マモノの神様 ~魔物を作って育ててのんびりクラフトライフ~

十本スイ

文字の大きさ
23 / 32

22

しおりを挟む
「鍛冶師じゃありませんよ」
「は? 鍛冶師じゃねえのにこれを造ったって……! そうか、おめえ……錬金術師か?」

 僕はニコッと笑みだけを浮かべる。
 すると店主は納得したように二回ほど頷く。

「なるほどな。優秀な錬金術師は、薬だけじゃなく武器も造れると聞くが、マジだったとはな」

 そう。この世界には錬金術師と呼ばれる者たちがいる。
 元々は薬や魔法具、そして人工生物などの研究に従事し、それらを構成する技術を開発した職人たちだ。
 しかしその技術は、比較的万能であり、大国のお抱えの錬金術師は武器開発などにも手を出し、それを成功しているという話もあった。

 実はゲーム上の設定ではあるが、僕たちプレイヤーのクラフトは、この錬金術の上位互換だと言われていたのである。
 一応ヤタには錬金術師の有無とその力については説明を請うていた。
 だからこそ、その存在を体よく利用できると思ったのである。

 ……嘘は吐いてないしね。

 勝手にこのおっちゃんが勘違いしてくれただけだし。
 僕自身は錬金術師を名乗っていない。ただ武具を造ったといって、ニコッと笑っただけ。

 これが詐欺だというならかかってこいやー!

「この仕上がり、ずいぶんと優秀なんだな。しかも鉄製の武器まであるじゃねえかよ」

 少しもったいない気もしたが、鉄製の武器は、石や木の武具より確実に高く売れるのだ。
 今後のことを考えたら、ここで奮発しておくのも悪い計画ではない。

「よし、ちょっと査定すっから待っててくれよな」 

 そうして一つ一つ丁寧に武具を確認していく店主。
 どうやら見た目とは裏腹に、繊細で丁寧な仕事をしてくれる店らしい。

 ああ、偏見だったな。自重しなきゃダメだ。

 人を見かけで判断するのはいけないことだと思いつつも、ついつい第一印象で決定づけしてしまう。
 こういうところは直していかないと。
 すべての査定が終わったあと、白い歯を見せながら店主が笑う。

「すげえじゃねえか。大したもんだ。どれも出来は申し分ねえ」
「それは恐縮です」
「どうだ? これからは俺の店で卸専門として働かねえか?」
「えぇ……と、か、考えさせてもらいますね」

 またこの店で買い取ってもらうのはありがたいけど、さすがに専属というのは困る。
 こういう契約は軽々しくやってはいけないとヤタにも念を押されていたしね。

「むぅ、そっか。まあ気が向いたら声をかけてくれ。こっちはいつでもウェルカムだからよ」

 そうして大らかな店主のコミュニケーションに若干気圧されながら、彼から金を受け取ることになった。
 この世界での貨幣単位は――〝ジリー〟。

 基本的に日本円とそう価値は変わらない。
 ただ紙幣ではなく金貨のようなコインでやり取りされている。
 それぞれ一枚単位での価値は――。

白金貨→十万円。
金貨 →一万円。
銀貨 →千円。
銅貨 →百円。
鉄貨 →十円。
石貨 →一円。

 こんな感じになっている。
 それぞれ五百円玉くらいの大きさだ。
 何故かクラフトでは金を作れないので、それだけが残念だ。

 もしできれば一気に億万長者になれるというのに。
 やっぱりゲーム世界とはいえ、世の中そんなに甘くないということなんだろうか。
 今回の交渉で得た金は三千六百ジリ―。

 店主曰く、良い品を卸してくれたために多少色をつけてくれたという。
 また持ってきてくれたら、優先して買い取ってやると言ってくれたので、ありがたく礼を言い再度来ることを約束しておいた。

 珍しそうに店内で武具を見ていたムトとともに店を出て、そのままの足で、今度は雑貨屋へと向かった。
 そこでは、作り置きしておいた日用品を売る。

 最初は先のおっちゃんのように、僕が造ったと言うと怪訝な表情を浮かべた雑貨屋の店主だったけど、ここでも錬金術師の話題に誘導して何とか誤魔化すことができた。
 武具屋でもそうだったが、僕が造ったものって結構品質が良いらしく、どれも通常余地は高値で買い取ってくれたのだ。

 特に《夜光石》を利用してクラフトした《ランプ》や、《スライム油》などで作った《石鹸》が目を引いたみたい。
 せっかくだからと自分用に数個だけ残し、インベントリにある残り数だけ全部買い取ってもらった。

 お蔭で想像以上の稼ぎになり懐が温かくなったのである。
 結果、少し前までは無一文だったのに、今では約一万ジリ―近い収支を得たのであった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...