セブンス・ワールド ~神に誘われてゲーム世界へ~

十本スイ

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 オレは戦争を終えたその日の夜、今日のことを振り返っていた。
 初めての実戦。命と命をやり取るする場。一瞬の判断ミスで多くの命が奪われるそんな状況の中に身を置いた。
 無論それは自分が選択したことでもあり、結果として勝利を得ることができたが、多くの死者が出た。
 オレはクーアイ騎士団の下っ端のようなものだと言い訳することはできるが、オレがもう少ししっかりしていたらと思わないこともない。

 結果的に勝利を手にしたが、やはり戦力差を考えれば、あそこは一度国へ帰って補給を受けるべきだったのかもしれない。
 そうすれば、死ぬ者も少なかったはず。

「けどオレは、あのまま戦うことを選んだ」

 確かに勝率は高いと思ってはいた。向こうは大勝を得たので、明らかに油断しているだろうと推測できたからこその奇襲。
 だが賊の中にはとんでもない人物がいた。そういう存在がいるかもしれないという考えが抜けていた。そもそも最初の段階で、クーアイ騎士団を大敗させた策を思いついた奴がいることは確かだったのに、その存在を甘く見てしまっていた。

 結果、多くの兵が死に、自分も死にかけてしまった。
 オレは戦争を、一種のゲームだと勘違いしていたのかもしれない。どこか現実味がない、漠然とした盤上の駒としか兵士たちのことを考えていなかったのかも……。そう思うとやり切れない。

 あの場で死ぬ覚悟ができていなかったのは自分だけ。たとえ死んでももしかしたら、あの自称神が助けてくれるだろうと、根拠のない期待を持っていた……かも。

「しょせんはゲーム……そんなふうに思っちまってたかもな……。けどこれはゲームじゃなかった」

 確かに神はゲームの世界だと言っていた。しかしここでも人は傷つくと赤い血を流す。命があり、それが尽きると死ぬ。オレが住んでいた現実と何ら変わりのないリアルが広がっていた。
 今になって身体が震えてくる。自分がどんな状況に立っていたのか。一歩間違えば確実に死んでいた。こうしてベッドに横になっていられるのはほとんど運だった。

 後先を考えずに《一斉放射》も使った。避けられると完全にアウトであるはずの攻撃を、その後の対応策も何もないまま放ってしまった。

「オレ……ホントに運が良かっただけだよなぁ」

 強烈な喉の渇きを覚えて部屋を出る。近くに水飲み場があるのでそこまで向かう。今になって緊張して震えるなんて情けない。ただ、戦場でこの震えが無かったことが幸運といえば幸運だった。まあ、興奮していたこともあり、リアルとして感じられていなかったことが原因だろうが。

 水飲み場に向かうと、そこに一人の人物が同じように水を飲んでいた。

「……クーアイ?」
「む? 何だ変態か」
「その呼び名は止めてくれね?」
「何故ここにいる? はっ、まさか私を!?」

 いや、それはむしろ思わなかったわけじゃないけど、さすがに自重はするっての。初めてはやっぱりベッドの上がいいし……。こんな外でやるなんて上級者過ぎて手順が把握できん!

「違うっての。何か喉が渇いてさ」
「……本当か?」

 うわ~、すっげえ疑いの眼差し~。まあ、日頃の行いでそうなるのは理解できるけど。

「ホントだって」

 オレは水を一杯もらう。全身に行き渡っていく冷たい水が心地好い。癖になりそう。

「……フジサキ、一つ聞いていいか?」
「何だ? 女性のタイプか? そうだな~、基本的に美少女なら誰でもバッチ来いだが、強いて言えば胸の大きな女の子で家庭的な……」
「な、何の話をしている馬鹿者っ!」

 ゴツンと後頭部を殴られる。おい、気絶したらどうしてくれる。

「いってぇ……何だよ違うのか? んじゃスリーサイズ?」
「そんなもの嬉しくも何ともないわ!」
「え? そうなの?」

 オレはクーアイの知りたいけど。とか言ったらどうなるかは理解できているので口にはしない。学習しただろ?

「んじゃ何?」

 オレが問い返すと、彼女は軽く溜め息をして体裁を整える。

「……フジサキは、このまま戦い続けることができるか?」
「え? ……どったの急に?」

 何故急にそんなことを聞いてくるのだろうか……?

「いいから答えてくれ」
「…………そうだなぁ。オレは今回痛いくらいに思い知ったよ。戦争って、人が死ぬんだなって」
「…………」
「同じ修練して仲良くなった人たちが、戦争では呆気なく死んでいく。驚くほど簡単に。そしてもう二度と会えない」
「そうだな」
「そんな現実にさ、実は……震えちまってるんだ」

 オレは小刻みに震えている右手を見せる。

「情けねえだろ? 戦場では震える暇なんてなかったけど、こうやって全部終わった後、自分が助かって良かったって……死ななくて良かったって震えてんだよ。仲間がいっぱい死んだのに、一番はそれ。そんなふうに思っちまう自分が怖くて震えちまってる。ホントに情けねえよ」

 何でオレはこんな情けねえ事を彼女に言ってるんだろ……?

 するとそっと自分の右手に彼女の手が触れる。



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