

「……魔人……か」
「ああ、モヴィーク王の手下だろう」
「お、お姉ちゃん……」
「安心しろ。コニムは私が守る!」

 写楽は空を仰ぎながら少し疑問を浮かべていた。

(……おかしいな。奴らの探し物が、コニムたちなら、何故まだこんなとこにいるんだ?)

 実はこの【ニッケア山岳】は、初めて写楽が彼らを見つけた時に、飛んできた方角にあったのだ。しかも身を隠すにはもってこいでもある木々が多い場所なので、まず先にここを探すのは自然の成り行きだろう。

 そしてここにいなかったから、【トイスの村】にやって来て情報を集めようとした。それが写楽の推測。

(まだ調べていないところがあったから? それともまだ調べていなかったから?)

 前者はともかく、後者はない可能性が高い。写楽なら、まず先に身を隠しそうな場所を優先して探す。その一つがここ、でもある。

 そして彼らは恐らくここを通過して村へとやってきた。……きっと、探したはずだ。

(さらに言えば、逃げ帰って行った方角は反対方法だった。わざわざ何の根拠もなく、またここに探しにくるなんてことがあるか? それか、目的がまた別にある……?)

 考えても結局のところは分からない。とりあえずは、彼らが過ぎ去るのを身を潜めてやり過ごす方が良いだろう。

 実際どれだけの数の魔人が調査に乗り込んできているか分からない。下手に騒げば周囲を一気に囲まれた上、増援を呼ばれたら面倒である。

「仕方ない。このままでは拉致があかん。私が一気に奴らを――」
「待て! ここは耐え忍んだ方が良い!」
「んな!? 貴様らあんな奴らに私が負けるとでも思っているのか!」
「そういうことじゃない! 敵の数も不明だし、下手に動かない方が良いと言ってるんだ!」
「ねえ、お姉ちゃん、わたしもそう思います」
「む……コニムもか?」
「はい」
「…………仕方ないな。コニムが言うなら――」
「しっ!」

 今度は写楽が黙るように指示を出す。何故なら近くに魔人の二人が降り立ったからだ。

「――おい、見つかったか?」
「いいや。だが確かにこっち方面に向かったっていう情報はあった」
「そうだな。【トイスの村】の連中を脅してやるとすぐに吐きやがった」

 どうやら奴らは村の人たちから、コニムたちの情報を得たようだ。

「何の用事でこの山に来ているのか分からんがな。依然も調査したし、また同じ場所だ。いい加減飽きてくるな」
「はは、そう言うな。今度は別に逃げ回ってる奴が相手じゃないだろ?」

 ……何?

 思わず耳を疑う。コニムたちを見れば、彼女たちも呆気に取られてしまっている。

(どういうことだ? 逃げ回ってる奴らじゃ……ない?)

 コニムたちのことでは……ない。ならば一体彼らは誰を探して、ここへ来たというのだろうか。

「ふ~さっさと現れねえかなぁ。黒髪黒目のガキ」

 その言葉に息を呑む。
 黒髪黒目のガキ。【トイスの村】で得た情報。そしてこの山岳。
 それらを照らし合わせれば、馬鹿でも分かる答えが導き出される。

(奴らが探してるのは――――――オレ?)

 そしてその情報は、コニムにも衝撃的だったのか、小さく「嘘……?」と呟いた後、僅かに逸らした足で、地面に落ちていた木の枝を踏んでしまった。

「あ……!」

 ついでコニムが少し大きめの声を漏らし、すぐに自分の口を手で抑えるが……。

「……今、何か聞こえたよな?」 

 魔人の聴覚は誤魔化せなかったようだ。二人の魔人は、腰に携帯している武器をそれぞれ抜くと、ジリジリと間を詰めてくる。

(くっ! このままじゃ見つかる! だが……)

 コニムたちを見る。ノージュはいつでもやってやるといった雰囲気だが、せっかく彼女たちがここにいるということはバレていないのに、ここで出るのは確実に悪手だ。

(……なら)

 写楽は軽くコニムの頭に手を乗せて笑う。

「いいか、しばらくここにいてやり過ごせ」
「……え、あ、あの……」
「貴様、まさか……!」

 しかし二人の言葉の続きを確かめる間もなく、写楽はその場から走り外へと飛び出す。

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