マモノの神様 ~魔物を作って育ててのんびりクラフトライフ~

十本スイ

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 二十人前くらいの食事をほとんどムトが平らげたあと、ようやく畑仕事へと手を出すことにした僕は、ヤタの指導のもと畑を耕して規模を広げていく。

 これまでの畑より二倍ほど増量したところで、次は獲得した種を埋める。
 ただし一日に注げなければいけない魔力量もあるので、全部の種を育てることはできない。
 特にジャイアントスライムは格が違う。

 その情報は――。

《ジャイアントスライム》《遅い》《水》《15》《E》《※》

 となっており、必要魔力量もスライムの五倍だ。
 現在僕の魔力はフル状態で〝72〟。

 ジャイアントスライムだけなら育てるのに問題はないものの、27個もの魔物を毎日世話するのは難しい。
これからはダンジョン探索にもちょくちょく行きたいから、枯渇するまで魔力は使用したくない。
 何もしなければ魔力も自然に回復するとはいえ、リアルで一時間に一割ほどしか回復しないので効率が悪いのだ。

 ガッツリと睡眠を取れば回復も早いが、その時間も今はもったいなく思う。
 ただジャイアントスライムは一早く創作したい衝動があるので、こちらを優先し、あとは選別して植えていこう。

 ということで、ジャイアントスライムにバットン二匹、スネークラビット三匹を育てることにした。
 スライムはもう三匹もいるので、また別の機会にする。

 そうしてそれぞれの種族を列に分けて種を植えていく。
 その後は、前に行ったように魔力を注ぎ込んで終了だ。
 ただスライムと違ってこれからは注意しなければならない事案が出てくる。

 それは魔物たちの属性だ。
 特に《火属性》の魔物には水は厳禁である。
 故に雨から身を守ってやる必要があるのだ。

 今回入手した種の中で、幸い《火属性》はいないが《土属性》のスネークラビットがいる。
 この《土属性》は土壌の状態や質などを間違えてしまえば誕生させることができないのだ。
 スネークラビットが好む土壌は湿度の高い状態である。故に他の魔物の畑とは違い、毎日二回は植物のように水やりが必要になってくる。

 これも一応植える時にヤタに説明を受けたが、当然僕は知っていたので、反論することもなく了承し、木材でジョウロを作り水をしっかりとあげた。
 あとは生まれるまでこの状態を維持してやれば問題ない。
 イチたちも新しい仲間の誕生を今か今かと楽しみにしている様子が窺える。

 ケンカ、しないといいけどなぁ。

 魔物にもそれぞれ性格が設定されている。
 イチは好奇心旺盛で、ニンは控え目で、サブは甘えたがりといった感じだ。
 当然人間のように感情がぶつかり合ってケンカにも発展することがある。

 そういう時のためにリーダーシップを取れる魔物がいてくれれば一番良いのだが……。
 見ればムトがイチたちと仲良く遊んでいる光景が目に映る。

「はは。きっとムトがみんなを纏めてくれるかもしれないな」

 感情の起伏もあまり激しくないし、マイペースに物事を見ることができる彼女ならば、他の魔物たちの間に立ってくれるような気がした。
 僕は神様で在ろうとしても、やはり魔物ではないので行き届かない言葉などもあることだろう。

 そういう時にムトのような存在は正直ありがたく思う。
 イチたちも彼女を慕っている様子だし、きっと彼女を筆頭にこれから生まれてくる子たちとも上手くやってくれるはず。

 ゲームでは魔物の中でリーダーを設定して、治安維持などを任せたりするのだが、どうやらそのシステムがステータス画面には見当たらない。
 またも食い違いな部分が出てきたが、それはそれで何とかなるだろう。

 そもそもリアルで、そんなシステムなど有りはしないのだから。

「ゲームのように見えて、やっぱりリアルなんだよなぁ」
「む? 何か言ったかツナギ?」
「ううん、何でもないよヤタ」
「そうか。ではそろそろ日も暮れる。今日はもう身体を休めるといい」
「分かったよ。お疲れ様、ヤタ」

 こうして今日もつつがなく一日を無事終えることができた。



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