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「ふぅぅ~、何だか一仕事終えた気分だなぁ。ムトもありがとね」
「これくらい、わけない」
こちとら汗をかいてるってのに、彼女は涼し気なままだ。
本当にドラゴンの力は規格外だなぁ。
「じゃあ粗方探索も終了したし、そろそろ《箱庭》に戻ろっか」
「もう帰るの?」
「あーもしかして物足りない?」
頷きはしないが、そんな雰囲気を漂わせている。
まあ彼女にとっては最低ランクのダンジョンなんて遊びにもならないだろうし。
「そうだなぁ。マップも北の方はまだ埋まってないし、せっかくだからもう少し探検する?」
「! ……ん」
表情には現れないが、きっと尻尾があったら振っているだろう程度のことは、短い付き合いだが分かってきた。
イチもまだ役に立ちそうな顔をしているので、あと少しだけ探索に時間を割くことにする。
北へと進路を取ってまだ埋まっていないマップを埋めていく。
目にする食材などはすでにもうインベントリに入らない限界数まで手にしているので必要ない。
ただ魔物に関しては結構歓迎ムードだった。
魔物をクラフトすれば経験値も上がるし、素材だって手に入る。
特にあまり出くわさないスネークラビットとの遭遇は嬉しい。
見た目は蛇のように細長いが、全身がフワフワな毛で包まれた長い耳を持つ魔物だ。
コイツからは《皮》と《獣毛》が手に入る。コレはクラフトでもかなり幅広い創作に適した素材なのだ。
これまですでに二体分得ているが、いくらあっても足りないほど重宝する。
そうやってスネークラビットに遭遇しては逃がさないように全力で狩り、《野イチゴ》で腹を満たしながら進んでいく。
そしてマップの北端近くにまで辿り着いたその時だった。
前を歩いていたムトの足がピタリと止まり、イチもまた警戒するように低く唸り始めたのである。
「ど、どうしたのさ二人とも?」
「…………何か来る」
「え?」
直後、僕から見て十一時の方向。そこにある茂みをかき分けて巨大な物体が姿を見せた。
「! あーそっか。やっぱりいるんだなコイツ」
僕にとっては情報として頭の中にある存在ではあった。
全身がプルプルとゼリー状に構成されていて、大きさは全長三メートルくらいはある。
まあ、簡単にいうとイチを巨大化させたような魔物だ。
ダンジョンにはそれぞれボスが棲息していて、ダンジョンレベルにつれてボスの数や強さもまちまちである。
そしてこの【始まりの森】にも当然ダンジョンボスがいるとは思っていたが、これまで遭遇しなかったところをみると、もしかしたらいないのかなって考えていた。
基本的にボスは一カ所に留まっている奴と、ダンジョン内を動き回っている奴の二パターンある。
このジャイアントスライムと呼ばれるボスは後者の特性を持つ。
見ればボスもまた《邪気種》のようで全身から黒々としたオーラを放っている。
「……ねえツナギ、あれムトがやっていい?」
表情は変わらないが、どこかウズウズしている雰囲気を感じ取った。
今までの戦闘ではずっと僕が一人で戦っていたため、身体を動かしたくなったのかもしれない。
「うん、いいよ。でもできれば殺さないでくれると嬉しいんだけどね」
ハッキリいってこのジャイアントスライムには一切の情などはないし、殺したらクラフトできないからという理由の方が大きい。
ただそれでも一応『マモノの神様』を目指している自分としては、できることなら殺さずに元に戻してやりたいという思いもまたある。
ムトは「頑張って手加減する」と言うと、ジャイアントスライムに向かってゆっくりと歩き出す。
傍目から見れば、幼女が無謀に接近しているように見えるが、明らかにムトの存在感の方が強い。
それをジャイアントスライムも感じ取っているのか、いきなり襲うことはせずに少しずつ後ずさって様子を見ている。
すると一瞬にしてムトの姿が掻き消えた。
瞬きよりも刹那の間に、ムトはジャイアントスライムの頭上へと跳んでいたのである。
そのままクルリと身体を回転させてかかと落としを放つ。
ジャイアントスライムの身体が面白いように頭頂部からペコンと凹み左右に広がる。
だが直後に凹みは修正し、その反動でムトが上空へ弾き飛ばされた。
「ジャイアントスライムは単純な物理攻撃には強い耐性があったけど、ムトの攻撃も受け切るなんてさすがはダンジョンボス」
恐らくムトはウォーミングアップ程度の攻撃だっただろうが、それでも並みの魔物ならば瞬殺できるくらいの威力はある。
あのまま大地にかかとが突き刺さっていれば、大きな亀裂が走っていたことだろう。
「ん、面白い」
自分の攻撃が効かなかったことが彼女の琴線に触れたのか、楽し気な声音を飛ばすムト。
そのまま今度は四方八方から拳や蹴りを繰り出すが、やはりジャイアントスライムの身体には傷は生まれなかった。
体力ゲージも気力ゲージも変動はない。
これなら勝てるとでも思ったのか、今度はジャイアントスライムがムトを呑み込もうと覆い被さってくる。
「これくらい、わけない」
こちとら汗をかいてるってのに、彼女は涼し気なままだ。
本当にドラゴンの力は規格外だなぁ。
「じゃあ粗方探索も終了したし、そろそろ《箱庭》に戻ろっか」
「もう帰るの?」
「あーもしかして物足りない?」
頷きはしないが、そんな雰囲気を漂わせている。
まあ彼女にとっては最低ランクのダンジョンなんて遊びにもならないだろうし。
「そうだなぁ。マップも北の方はまだ埋まってないし、せっかくだからもう少し探検する?」
「! ……ん」
表情には現れないが、きっと尻尾があったら振っているだろう程度のことは、短い付き合いだが分かってきた。
イチもまだ役に立ちそうな顔をしているので、あと少しだけ探索に時間を割くことにする。
北へと進路を取ってまだ埋まっていないマップを埋めていく。
目にする食材などはすでにもうインベントリに入らない限界数まで手にしているので必要ない。
ただ魔物に関しては結構歓迎ムードだった。
魔物をクラフトすれば経験値も上がるし、素材だって手に入る。
特にあまり出くわさないスネークラビットとの遭遇は嬉しい。
見た目は蛇のように細長いが、全身がフワフワな毛で包まれた長い耳を持つ魔物だ。
コイツからは《皮》と《獣毛》が手に入る。コレはクラフトでもかなり幅広い創作に適した素材なのだ。
これまですでに二体分得ているが、いくらあっても足りないほど重宝する。
そうやってスネークラビットに遭遇しては逃がさないように全力で狩り、《野イチゴ》で腹を満たしながら進んでいく。
そしてマップの北端近くにまで辿り着いたその時だった。
前を歩いていたムトの足がピタリと止まり、イチもまた警戒するように低く唸り始めたのである。
「ど、どうしたのさ二人とも?」
「…………何か来る」
「え?」
直後、僕から見て十一時の方向。そこにある茂みをかき分けて巨大な物体が姿を見せた。
「! あーそっか。やっぱりいるんだなコイツ」
僕にとっては情報として頭の中にある存在ではあった。
全身がプルプルとゼリー状に構成されていて、大きさは全長三メートルくらいはある。
まあ、簡単にいうとイチを巨大化させたような魔物だ。
ダンジョンにはそれぞれボスが棲息していて、ダンジョンレベルにつれてボスの数や強さもまちまちである。
そしてこの【始まりの森】にも当然ダンジョンボスがいるとは思っていたが、これまで遭遇しなかったところをみると、もしかしたらいないのかなって考えていた。
基本的にボスは一カ所に留まっている奴と、ダンジョン内を動き回っている奴の二パターンある。
このジャイアントスライムと呼ばれるボスは後者の特性を持つ。
見ればボスもまた《邪気種》のようで全身から黒々としたオーラを放っている。
「……ねえツナギ、あれムトがやっていい?」
表情は変わらないが、どこかウズウズしている雰囲気を感じ取った。
今までの戦闘ではずっと僕が一人で戦っていたため、身体を動かしたくなったのかもしれない。
「うん、いいよ。でもできれば殺さないでくれると嬉しいんだけどね」
ハッキリいってこのジャイアントスライムには一切の情などはないし、殺したらクラフトできないからという理由の方が大きい。
ただそれでも一応『マモノの神様』を目指している自分としては、できることなら殺さずに元に戻してやりたいという思いもまたある。
ムトは「頑張って手加減する」と言うと、ジャイアントスライムに向かってゆっくりと歩き出す。
傍目から見れば、幼女が無謀に接近しているように見えるが、明らかにムトの存在感の方が強い。
それをジャイアントスライムも感じ取っているのか、いきなり襲うことはせずに少しずつ後ずさって様子を見ている。
すると一瞬にしてムトの姿が掻き消えた。
瞬きよりも刹那の間に、ムトはジャイアントスライムの頭上へと跳んでいたのである。
そのままクルリと身体を回転させてかかと落としを放つ。
ジャイアントスライムの身体が面白いように頭頂部からペコンと凹み左右に広がる。
だが直後に凹みは修正し、その反動でムトが上空へ弾き飛ばされた。
「ジャイアントスライムは単純な物理攻撃には強い耐性があったけど、ムトの攻撃も受け切るなんてさすがはダンジョンボス」
恐らくムトはウォーミングアップ程度の攻撃だっただろうが、それでも並みの魔物ならば瞬殺できるくらいの威力はある。
あのまま大地にかかとが突き刺さっていれば、大きな亀裂が走っていたことだろう。
「ん、面白い」
自分の攻撃が効かなかったことが彼女の琴線に触れたのか、楽し気な声音を飛ばすムト。
そのまま今度は四方八方から拳や蹴りを繰り出すが、やはりジャイアントスライムの身体には傷は生まれなかった。
体力ゲージも気力ゲージも変動はない。
これなら勝てるとでも思ったのか、今度はジャイアントスライムがムトを呑み込もうと覆い被さってくる。
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