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若干不安だった実戦もこなし、それからは出てくる魔物に怯えることなく対処していき、ここでしか手に入らない素材も結構入手した頃、そろそろある場所を目指して進もうと思った。
それは例の隠し通路である。
この時点で鉄が手に入るのだから是非とも入手しておきたい。
マップの東へと移動しつつ、自分の記憶と照らし合わせて歩を進めていく。
そこは起伏が激しい場所で、あるところでは左右が膨れ上がった大地に囲まれた、小さな谷のようになっている場所がある。
その通路こそが目的の場所で、その土壁に脆くなっている部分があって、そこを掘ってみると隠し通路が現れるという寸法だ。
通路もそこそこ長く、見た目ではまったく分からないことから、普通では気づかない秘密ルートになっている。
僕も邪道だと言う人がいるかもしれないが、ネットの攻略サイトでその情報を目にし、実際に試してみたところマジで発見できたってわけだ。
その記憶を頼りに向かってみると、ゲーム画面で見たことのある通路が目前に現れた。
「やっぱりあったかぁ」
「ん? ここ知ってるの、ツナギ?」
「ああいや、何でもないよ。何だかほら、怪しげな雰囲気がある道だなって思って」
「……そう?」
いや、適当に言いました。すみません。
「え~っとぉ……何となくピンときたって感じかな」
「ピンと……よく分からない」
でしょうね。実際にピンとなんてきてないしね。
「まあ僕の勘ってたまに当たったりするからさ。そういうことで、ちょっとこの道を調べてみようと思う」
一応二人にも手伝ってもらい、壁に何か仕掛けがないが探してもらうことにした。
二人には悪いが、大体の位置は覚えているので僕は少しだけ他のところを探すフリをして時間を稼ぎつつ目的地へ到着する。
「確かこの辺りだったはずだけど……」
装備品を石の斧にして壁に向かって振り下ろす。
――グサッ!
斧はめり込んだだけでそれ以上壁は何の変哲も見せない。
土壁といっても岩のように固くなって手応えが重い。
それから五十センチメートル間隔くらいで斧を壁に振り下ろしていく。
すると三度目に期待した反応が返ってきたのである。
石の斧が壁にめり込んだと思ったその時、それまでの手応えとは違って、粘土に攻撃したかのような感覚があった。
――ここだ!
そう思い、さらに壁を削るようにして斧を振るっていく。
そして五度目に斧が壁を削った瞬間、周りの土壁が一気に崩れ落ち、人一人が通れるくらいの穴が出現した。
「す、凄いや……マジであったよ……はは」
これで自分の〝マモノ牧場〟での知識はダンジョンでも有効に活用することができることを理解した。
「おーいっ、二人ともおいでーっ!」
少し遠目にいるムトたちを呼びつける。
「どうしたのツナギ……あ、おっきな穴」
「ピィ~!」
本当に隠し通路があったことへの驚きに満ちた表情をムトたちが見せた。
「さあ、この先に行ってみよう」
僕を先頭に細長い通路を辿っていく。
三十秒ほど歩いたその先には開けた場所があり、暗いはずの穴倉のはずが明るく照らされていた。
その理由は、壁のあちこちに埋まっている鉱石のせいだ。
その名も――《夜光石》。
夜のように暗い場所に限り、淡い青白い光を発して周りを照らすのだ。
特に珍しい鉱石ではないが、篝火の役目として重宝することができる。
この鉱石ももちろん頂くつもりだけど、一番はやはり――。
「うわぁ、こんなに《鉄鉱石》があるじゃん!」
ここにあるのは赤錆色に染まる赤鉄鋼と呼ばれる鉱石だ。
色は結構種類もあり、黒や銀灰色などもあるが、その中でも上質で美的価値が高い鉱石は宝石としても成り立ちブラックダイヤモンドとか呼ばれることもあるらしい。
宝石には興味ないけど、いずれ地下ダンジョンとかに潜って金とかダイヤとかも手に入れたいなぁ。
何せ高く売れるし、ダイヤモンドに関しては強い武具としても転化することができる。
「ムト、この赤っぽい鉱石を掘りたいんだけど、手伝ってくれる?」
「ん、分かった」
さすがにイチには硬い岩盤のような壁を生身で掘ることはできないから、今回は見ているだけにしてもらう。
「じゃあ斧を……」
「いらない」
「へ?」
――ドゴッ! ガキィッ! バキィッ!
「はい、これでいい?」
「…………あ……ありがと」
素手で軽く掘り出しちゃったよこの子!
いや、岩を砕けるんだから別に驚くことじゃないかもしれないけど!
僕は彼女が壁を掘って採掘してくれた鉄鉱石を受け取りインベントリに入れる。
そうしてムトは無表情のまま淡々と作業のように採掘を行っていく。
…………はっ、いけない! 僕も人任せだけじゃダメだ!
負けじと斧で鉄鉱石を掘っていく。
何度も何度もそうやって鉱石を入手し、三十分ほどが経過した頃、見える範囲での採掘が終了した。
あとは最後に《夜光石》も掘ってインベントリに入れて終了だ。
それから再び来た道を戻り、お天道様の下へと足を踏み入れた。
それは例の隠し通路である。
この時点で鉄が手に入るのだから是非とも入手しておきたい。
マップの東へと移動しつつ、自分の記憶と照らし合わせて歩を進めていく。
そこは起伏が激しい場所で、あるところでは左右が膨れ上がった大地に囲まれた、小さな谷のようになっている場所がある。
その通路こそが目的の場所で、その土壁に脆くなっている部分があって、そこを掘ってみると隠し通路が現れるという寸法だ。
通路もそこそこ長く、見た目ではまったく分からないことから、普通では気づかない秘密ルートになっている。
僕も邪道だと言う人がいるかもしれないが、ネットの攻略サイトでその情報を目にし、実際に試してみたところマジで発見できたってわけだ。
その記憶を頼りに向かってみると、ゲーム画面で見たことのある通路が目前に現れた。
「やっぱりあったかぁ」
「ん? ここ知ってるの、ツナギ?」
「ああいや、何でもないよ。何だかほら、怪しげな雰囲気がある道だなって思って」
「……そう?」
いや、適当に言いました。すみません。
「え~っとぉ……何となくピンときたって感じかな」
「ピンと……よく分からない」
でしょうね。実際にピンとなんてきてないしね。
「まあ僕の勘ってたまに当たったりするからさ。そういうことで、ちょっとこの道を調べてみようと思う」
一応二人にも手伝ってもらい、壁に何か仕掛けがないが探してもらうことにした。
二人には悪いが、大体の位置は覚えているので僕は少しだけ他のところを探すフリをして時間を稼ぎつつ目的地へ到着する。
「確かこの辺りだったはずだけど……」
装備品を石の斧にして壁に向かって振り下ろす。
――グサッ!
斧はめり込んだだけでそれ以上壁は何の変哲も見せない。
土壁といっても岩のように固くなって手応えが重い。
それから五十センチメートル間隔くらいで斧を壁に振り下ろしていく。
すると三度目に期待した反応が返ってきたのである。
石の斧が壁にめり込んだと思ったその時、それまでの手応えとは違って、粘土に攻撃したかのような感覚があった。
――ここだ!
そう思い、さらに壁を削るようにして斧を振るっていく。
そして五度目に斧が壁を削った瞬間、周りの土壁が一気に崩れ落ち、人一人が通れるくらいの穴が出現した。
「す、凄いや……マジであったよ……はは」
これで自分の〝マモノ牧場〟での知識はダンジョンでも有効に活用することができることを理解した。
「おーいっ、二人ともおいでーっ!」
少し遠目にいるムトたちを呼びつける。
「どうしたのツナギ……あ、おっきな穴」
「ピィ~!」
本当に隠し通路があったことへの驚きに満ちた表情をムトたちが見せた。
「さあ、この先に行ってみよう」
僕を先頭に細長い通路を辿っていく。
三十秒ほど歩いたその先には開けた場所があり、暗いはずの穴倉のはずが明るく照らされていた。
その理由は、壁のあちこちに埋まっている鉱石のせいだ。
その名も――《夜光石》。
夜のように暗い場所に限り、淡い青白い光を発して周りを照らすのだ。
特に珍しい鉱石ではないが、篝火の役目として重宝することができる。
この鉱石ももちろん頂くつもりだけど、一番はやはり――。
「うわぁ、こんなに《鉄鉱石》があるじゃん!」
ここにあるのは赤錆色に染まる赤鉄鋼と呼ばれる鉱石だ。
色は結構種類もあり、黒や銀灰色などもあるが、その中でも上質で美的価値が高い鉱石は宝石としても成り立ちブラックダイヤモンドとか呼ばれることもあるらしい。
宝石には興味ないけど、いずれ地下ダンジョンとかに潜って金とかダイヤとかも手に入れたいなぁ。
何せ高く売れるし、ダイヤモンドに関しては強い武具としても転化することができる。
「ムト、この赤っぽい鉱石を掘りたいんだけど、手伝ってくれる?」
「ん、分かった」
さすがにイチには硬い岩盤のような壁を生身で掘ることはできないから、今回は見ているだけにしてもらう。
「じゃあ斧を……」
「いらない」
「へ?」
――ドゴッ! ガキィッ! バキィッ!
「はい、これでいい?」
「…………あ……ありがと」
素手で軽く掘り出しちゃったよこの子!
いや、岩を砕けるんだから別に驚くことじゃないかもしれないけど!
僕は彼女が壁を掘って採掘してくれた鉄鉱石を受け取りインベントリに入れる。
そうしてムトは無表情のまま淡々と作業のように採掘を行っていく。
…………はっ、いけない! 僕も人任せだけじゃダメだ!
負けじと斧で鉄鉱石を掘っていく。
何度も何度もそうやって鉱石を入手し、三十分ほどが経過した頃、見える範囲での採掘が終了した。
あとは最後に《夜光石》も掘ってインベントリに入れて終了だ。
それから再び来た道を戻り、お天道様の下へと足を踏み入れた。
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