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約束通り、ムトにはクレープ屋で《チョコっとバナナクレープ》を買ってやった。
…………十枚ほど。
どうやらチョコレートが気に入ったようで、一枚食べるとすぐにおかわりと言ってきた。
一枚百八十ジリ―というかなり良心的な値段ではあったけど、いきなりの大出費に顎が外れそうになったよ。
でもムトが幸せそうに食べる姿を見て、「まあ、別にいっか」と思えるんだから、彼女の人徳は恵まれてるよなぁ。
それから残った金で、いろいろな店を回り、新しい素材などをゲットしていった。
これでまたクラフトの幅が増えると思うと、思わず頬が緩んでくる。
買い物を済ませると、まだ戻るには時間があったので、さっそく田畑エリアの方へ足を延ばした。
そこで農耕を営んでいる七十代くらいのおばあちゃんを見つけ、彼女なら優しく説明してくれるかもと思い話しかける。
「おんやまあ、旅人さんかね」
「はい、そうなんです。ところでおばあちゃんがお世話してるこの畑は何を育ててるんですか?」
外見上は麦畑のように見える。小麦よりは大麦に近い形をしているが……。
「これかい? これはね《トットリア麦》さね」
その名前に聞き覚えがあった。
何といってもそれこそ皇帝が住む宮中に献上している作物の一つだったからだ。
さすがにやり尽くしていたゲームでも、麦の形までは覚えていなかった。
「《トットリア麦》かぁ。きっとこれで作ったパンとか美味しいんでしょうねぇ」
「ほっほっほ、そりゃ当然さね。皇帝様も認めてくださっておるもんじゃからのう」
やっぱりその設定もまた生きているらしい。
「良かったら少し分けてやろうかい?」
待ってました! 実はその言葉、結構期待してました!
そのためにこうして畑に顔を出したといっても過言じゃないし。
現金な奴だと思うなら思えばいい。誰だってタダで手にできるならしたいじゃん。
「えっと……そんなの悪いですよ」
ちょっとここで引いてみる。
「ええってええって。持っていきな」
満面の笑みを浮かべるおばあちゃんの表情に、少し罪悪感を覚えるものの、ありがたく頂くことにした。
お礼にではあるが、自分用に確保しておいた《石鹸》をプレゼントする。
「これ僕が作った《石鹸》なんだけど良かったらどうぞ」
「おんやまあ、いいんかい? 《石鹸》なんて結構貴重なのに」
「はい。是非使ってください。お肌スベスベになって若返りますよ」
「ほっほっほ、お兄ちゃんは口が上手いっちゃなぁ」
からからと楽しそうに笑うおばあちゃんにつられて、僕も自然と声を出して笑ってしまった。
そうして溢れんばかりの打算を抱えながら畑を回り、町人とのコミュニケーションを図りつつあわよくば野菜や果物をもらう。
「いやぁ~、こっちはそんなつもりじゃなかったってのに、何だか悪いことしたなぁ」
二時間ほど田畑を回った僕は、ほくほく顔で充実したインベントリを眺めていた。
いやまあ、実際にはそんなつもりが七割くらいあったけどね。
その分、一応物々交換のようにこちらからも何か役に立つものを提供したので五分五分としてほしい。
それに……。
「もきゅもきゅもきゅ」
隣に立つムトもまた、その場で食べられるいろいろな野菜などをもらい、我慢できずに食べていた。
「この町……いい町」
確かにムトの言う通り、話しかけたら柔らかく対応してくれるし、こうして試食用とは思えないほどの量の野菜などをプレゼントしてくるのだから最高だ。
ただこれだけもらっても、ムトの胃袋にかかれば三日ともたない気もするけどね。
「んじゃそろそろ【箱庭】に戻ろっか」
名残惜しさを感じつつ、僕たちは【トットリアの町】を出て行く。
ただ町を出る際に、何だか引っ掛かりを覚えて足を止めてしまう。
「どうかしたの、ツナギ?」
「ん? あー何でもないよ」
何となくだが、何か忘れているような気がしたのである。
ただ記憶力に自信がある自分が忘れていることなので、大したことではないだろうと、それ以上は気にせずに歩を進めていく。
そのまま何事もなく〝リターンゲート〟へ辿り着き【箱庭】へと戻っていった。
…………十枚ほど。
どうやらチョコレートが気に入ったようで、一枚食べるとすぐにおかわりと言ってきた。
一枚百八十ジリ―というかなり良心的な値段ではあったけど、いきなりの大出費に顎が外れそうになったよ。
でもムトが幸せそうに食べる姿を見て、「まあ、別にいっか」と思えるんだから、彼女の人徳は恵まれてるよなぁ。
それから残った金で、いろいろな店を回り、新しい素材などをゲットしていった。
これでまたクラフトの幅が増えると思うと、思わず頬が緩んでくる。
買い物を済ませると、まだ戻るには時間があったので、さっそく田畑エリアの方へ足を延ばした。
そこで農耕を営んでいる七十代くらいのおばあちゃんを見つけ、彼女なら優しく説明してくれるかもと思い話しかける。
「おんやまあ、旅人さんかね」
「はい、そうなんです。ところでおばあちゃんがお世話してるこの畑は何を育ててるんですか?」
外見上は麦畑のように見える。小麦よりは大麦に近い形をしているが……。
「これかい? これはね《トットリア麦》さね」
その名前に聞き覚えがあった。
何といってもそれこそ皇帝が住む宮中に献上している作物の一つだったからだ。
さすがにやり尽くしていたゲームでも、麦の形までは覚えていなかった。
「《トットリア麦》かぁ。きっとこれで作ったパンとか美味しいんでしょうねぇ」
「ほっほっほ、そりゃ当然さね。皇帝様も認めてくださっておるもんじゃからのう」
やっぱりその設定もまた生きているらしい。
「良かったら少し分けてやろうかい?」
待ってました! 実はその言葉、結構期待してました!
そのためにこうして畑に顔を出したといっても過言じゃないし。
現金な奴だと思うなら思えばいい。誰だってタダで手にできるならしたいじゃん。
「えっと……そんなの悪いですよ」
ちょっとここで引いてみる。
「ええってええって。持っていきな」
満面の笑みを浮かべるおばあちゃんの表情に、少し罪悪感を覚えるものの、ありがたく頂くことにした。
お礼にではあるが、自分用に確保しておいた《石鹸》をプレゼントする。
「これ僕が作った《石鹸》なんだけど良かったらどうぞ」
「おんやまあ、いいんかい? 《石鹸》なんて結構貴重なのに」
「はい。是非使ってください。お肌スベスベになって若返りますよ」
「ほっほっほ、お兄ちゃんは口が上手いっちゃなぁ」
からからと楽しそうに笑うおばあちゃんにつられて、僕も自然と声を出して笑ってしまった。
そうして溢れんばかりの打算を抱えながら畑を回り、町人とのコミュニケーションを図りつつあわよくば野菜や果物をもらう。
「いやぁ~、こっちはそんなつもりじゃなかったってのに、何だか悪いことしたなぁ」
二時間ほど田畑を回った僕は、ほくほく顔で充実したインベントリを眺めていた。
いやまあ、実際にはそんなつもりが七割くらいあったけどね。
その分、一応物々交換のようにこちらからも何か役に立つものを提供したので五分五分としてほしい。
それに……。
「もきゅもきゅもきゅ」
隣に立つムトもまた、その場で食べられるいろいろな野菜などをもらい、我慢できずに食べていた。
「この町……いい町」
確かにムトの言う通り、話しかけたら柔らかく対応してくれるし、こうして試食用とは思えないほどの量の野菜などをプレゼントしてくるのだから最高だ。
ただこれだけもらっても、ムトの胃袋にかかれば三日ともたない気もするけどね。
「んじゃそろそろ【箱庭】に戻ろっか」
名残惜しさを感じつつ、僕たちは【トットリアの町】を出て行く。
ただ町を出る際に、何だか引っ掛かりを覚えて足を止めてしまう。
「どうかしたの、ツナギ?」
「ん? あー何でもないよ」
何となくだが、何か忘れているような気がしたのである。
ただ記憶力に自信がある自分が忘れていることなので、大したことではないだろうと、それ以上は気にせずに歩を進めていく。
そのまま何事もなく〝リターンゲート〟へ辿り着き【箱庭】へと戻っていった。
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