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『いいかい? ミッションはあるものを創作すること。そのあるものというのは《悠久の欠片》と呼ばれるアイテムだよ』
《悠久の欠片》……聞いたこともないアイテムだ。
故にゲーム知識から作り方を引っ張り出すことができない。
「とりあえずメニューからレシピを確認してみるか」
クラフトメニューを開き、早速検索機能を使って目的の代物の確認を行う。
「――お、あったあった。……うわぁ」
自然と僕の顔が引き攣った。
検索に引っかかってくれたことは嬉しいが、気が滅入るような情報まで得てしまったのだ。
《悠久の欠片》は稀少なアイテムらしく、当然クラフトするには相応の素材が必要になる。
その素材なのだが、どれも現状ではそう簡単には手に入らないものばかり。
「《マモノのココロ》……は、ゲームと同じならどうにかなるとして、《出世鳥スカーレの羽》って、Bランクの素材なんだけど……」
素材やアイテムなどにもランクは存在する。それは魔物と同じ八つのランクに分かれていて、当然その稀少度や性能なが高いほど高ランクだ。
Bランクでいえば、一万冊の書籍から目的のものを一冊見つけるような困難さだと言われている。まあ根気と運があれば時間さえかければ見つかるようなもの。
ちなみに最高ランクのSSでは、大砂漠のどこかに埋められている一本の小さな針を見つけるようなものらしい。こればかりは根気というよりは、明らかに運の要素が強い。
しかもその砂漠には罠が山ほど設置されている状況で、ということなので並大抵のことではSSランクと出遭うことすら叶わないというわけだ。
「それに最後のこれ…………《金色鮫の鱗》って、確かAランクだし」
SSランクと比べれば大したことはないといっても、それでも入手するのは困難だ。
ここから遥か北にある【バルバド海】の深海にのみ棲息する鮫からしか取れない鱗である。魔物としてもAランクと位置づけされていた。
「さすがどれも近場では手に入れられないものばかりみたいだなぁ」
「しかしそれだけ達成すれば見返るが大きいとも言えるのではないか?」
「まーヤタの言うことももっともだろうけど、これは達成するにも時間が…………げっ」
「む? どうしたのだツナギ」
「手紙の最後にある言葉が書かれてたんだけど……」
それは思わず頭を抱えてしまうような内容だった。
『ちなみにミッション期間は一週間ねー。それ以上は達成しても意味ないから。じゃ、頑張ってねー』
「これはまた……」
ヤタも神の期間制限の無茶さ加減に目を丸くしてしまっている。
何せここから、というか最短距離で向かったとしても【バルバド海】へ辿り着くには一週間以上は絶対かかってしまうのだ。
そこへゲートを開ければ問題ないが、一度そこに辿り着く必要がある。記憶ではその近くのダンジョンに開くゲートがあるにはあるが、そもそもそこら周辺のダンジョンレベルが高いので、もっとあとで解放されることだろう。
一週間レベル上げに奮闘し、目的のダンジョンゲートを解放できたところで、深海に潜って金色鮫を探すのにも相当な時間を有するはず。
……あれ? これムリゲ―じゃね?
それに他の素材だってBランクだし、相応の時間だってかかる。
存在する場所は知識として把握しているので時間短縮はできるが、もろもろ込みで一週間という期間でミッション達成はどう見ても不可能としか思えない。
「……もしかしてからかって遊んでる、とか?」
「神がそのような愚行などするとは思えんがな。たとえどれだけ困難だとしても、達成できる可能性は必ず存在するはずだ」
ヤタのその神への信用が何故そんなに厚いのか疑問だけど。
彼は現状でも必ず手に入れられる方法があるからこそのミッションだと言い張る。
「だとしたらそれは多分、外での話だろうな」
ここで得られる素材では限界がある。当然そうなる。
「とりあえず用意する素材は全部で三つか。まずはどれを探しに出掛けるか……まあ、まだ手にしやすい《出世鳥スカーレの羽》かねぇ」
「どこにあるのか把握しているのか?」
「出世鳥スカーレはその名の通り、ブリとかスズキみたいな出世魚と同じで、成長段階によって名称が変わる鳥で、世界を自由に飛び回ってる渡り鳥なんだよ」
「ふむ。それもまたゲーム知識とやらか?」
「まーね。けど渡り鳥だから捕まえるのは大変なんだ。でも欲しいのは羽だから、見つけるのはそんなに難しいことじゃない」
「? どういうことだ?」
「あーゲームの時の話なんだけど、ちょっとしたイベントみたいなのがあって、あるダンジョンにスカーレの羽が落ちててそれを拾うっていうシーンがあったんだ」
「ほほう、それは興味深い」
「……あ、なるほどね。だからこそのこの素材ってわけだ」
つまり普通ではそう簡単に入手できないが、僕ならそれが可能だってわけか。
知識を存分に使えってこと、ね。
ヤタが言った現状でも必ず手に入れられる可能性。それは僕ならではのやり方で手にしろってことらしい。
「んじゃ、さっそく向かいますか」
「ツナギ、また出掛けるの?」
「あーごめんなムト。うん、出掛けたり帰ってきたり忙しくて」
「ううん、ツナギが行くならムトも行く」
「ああ、助かるよ。今から行くのはダンジョンだからね」
そうして僕は祠に触れ、〝ダンジョンゲート〟の指定画面を出す。
回転するドラムロールに刻まれたあるダンジョンで目を止める。
・モンストル山 レベル20
時折濃霧が漂う山で、出現する魔物も癖が強い。また道も入り組んでいるので迷う登山者は多い。攻略するにはしっかりとした準備が必要である。
主に出現する魔物 :ロックスライム・ゴーレム・人食い岩など
主に入手できる素材:鉱石系など
そう、ここがこれから向かう目的地である。
「ふむ。ツナギ、そこに《出世鳥スカーレの羽》が?」
「神様がちゃーんとゲームと同じ設定通りにしてくれてたら、ね。さ、準備は良いムト?」
「ん、いつでも」
「よし。じゃあ行くぞ。――【モンストル山】!」
《悠久の欠片》……聞いたこともないアイテムだ。
故にゲーム知識から作り方を引っ張り出すことができない。
「とりあえずメニューからレシピを確認してみるか」
クラフトメニューを開き、早速検索機能を使って目的の代物の確認を行う。
「――お、あったあった。……うわぁ」
自然と僕の顔が引き攣った。
検索に引っかかってくれたことは嬉しいが、気が滅入るような情報まで得てしまったのだ。
《悠久の欠片》は稀少なアイテムらしく、当然クラフトするには相応の素材が必要になる。
その素材なのだが、どれも現状ではそう簡単には手に入らないものばかり。
「《マモノのココロ》……は、ゲームと同じならどうにかなるとして、《出世鳥スカーレの羽》って、Bランクの素材なんだけど……」
素材やアイテムなどにもランクは存在する。それは魔物と同じ八つのランクに分かれていて、当然その稀少度や性能なが高いほど高ランクだ。
Bランクでいえば、一万冊の書籍から目的のものを一冊見つけるような困難さだと言われている。まあ根気と運があれば時間さえかければ見つかるようなもの。
ちなみに最高ランクのSSでは、大砂漠のどこかに埋められている一本の小さな針を見つけるようなものらしい。こればかりは根気というよりは、明らかに運の要素が強い。
しかもその砂漠には罠が山ほど設置されている状況で、ということなので並大抵のことではSSランクと出遭うことすら叶わないというわけだ。
「それに最後のこれ…………《金色鮫の鱗》って、確かAランクだし」
SSランクと比べれば大したことはないといっても、それでも入手するのは困難だ。
ここから遥か北にある【バルバド海】の深海にのみ棲息する鮫からしか取れない鱗である。魔物としてもAランクと位置づけされていた。
「さすがどれも近場では手に入れられないものばかりみたいだなぁ」
「しかしそれだけ達成すれば見返るが大きいとも言えるのではないか?」
「まーヤタの言うことももっともだろうけど、これは達成するにも時間が…………げっ」
「む? どうしたのだツナギ」
「手紙の最後にある言葉が書かれてたんだけど……」
それは思わず頭を抱えてしまうような内容だった。
『ちなみにミッション期間は一週間ねー。それ以上は達成しても意味ないから。じゃ、頑張ってねー』
「これはまた……」
ヤタも神の期間制限の無茶さ加減に目を丸くしてしまっている。
何せここから、というか最短距離で向かったとしても【バルバド海】へ辿り着くには一週間以上は絶対かかってしまうのだ。
そこへゲートを開ければ問題ないが、一度そこに辿り着く必要がある。記憶ではその近くのダンジョンに開くゲートがあるにはあるが、そもそもそこら周辺のダンジョンレベルが高いので、もっとあとで解放されることだろう。
一週間レベル上げに奮闘し、目的のダンジョンゲートを解放できたところで、深海に潜って金色鮫を探すのにも相当な時間を有するはず。
……あれ? これムリゲ―じゃね?
それに他の素材だってBランクだし、相応の時間だってかかる。
存在する場所は知識として把握しているので時間短縮はできるが、もろもろ込みで一週間という期間でミッション達成はどう見ても不可能としか思えない。
「……もしかしてからかって遊んでる、とか?」
「神がそのような愚行などするとは思えんがな。たとえどれだけ困難だとしても、達成できる可能性は必ず存在するはずだ」
ヤタのその神への信用が何故そんなに厚いのか疑問だけど。
彼は現状でも必ず手に入れられる方法があるからこそのミッションだと言い張る。
「だとしたらそれは多分、外での話だろうな」
ここで得られる素材では限界がある。当然そうなる。
「とりあえず用意する素材は全部で三つか。まずはどれを探しに出掛けるか……まあ、まだ手にしやすい《出世鳥スカーレの羽》かねぇ」
「どこにあるのか把握しているのか?」
「出世鳥スカーレはその名の通り、ブリとかスズキみたいな出世魚と同じで、成長段階によって名称が変わる鳥で、世界を自由に飛び回ってる渡り鳥なんだよ」
「ふむ。それもまたゲーム知識とやらか?」
「まーね。けど渡り鳥だから捕まえるのは大変なんだ。でも欲しいのは羽だから、見つけるのはそんなに難しいことじゃない」
「? どういうことだ?」
「あーゲームの時の話なんだけど、ちょっとしたイベントみたいなのがあって、あるダンジョンにスカーレの羽が落ちててそれを拾うっていうシーンがあったんだ」
「ほほう、それは興味深い」
「……あ、なるほどね。だからこそのこの素材ってわけだ」
つまり普通ではそう簡単に入手できないが、僕ならそれが可能だってわけか。
知識を存分に使えってこと、ね。
ヤタが言った現状でも必ず手に入れられる可能性。それは僕ならではのやり方で手にしろってことらしい。
「んじゃ、さっそく向かいますか」
「ツナギ、また出掛けるの?」
「あーごめんなムト。うん、出掛けたり帰ってきたり忙しくて」
「ううん、ツナギが行くならムトも行く」
「ああ、助かるよ。今から行くのはダンジョンだからね」
そうして僕は祠に触れ、〝ダンジョンゲート〟の指定画面を出す。
回転するドラムロールに刻まれたあるダンジョンで目を止める。
・モンストル山 レベル20
時折濃霧が漂う山で、出現する魔物も癖が強い。また道も入り組んでいるので迷う登山者は多い。攻略するにはしっかりとした準備が必要である。
主に出現する魔物 :ロックスライム・ゴーレム・人食い岩など
主に入手できる素材:鉱石系など
そう、ここがこれから向かう目的地である。
「ふむ。ツナギ、そこに《出世鳥スカーレの羽》が?」
「神様がちゃーんとゲームと同じ設定通りにしてくれてたら、ね。さ、準備は良いムト?」
「ん、いつでも」
「よし。じゃあ行くぞ。――【モンストル山】!」
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