セブンス・ワールド ~神に誘われてゲーム世界へ~

十本スイ

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 少し予想外だったのは、少女がオレの話を静かに聞いてくれていたことだ。自分はこの世界の人間じゃない。そんなことを冒頭で言ったわけだが、恐らくは「そんなもん信じられるかっ!」と言って首チョンパされる可能性だって考慮には入れていた……一応。

 けど彼女は最後までオレの話を聞き、そして聞いた後は腕を組み目を閉じたままジッと目の前に立っているだけ。
せ、正座きっつぅ~……。

 実は話している最中はずっと正座してたわけだが、そろそろ感覚が麻痺を覚えてきている。多分しばらく動けないこと必至。一刻も早く血の巡りを良くするために揉み揉みとしたい、いや、むしろしてほしいと願うがそれはきっと無理だろうなぁ……。

 ようやく彼女が閉じていた目を開けて鋭い眼差しをぶつけてくる。ドMじゃないので、その視線にそそるものはない。あるとしたら恐怖の方だ。もうビックリするほどオレの下半身は縮み上がってるはずだ。
 もしかしたら裸になると、外見で女性と見紛うほどの矮小なものに成り果てているのではなかろうか……。いや、これでも友達からは「あ、お前って結構大きいんだな?」とか言われた妄想はしたことがあるんだぜ? 

「おい、一つだけ聞く」
「え? あ、はいはい、何なりと」

 再び剣を突きつけてきたのでまた溢れ出す冷や汗。これ以上流れ出たら脱水症状で死ぬかもしれない。嫌だ、そんなアホな死に方だけは絶対したくない。

「貴様は、“神の御使い”なのか?」
「……はへ?」

 おお、自分でもビックリするほど変な声を漏らしてしまったぜ。けどいきなり“神の御使い”とか言われても反応し切れるほどオレの反射神経は鋭くない。

「えっと……よく分かりませんけど、さっきも言った通り神にこの世界に誘われてやって来たのは間違いじゃないですよ」
「ふむ……貴様は神託を知っているのか?」
「し、しんたく? ああ、神託のことですか?」
「知っているのか!」
「あ、いや言葉として知ってるって意味です!」
「……言葉として。なら神託の内容は一切知らないんだな」
「え? あ、はい」
「なるほど……。これは本物なのかもな……」

 少女が顎に手をやりながら考え込んでいる。今のうちに逃げられないだろうか? いや、多分無理だ。また氷漬けにされるのがオチだろう。
 それに何となくこのままここにいた方が良いような気もするし……美少女が考え込む姿を眺めるのもまたオツなものです。

「クーアイ団長! あまり遅くなりますと、モルニエ様もご心配されます」

 そこへ彼女の部下らしき人物が忠告してきた。というかクーアイっていうのかぁ、しかも団長って……やっぱり偉くて強い子なんだな。

「そうだな。えっと……あ、そういえば名前を聞いてなかったな。私は【ラードック】の国主であるモルニエ様に仕える騎士団団長、クーアイ・タンタニータだ」
「え? ああ……オレは富士咲扇ですよ」
「フジサキオウギ? 長い名前だな」
「えっと、一応苗字……ああ、ファミリーネームが富士咲で、名前が扇です」
「む? ファミリーネームが最初にくるのか? なるほど、それも神の国の特徴ということか……」

 何やらオレが神の国からやって来たと勘違いしてるみたい。けど今のやり取りで分かったけど、やっぱり名前はそのまま名乗るよりはオウギ・フジサキと名乗った方がいいみたいだ。

「混乱するんでしたら、これからはオウギ・フジサキって名乗りますけど?」
「む? そうだな、そうしてくれるか。この世界では名が最初にくるんでな」
「分かりました。けど、名乗られたってことは、オレはこのまま処刑はされないってことですか?」

 かなり心臓バックバクな感じではあるが、これだけは確かめておかないといけない。

「それはまだ確定してはいない」

 あ……ですよね~。

「しかしフジサキ、お前が本当に“神の御使い”であるならば、ここで殺すことはできない。少なくとも私の一存ではな。お前の扱いについては、私の上司であるモルニエ様に一任することにする」
「は、はぁ……」

 助かったのか、助かってないのかよく分からないが、一応この場での処刑からは逃れられたようだ。良かったぁ。

「とりあえず馬車に戻れ。時間も大分使った。日が暮れる前に城へと着きたい」
「あ、分かりました」
「…………何故立たない?」
「えっとぉ…………足が痺れて動きません」
「…………はぁ、おい誰か手を貸してやれ」

 ご迷惑をおかけします。でも本当に動かないんです。もうピクリとも。感覚すらありません。
 オレは彼女――クーアイ・タンタニータの部下たちの手を借りて馬車へと乗り込み、彼女たちの祖国である【ラードック】へと向かうこととなった。



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