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オレは広大な海原を眺めながら大きく溜息を吐く。
本当にどうしてこうなってしまったのか。
オレへの処罰が決定した時、ほとんどの者は罰が軽いと口にした。
特に王女や彼女を慕う者たちの反論が激しかったものだ。
しかし一度王が決定をしたことは、何が起きても覆らないようで、ヴィクス王もまた自分の前言を撤回することはなかった。
しかし当然オレは最後まで証拠もないと反発したし、矢垣にハメられたことも口にしたが、優秀な奴と何の力もないオレとでは発言力が違い……こうなった。
きっと日本なら科学捜査や実況見分などを何度も行って真実を追い求めるのだろうが、これが異世界の文化の違いなのか最悪だった。
「あの野郎……っ」
最後までオレを見る目が気に食わなかった。
まるで罪悪感など憶えていない、当然とでもいうような目つきだったのである。
「絶海の孤島……かぁ」
問答無用で首を刎ねられることはなかったが、コレもそれに等しい重罰だ。
こんな何もないところで生きていかないといけない。
文明の欠片もないだろう。剥き出しの自然だけがそこにある。
当然ナイフや地図もない。飲み水だって探さないとダメだし、そもそも食糧があるのかも疑わしい。
「こんなことならもっとサバイバル技術でも身に着けておくんだったな」
テレビや漫画など薄い知識しかない。これで生きていけるのか甚だ不安だ。
「とりあえず、この枷を何とかしますか」
両手を拘束している木造の枷。
オレは浜辺を歩き、どこかに岩がないかを探す。
するとすぐに大きな岩場が見つかり、都合が良いことにゴツゴツした岩で尖っている部分もたくさんあった。
両手を振りかぶり、尖った部分へ向けて枷が命中するように振り下ろす。
――バキッ!
一撃だけでも期待できる乾いた音が響いた。
「お、これなら何度かやればイケそうだな」
固定されている手首にかかる衝撃はかなりのもので痛いが、いつまでもこの状態でいられないし我慢するしかない。
そうして何度も何度も岩に叩きつけていき、十数回くらいで枷は見事に砕けた。
「ふぅぅぅ……いてて」
自由になった両手首回して、骨に異常がないかを一応確かめていく。
どうやらダメージはあるが動かせないほどじゃない。
「さて、まずは飲み水の確保だよね」
サバイバルの基本くらいは頭にある。
海水が目の前にあるし、火を起こすことができればやり方次第で飲み水は確保することはできるのだ。
幸いここにはいろいろな漂流物も流れている。中には大きな缶や洗面器みたいな器などもあるので、時間はかかるものの飲み水は入手できるはず。
問題は火を起こせるかどうか、だが。
ただこの火を起こす行為というのは、オレが思っている以上に困難だった。
にわか知識に従っていろいろ試してみたが、いっこうに火が点く様子がない。
これはまずい。それに船に乗っている間は飲まず食わずだった。
ずっとマストに縛られたままだったのだ。たまに降ってくる雨で喉を潤すくらいしかできなかった。
だから今、喉も乾いているし腹も減っている。結構限界が近いくらいに。
せめて飲み水があれば身体もまだ持つが、結構動いた上、火も起こせなかったということからの精神的ショックで、オレは疲労の頂点に達していた。
気づけばすでに満月が遥か上空からオレを見下ろしているような時間帯だ。
砂浜に寝転び、ぼんやりと満月を眺める。
……綺麗だなぁ。
こんな絶望的な状態なのに、それでも金色に輝く月は美しい。
オレはそのままゆっくりと瞼を閉じた。
本当にどうしてこうなってしまったのか。
オレへの処罰が決定した時、ほとんどの者は罰が軽いと口にした。
特に王女や彼女を慕う者たちの反論が激しかったものだ。
しかし一度王が決定をしたことは、何が起きても覆らないようで、ヴィクス王もまた自分の前言を撤回することはなかった。
しかし当然オレは最後まで証拠もないと反発したし、矢垣にハメられたことも口にしたが、優秀な奴と何の力もないオレとでは発言力が違い……こうなった。
きっと日本なら科学捜査や実況見分などを何度も行って真実を追い求めるのだろうが、これが異世界の文化の違いなのか最悪だった。
「あの野郎……っ」
最後までオレを見る目が気に食わなかった。
まるで罪悪感など憶えていない、当然とでもいうような目つきだったのである。
「絶海の孤島……かぁ」
問答無用で首を刎ねられることはなかったが、コレもそれに等しい重罰だ。
こんな何もないところで生きていかないといけない。
文明の欠片もないだろう。剥き出しの自然だけがそこにある。
当然ナイフや地図もない。飲み水だって探さないとダメだし、そもそも食糧があるのかも疑わしい。
「こんなことならもっとサバイバル技術でも身に着けておくんだったな」
テレビや漫画など薄い知識しかない。これで生きていけるのか甚だ不安だ。
「とりあえず、この枷を何とかしますか」
両手を拘束している木造の枷。
オレは浜辺を歩き、どこかに岩がないかを探す。
するとすぐに大きな岩場が見つかり、都合が良いことにゴツゴツした岩で尖っている部分もたくさんあった。
両手を振りかぶり、尖った部分へ向けて枷が命中するように振り下ろす。
――バキッ!
一撃だけでも期待できる乾いた音が響いた。
「お、これなら何度かやればイケそうだな」
固定されている手首にかかる衝撃はかなりのもので痛いが、いつまでもこの状態でいられないし我慢するしかない。
そうして何度も何度も岩に叩きつけていき、十数回くらいで枷は見事に砕けた。
「ふぅぅぅ……いてて」
自由になった両手首回して、骨に異常がないかを一応確かめていく。
どうやらダメージはあるが動かせないほどじゃない。
「さて、まずは飲み水の確保だよね」
サバイバルの基本くらいは頭にある。
海水が目の前にあるし、火を起こすことができればやり方次第で飲み水は確保することはできるのだ。
幸いここにはいろいろな漂流物も流れている。中には大きな缶や洗面器みたいな器などもあるので、時間はかかるものの飲み水は入手できるはず。
問題は火を起こせるかどうか、だが。
ただこの火を起こす行為というのは、オレが思っている以上に困難だった。
にわか知識に従っていろいろ試してみたが、いっこうに火が点く様子がない。
これはまずい。それに船に乗っている間は飲まず食わずだった。
ずっとマストに縛られたままだったのだ。たまに降ってくる雨で喉を潤すくらいしかできなかった。
だから今、喉も乾いているし腹も減っている。結構限界が近いくらいに。
せめて飲み水があれば身体もまだ持つが、結構動いた上、火も起こせなかったということからの精神的ショックで、オレは疲労の頂点に達していた。
気づけばすでに満月が遥か上空からオレを見下ろしているような時間帯だ。
砂浜に寝転び、ぼんやりと満月を眺める。
……綺麗だなぁ。
こんな絶望的な状態なのに、それでも金色に輝く月は美しい。
オレはそのままゆっくりと瞼を閉じた。
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