マモノの神様 ~魔物を作って育ててのんびりクラフトライフ~

十本スイ

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「この【扉の祠】は現在使用できないが、管理人レベルが上がることで、他の島々やダンジョンなどへ転移することができる」
 よしっ、と思わず心の中でガッツポーズをする。

 ヤタが言うように、いわゆるこの祠は様々な場所へテレポートできる機能を持っているのだ。
 これを利用すればこの島から遠く離れた大陸や島々に飛び、そこで生活している人々との交流も持つことができる。

 この島で栽培した作物などを人里で売って金に換えたり、ダンジョンに飛んで危険な魔物を捕獲、あるいは討伐することもできたりするのだ。
 ただし現在この【箱庭】の管理人として選ばれた僕のレベルは現在――〝1〟。
 このレベルが上がればこの祠の機能を解放して利用することができるのである。

「それでは次に畑について説明しよう」

 ということで再び戻ってきました、小屋と畑がある場所へ。
 小屋にはかまどと寝床だけがある殺風景な造りになっている。
 一応農具入れの棚があり、そこにはスコップや鍬などが収まっていた。

「さて、この畑であるが、ただの畑ではなく通称――《マモノ畑》」

 その名の通り、魔物という存在をこの畑で創作できるのである。

「まずはこの種を与えるから試しに植えることにしよう」

 僕はヤタからヒマワリの種のような細長い三つの水色の種を受け取った。

『NEW スライムの種を三個入手』

 やはりといったところか、『モモタンの実』の時と同じく目の前に表示された。

「しかしその前にまず畑を慣らすところから行う」

 ヤタに言われた通り、鍬を持ってゲームでやっていたように畑を慣らしていく。

「よし、その辺でいいだろう。本来の畑であるならば肥料なども必要になってくるが、この《マモノ畑》に必要なのは魔力だ」

 そう、管理人には魔力というステータスが与えられている。
 魔力は魔法やスキルを使う時に使用するパラメーターだ。そしてソレは《マモノ畑》には肥料としての価値になる。
 これもまたレベルが上がれば増えていくシステムだ。

「種をそれぞれ畑に植えるのだ。あまり近過ぎずな」

 知ってるよ、と思いながら畑に種を植えていく。

「うむ。次に魔力を注ぎ込むのだが、畑に近づくと種の概要を示すモニターを出すことができるはずだ」
「うん、出してるよ」

 畑に近づいたら種型のアイコンが浮かび上がったので、それをクリックしたのだ。
 それはエクセルのような表になっていて、左端の列は種の名前が記載されている。
 《スライムの種》と縦に三つ続けて書かれていた。

 そして上部には左から順に、

《種族名》《成長度》《属性》《必要魔力》《ランク》《備考》

 とある。
 今回の《スライムの種》に当て嵌められている情報を記載すると。

《スライム》《早い》《水》《3》《F》《※》

 と、こんな感じだ。 
 《種族名》はそのまま魔物としての名前で、《成長度》は生まれる早さを示す。早いの場合はゲーム内の時間で一日から三日で生まれた。

 《属性》は火、水、土、風、雷、氷、光、闇の八つ存在し、属性によって土の成分や水の量などの条件が異なってくる。
 《必要魔力》というのは、一日で必ず注ぎ込まないといけない肥料みたいなものだと考えてくれればいい。
 僕のステータスを見れば、魔力数値は――〝10〟。

 生まれるまで毎日魔力量を〝3〟ずつ与えなければいけない。一日でも足りなかったら失敗しダメになってしまう。

 次に《ランク》だが、下からF、E、D、C、B、A、S、SSと、これまた八つに分かれている。
 当然ランクが高ければ高いほど種の入手は困難だし、育てるのも非常に条件が難しかったりするのだ。

 まあ、こう見えてSSランクの魔物を育てた経験がある僕としては何でもドンとこいって感じだけどね。
 ただそこに至る道のりは決して平坦ではなかったとだけ言っておこう。

 最後に《備考》の欄だが、これは《※》のところをクリックすれば、新たな画面が開いて説明文が浮かび上がる。
 極端にいうと色付けのような感じで、ゲームでもあまり重要視はしていなかった。

「確認できたか? 通常なら《スライムの種》は一日で芽吹くが、今回だけはチュートリアルとして特別だ」

 そう言うと、ヤタはどこから取り出したのか分からないが、虹色の砂が入った小瓶を器用に翼で持って中身を畑にサラサラと巻いていく。

 ああ、何てもったいないことを……。

 アレは《マナドラゴンの灰》という魔力の塊で構成された魔物が燃やされて灰化したものである。
 畑に振りかけるだけで、Aランクまでの魔物ならば一瞬で誕生させることができる代物だ。
 それを証明するかのように、灰を振りかけた土からすぐに動きが現れる。

 それはまるで早送りでもしているかのように、土から緑色の芽がピョコッと出てきて、それがどんどん大きく成長していく。
 ちょっと大根の葉に似ている。
 十秒もすると成長は止まり、ウンともスンとも言わなくなった。

「さあ収穫するのだツナギよ」

 僕は広がった葉を片手で持つと、そのまま上へ引き抜いていく。
 ボコッと土が盛り上がり、そこから姿を見せたのは――一つの卵だった。
 大きさはダチョウの卵くらいだろうか。
 その他は何の変哲もない卵のように見える。

「うむ。それが魔物の卵――通称《マモタマ》だ」

 他の二つの卵も回収し終わると、

「次に葉の部分を卵から引っこ抜けば終了だ」

 ヤタがそう言い、僕は「はいはい」とおざなりに返事をしつつ一つの卵から葉を引っこ抜いた。
 するとカタカタ、カタカタ、カタカタ、と僕の手の中で卵がひとりでに揺れ始める。 

 ――ピキッ!

 卵に亀裂が走ったと思ったら、半ばほどから一気に殻は破れ、そこから小さな存在が顔を覗かせた。
 プルルンとしたゼリー状のような青い身体に、クリッとした円らで大きな瞳が一つある。
 これが魔物の中でも一番ポピュラーであり、育成するのも初心者に優しいスライムだ。
 ジ~ッと僕の方を見上げてくる様は、とても愛らしくついギュッと抱き締めたくなった。

「ピィ?」

 おい、そんな声で鳴かないでくれ。父性が爆発しそうじゃないか。
 ほとんど無意識にスライムを撫でていた。

「! ピ~」

 嬉しそうに目を細めて声を上げるスライム。

「うむ、成功のようだな。あとは名付けするのだが……」
「名前か……」

 ゲームだったら画面が出てきて入力するんだけど……。
 しかしそんな画面は出てこず、どうやら普通に口頭で名前を伝えるようだ。

「そうだなぁ。最初の魔物だし……イチでどうだ?」
「ずいぶん安直だな」

 うるさいな。ていうかゲームではそんなこと言わなかったのに……。
 ヤタの人間臭さに驚きつつも、僕は次のスライムにはニン、最後のスライムにはサブという名前を付けた。

「これでこの牧場の仕様は理解できたはずだ。それとステータスを確認するのだ。その中の《EXP》が変動しているのが分かるか?」

 ステータス画面に表示されている幾つかの項目のうち、《EXP》――つまり経験値を示す文字に目を通す。
 先程まで〝0〟という数字が刻まれていたが、今では〝6〟と表示されていた。

「魔物を誕生させるごとに《EXP》は増え、管理人レベルが上がっていく」
「オッケー、理解した」

 もう熟知してるけどね。
 けどゲームでは優に200レベルを超えていただけに、また初期からかと思うと憂鬱な気持ちもないではない。
 しかしゲーム知識も豊富だし、強くてニューゲームじゃないけど、勝手が分かってるだけまた違った楽しみ方ができるかもしれない。

 とりあえず元の世界に帰るまでは、この世界のルールに従って生きるしかないみたいだしね。


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