セブンス・ワールド ~神に誘われてゲーム世界へ~

十本スイ

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「アウォト・ゲヘナム……」

 煙玉を放った後、アウォトと名乗る者はその場から姿を消失した。今度も隠れて奇襲する罠かとも思ったが、どうも本当に逃げた模様。

「クーアイ様! 御使い様が!」
「分かった、すぐに行く!」

 私は兵から名を呼ばれ、地に臥せている少年  オウギ・フジサキのもとへと駆けつけた。アウォトは彼は死んでいないと言っていたが、実際に自分の目で確かめないと分からない。 
 だが彼の顔色を見てホッとする。どうやら本当に生きているようだ。
 あの時、彼は《魔弾の射手》で全魔力を注いだ攻撃を放ったように見えた。

「恐らく、私と初めて戦った時と同じ攻撃だな。その規模はまるで違っていたが」

 大きさ、威力ともに初めての時とは桁が違っていた。あのような攻撃を受ければ、私とてただではすまない。たとえ“青の魔本”で防ごうとしてもできたかどうか……。

「フジサキ……お前は本当に無茶をする」 

 今のような攻撃は、一撃が限界なのだろう。撃てば意識を失う。それは一発必中の覚悟を持って望むべく力だ。もし外せば否応なく命を狩られてしまう可能性が非常に高い。
 今回も傍に私は兵たちがいなければどうなっていたことか……。

 その時、方々から連絡がやって来る。下の賊どもを殲滅できたという報告である。私は分かっている。この功績は確実にこの男のものだと。
 フジサキがいなければ、あのまま敗戦しただけで帰国することになっていただろう。死んだ兵士たちも無残に散ったままだっただろう。

 しかしフジサキが、兵士たちの死を意味あるものにしてくれた。仇を……取らせてくれた。
 不甲斐無い将であった自分を奮い立たせてくれたのは、他でもない異世界からやってきた戦の初心者だった。
 それにもう一つ、アウォトが放った剣が自分の胸を貫こうとした時、彼が《魔弾の射手》を放って救ってくれたのも気づいていた。命を救われたのだ。

「……私ももっと精進せねばな」

 私は横たわるフジサキの額に触れる。

「感謝する…………ありがとう、フジサキ」

 彼が意識を失っていて良かった。こう真正面に礼を尽くすなど照れ臭くてできなかったかもしれない。
 私は立ち上がり剣を天へを突き上げる。

「皆の者ぉぉぉっ! 勝鬨を上げよぉぉぉぉっ!」
「「「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」」

 ここに、賊との戦いが幕を下ろした。







「う……うぅ」
「あっ、オウギしゃまっ!?」
「……え…………あれ? ニナ? 何でニナがここに?」

 とは言ったものの、自分がいつの間にか自室のベッドの上にいることに気づく。

 あれ? オレって戦争してたよね?

「い、今すぐにクーアイしゃまたちにもごひょうこくしちぇきましゅっ!」

 うん、もうカミカミで何を言っているのかサッパリだ。まあ可愛いから全然OKだけど。
 ニナが部屋から出て行ったあと、オレはゆっくりと記憶を甦らせる。

「……いてて……うわぁ~身体痛ぇぇ~」

 完全な筋肉痛だ。それに虚脱感も半端無い。

「あ~夢じゃなかったなこりゃ」

 《一斉放射》によって気絶したオレは、何とか【ラードック】に帰って来られたのだろう。

「けどよくあの状況で死ななかったなぁ、オレ」

 最後の一撃を外したのは覚えている。あのとんでもなく強い青紫色の髪をした少年。あの少年にその後殺されるのだろうと確信していた。
 せめて痛くしないでほしいなと思いつつ意識を閉じた。しかし目覚めてみればここにいるのだから、恐らくは何とかなったのだろう。

「でも、戦争はどうなったんだ? 敗けたのか?」
「いや、勝ったわよ」

 そこへ登場したのはビックリ、モルニエとクーアイだった。クーアイだけなら分かるが、モルニエがここへやって来るのは初めてだ。

「モルニエさん……」
「こら、フジサキ! モルニエ様だ!」
「あ、悪い悪い」
「いいのよ。彼ならば別にそう呼んでも許しましょう」
「よいのですかモルニエ様?」
「ええ、此度の戦の立役者ですもの。それに、あなたの命の恩人……でもあるのでしょ?」
「そ、それは…………はい」
「なら褒美を与えなければならないわね」
「え~っとぉ……何の話でせう?」

 サッパリ分からん。

「あら、覚えていないのかしら? まだ記憶が混乱しているの?」
「いや、意外にも頭の中はスースーしてますよ」
「それって何も無いってことではなくて?」

 う~む、それを言われると辛い。けど本当に頭の中はスッキリしているのだ。

「あなたはクーアイをアウォト・ゲヘナムという輩から救ってくれたのでしょう?」
「ア、アウォト? だ、誰です?」
「お前と対峙していた鎖使いだ」
「あ、ああ……アイツ、そんな名前だったんだ。でも命を救ったって? それって逆なんじゃ……」

 だってオレが気絶しても助かっているということは、そういうことなんだろうし。

「いや、お前が私の命を救ってくれたのは本当だ。感謝……している」

 おおっと!? 頬を赤らめるクーアイ!? ついに来たのか! ここでっ! クーアイのデレ期がっ!
 もしかしたらそのまままかり間違って吊り橋効果的な感じでオレに恋心が芽生えて抑え切れないその欲望に忠実にがふぅぅんっ!?
 な、何故だ……何故オレは今クーアイに蹴り飛ばされている……っ!?

「はぁ、あなた、声出ているわよ?」
「……ああ、オレのお茶目さん……」

 どうやらまた脳内での叫びだと思っていたが、声に出ていたようだ。もうビックリだね。

「ったく、人が礼を尽くしているというのに……おほん! ではモルニエ様、私はこれで」

 少しムッとした感じで出ていくクーアイ。

「あっちゃ~、怒らせちゃったかな?」
「そうね。でも気にしなくていいわよ。あの子も、あなたが目を覚ましたことを知ると一番喜んでいたのだからね」
「え……マジで?」
「もしかしたら褒美に接吻とかしてもらえたかも?」
「マジかよっ!」
「まあでも、今の発言で台無しにしちゃったみたいだけれどね」
「ああくそぉ! オレのバカッ! 千載一遇! いや一期一会なチャンスだったのにぃぃぃぃっ! ええい、口惜しやぁぁぁっ!」

 オレはゴンゴンゴンゴンゴンと壁に頭を打ちつけながら血の涙を流す。傍にいるモルニエとニナが頬を引き攣らせていることも知らずに。

「……とりあえず、今回は本当に助かったわ。あの子にとっても良い経験になったでしょうしね」
「ああ……できれば大人の経験もさせてやりたかった……」
「ふふ、相変わらずねあなたは。それは時間をかけてやってみなさいな。無理矢理はダメよ?」
「お任せ下さい! オレは必ずモテモテ王になっちゃるんじゃっ!」

 そしてこの世界の美女で埋め尽くされた風呂に入ってもみくちゃにされたい!

「それより、身体は大丈夫なのかしら?」
「あ、はい。ちょっとダルイけど大丈夫ですよ。あ、でもオレが気絶した後のこと、聞かせてもらってもいいですか?」
「いいわよ」

 モルニエから、アウォト・ゲヘナムがオレに何やら注目しだしたことを聞く。

「イケメンにモテても嬉しくねえ……」
「調べてみると、その少年は戦屋をしていてね、賊や国に手を貸して、戦あるところに姿を見せるそうよ」

 うわ~しかもバトルジャンキーかよ……。そんな奴に興味を持たれるなんて……オレって不幸だぁぁぁ……。

「今回討った賊も、私とクーアイに以前滅ぼされた賊の残りカスね。まさか手痛いしっぺ返しを受けるとは思わなかったけれどね。でも今回のことは、あの子にとって糧になるわ。猪武将とは言われていても、あの子だって考えようとする頭は持っているんだから」
「だといいですけどね。でもまあ、また失敗しそうなら、オレが手を貸せばいいだけですしね」
「ふぅん……」
「な、何です?」

 何やらニヤニヤとした顔を向けてくるので引いてしまう。

「ふふふ、何でもないわ。これからもお願いね。もちろん、あの子のことも」
「はいっす! 必ず落としてみせます! そしてあの胸をいつか!」
「……どうでもいいけれど、ニナの教育にも悪いから自重しなさいよね」

 見てみれば顔を真っ赤にして「はわわ~」となって目を回している。胸を隠しているが、自分の胸も揉まれると思っているのだろうか……。オレはロリコンじゃねえ!



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