セブンス・ワールド ~神に誘われてゲーム世界へ~

十本スイ

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 モルニエは“神の御使い”の可能性のある少年――オウギ・フジサキがどのような人物か見極める必要があった。
 本当に彼が神託にあったような“神の御使い”なのかどうか……。違うならこのまま野に放つのも吝かではない。
 しかし本物であるなら、これは自分にとってはチャンスだ。これは神が与えた試練であり、贈り物なのだと。
 だからこそ彼を見極めるために自分の懐刀であるクーアイと仕合ってもらうことにした。正直に言って、彼を一目見て武人でないことは理解した。争い事とは無縁のような凡弱そうな身体。

 おどおどとした態度もさることながら、外見上は期待薄といった感じではあった。
 それは仕合いが始まっても何ら変わることはなかったのだ。最初にクーアイが牽制のために剣を放ったが、誰でも簡単に避けられるほどの速度に対し、情けない声を上げて回避する彼の姿に呆れるばかり。

 どうやら“神の御使い”などではなかったようだと諦めかけたその時、彼があのクーアイの攻撃をかわした。それは牽制などではなく、ある程度力が込められてあるものだったはず。
 最初はただの偶然だろうと思った。しかし二度目。またも彼は攻撃を回避してみせた。

 さすがにこれは偶然ではない。特に二度目の攻撃は、クーアイも確実に当てるために剣を振ったはず。まあ、避けなければ死んだかもしれないが、今そんなことはどうでもいい。
 大切なのは彼がクーアイの殺気を込めた攻撃を見極めて避けたという事実。さらに驚きは加速する。

 次に彼が魔本を生み出したのだ。この世界にいる者であれば魔本は別段特別なものではない。持っている者はそれなりに存在するし、驚くようなことでもない。

 ただそれが――――――――黒い本でなければ……だ。

 私は先程まで戦っていた修練場を眺める。その視線の先――そこにはまるで巨大な大砲が通過したような穴が壁に開いている。
 その穴は間違いなく、今床に倒れている彼が放った一撃によるもの――。

「驚いたわね、クーアイ」
「モルニエ様……」

 私の言葉に彼女は跪き体裁を整える。

「楽にしていいわ。私の命令通りよく戦ってくれたわクーアイ」
「はっ!」
「ところで、あなたに聞きたいのだけれど」
「どのようなことでも」
「先程の一撃、まともに受ければどうなっていたかしら?」
「…………」

 彼女は答えない。先程の一撃。あの攻撃だけは別格の威力を備えていた。ここ修練場は、兵士たちの修練を行う場として頑強に造られてある。それが見事なまでに大穴を作ったのだから、他の兵士たちもポカンとして言葉を失ったままだ。

 黒の螺旋。彼が持つ奇妙な武器から放たれた塊が、壁を貫いていった。クーアイの放った攻撃すら呑み込んで……だ。クーアイは危険を感じてすぐその場から脱出したお蔭で呑み込まれずに済んだが。もし当たっていれば……。

「フフフ、面白いわね。やはり彼が神託の人物なのね」
「で、ですがモルニエ様、彼は危険です。あの力、恐らくは目覚めたばかりのはず」
「でしょうね。初めて魔本を使用したあなたと同じ顔をしていたもの」
「っ……初めて使用したにも関わらず、あの力。もし彼が牙を向けたら、モルニエ様にとって一番の障害になり得る可能性だってあります」

 そう、目覚めたばかりの力で、、彼はこれほどの結果を残した。もしまともにあの攻撃を当てることができていたら、クーアイすらも破れていた可能性が高い。
 国一番の騎士を、闘いのたの字も知らないド素人が破る快挙に繋がっていたかもしれないのだ。もし彼が力を磨けば、確実に強者となり得ること間違いない。
 その力が自分に向けられるとしたら、この上なく厄介なことになる可能性は否定できない。

「フフフ、面白いじゃない」
「え?」
「暴虐な力でも、力は力よ。私はどんな力でも制御してみせるわ。すべての力を持って、この世界を総べる。それが我が目的……もし彼の力を制御できずに反旗を翻されて殺されるようなら、私はそれだけの人物だったということよ」

 そう、負けるのなら、この世界にただ選ばれなかった……ただそれだけ。

「私はすべてを手に入れてみせるわ。それが約束。だからどこまでも私についてきなさい、クーアイ」
「御意。我が心と身体はモルニエ様のものですから」
「フフフ、面白くなってきたわ。彼を丁重に迎えなさい。そして起きたら私のもとへ連れて来なさい。この世界のことを、この私自ら教えるから」
「はっ!」

 私は久しくなかった胸躍る気持ちを感じてその場を後にする。大きな手駒を手に入れたと……我が野望が近づいてきたことの喜びに打ち震えていた。



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