俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ

文字の大きさ
228 / 258

227

 特徴的な好戦的な吊り上がった瞳。それが真っ直ぐナクルたちが立つ戦場へと向けられていた。そんな彼女――火鈴が何故ここにいるかと沖長は疑問に浮かぶ。

「何でココに……?」

 自然と出た言葉に対し、火鈴は若干面倒臭そうにしながらも答えてくれた。そしてその内容を聞いた沖長はさらなる疑問を口にする。

「……匿名の電話?」
「みたいだぜ? アタシもよく分からねえけど、少し前に【異界対策局】の本局に通報が入ったみてえでな。んで、ちょうどこの近くに仕事で来ていたアタシがその対応を任されたってわけだ」

 ダンジョンに関してだが、これは周知されていない。何故なら国指導のもと情報を秘匿されているからだ。故に、ダンジョンはもとより、【異界対策局】の存在自体も公にはなっていないので、一般人が直接通報できるわけがないのだ。

(しかもこんなタイミング良く通報がいった? こっちはお蔭で助かったけど……)

 何も知らない一般人ではないはず。もしそうだとするならまず警察に通報がいくだろうから。それが直接【異界対策局】へ通報されたということは、間違いなくダンジョンのことやその周辺に関わる諸々の事情を知っているはずだ。

 一体誰がわざわざ……?

 そんなことを思ったが、すぐに今はそのような疑問を解決する場合ではないので頭を振って思考を切り替えた。

「へぇ、あのウサギ娘、ちょっとはやるようになったじゃねえか。それに新入りもいるみてえだしよぉ」

 火鈴の言うウサギ娘とはナクルのことだろう。そして当然雪風の存在も知られた。

「けどあれじゃ、決定打に欠けるな。もう一人は勇者じゃねえみてえだし」

 沖長が思ったことと同様のことも、一目見て彼女は判断したらしい。それだけ戦闘経験が豊富だということが分かる。

「ま、ココまで来てただ見てるってのもつまんねえし、えっと……確か……」
「札月沖長だよ」
「あーそうだったそうだった。オキナガな、オキナガ。んでオキナガ、アレ……アタシが潰してもいいか?」
「え? あー……こちらとしては助かるけど」
「んじゃ、サクッと片付けますかね」

 すると彼女の身体からジワジワとブレイブオーラが溢れ出てくる。

「――〝ブレイブクロス〟」

 口角を上げながら火鈴が呟いた直後、眩い光が彼女を中心にして広がっていき、その光の中から真紅の鎧を纏った彼女が姿を見せた。

 前にもこの姿は見たことがあるが、改めてそこに立っているだけで存在感が強い。まるで常に周囲を威圧しているかのような圧迫感が伝わってくる。加えて燃えるような熱量もまた雄々しさとともに感じる。

「ん? 何だよジロジロ見やがって」
「あ、悪い。その姿、勇ましいなって思って」
「当然だぜ! これがアタシの勇者としての姿――〝レッドタイガー〟だからな」

 名前もいかつい。確かナクルは〝ホワイトラビット〟って名前だったはず。それこそ勇ましさでいえば火鈴の方が相応しく思える。

「戸隠さん、ナクルたちを頼むよ」
「火鈴でいい。苗字はあんまり好きじゃねえしな。んじゃま、先輩としてカッコ良いところを見せてやっか!」

 少し屈んだ火鈴が、すぐにその場から跳躍しその場からデュランドの頭上へと近づいた。
 そんな火鈴の存在に気づいたナクルたちがギョッとする。

「お前らぁっ、何をチマチマしたやり取りしてんだ! こういう相手にはこうするんだよ!」

 刹那、火鈴の全身から発せられているオーラが変質し炎へと形を変えた。そして彼女がその炎を両手に集束し、そのまま合わせるように組んだ。同時に凄まじいエネルギーが彼女の組まれた両手に集まっていることが見て取れた、

「!? ナクル、そこから離れなさいっ!」
「え? あ、わ、分かったッス!」

 何かを察した蔦絵の忠告により、二人はすぐさま距離を取る。その際に蔦絵は、雪風を横抱きにして一緒に離れていった。
 デュランドも異常な熱を感じたのか、頭上にいる火鈴の存在に気づいて顔を向ける。

 その間にも火鈴は、すでに攻撃準備は整っていた。組んでいた両手を、力を溜め込むように右腰付近へと引き寄せる。

「オイ、骨野郎! コイツは燃えちまうぜ! くらいやがれっ――《虎炎咆哮》っっっ!」

 同時に開いた両手を前方に突き出すと、そこから大口を開けた虎を模したような炎の塊がデュランドに向かって放たれた。

 回避する暇はない。気づくのが遅かったことと、その攻撃規模によりデュランドにはその身で受けるしか手段はなかった。故にダメージを最小限に抑えようとしてか、長い両腕で炎を受け止めるためにグッと伸ばす。 
 衝突する炎と骨。幾ら硬度が高いとはいえ、相性は些か炎の方が軍配が上がる。受け止めたものの、炎は徐々に骨を削り燃やしていく。

「ウグッ…………ヌグゥゥゥゥ……ッ!」

 苦悶の声を絞り出しているデュランド。そしてそんな攻防を見ていた沖長は素直に驚嘆していた。

「す、すげえ……これが第二次覚醒を果たした勇者の力か」

 すでに火鈴が二回目の覚醒を果たしていることは知っていた。あの炎がその証拠。そしてその威力に開いた口が塞がらない。あれだけ苦戦していたナクルとは違い、火鈴の攻撃力は圧倒的であり、デュランドもまた今にも崩れ落ちそうだ。

「アタシの炎を舐めんな! さっさと燃えちまえっ!」

 まだ火鈴には余裕があったのか、さらに膨れ上がったオーラが炎に上乗せされる。一掃巨大化した炎塊は、デュランドの両腕を灰と化し、その先に待つ肉体へと襲い掛かった。
 炎に包まれ声にならない声を上げて暴れ回るデュランドだが、その炎は少しも弱体化せずに纏わりついている。

 そして地面に降り立った火鈴が、人差し指を立てた右手を天へ掲げ、ゆっくりとデュランドの方へと降ろして一言。

「――――《バーニング・エンド》」

 同時に炎に包まれたデュランドを中心に爆発が起きた。
 爆炎の中から無残に砕かれた骨の欠片が飛散していく。

「……これが……本物の勇者……!」

 その光景を見て、誰にも聞こえないような声でナクルは呟いていた。


あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

親王様は元大魔法師~明治の宮様に転生した男の物語~戦は避けられるのか?

サクラ近衛将監
ファンタジー
日本のIT企業戦士であった有能な若者がある日突然に異世界に放り込まれてしまった。 異世界に転移した際に、ラノベにあるような白い世界は無かったし、神様にも会ってはいない。 但し、理由は不明だが、その身には強大な魔法の力が備わっていた。 転移した異世界の都市は、正にスタンピードで魔物の大襲撃に遭っているところであり、偶然であるにせよその場に居合わせた転移者は魔物を殲滅して街を救い、以後その異世界で大魔法師として生きることになった。 そうして、転移から200年余り後、親族や大勢の弟子が見守る中で彼は大往生を遂げた。 しかしながら、異世界で生涯を終え、あの世に行ったはずが、230年余りの知識経験と異能を持ったまま赤子になって明治時代に生まれ変わってしまったのである。 これは異世界に転移したことのある出戻り転生者の物語である。 *  あくまでもフィクションであり、登場人物や時代背景は史実とは異なります。 ** 史実に出て来る人物又は良く似た名前の人物若しくは団体名が登場する場合もありますが、広い心で御容赦願います。 *** 週1(土曜午後9時)の投稿を予定しています。 @ 「小説家になろう」様にも投稿しています。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

TS転移勇者、隣国で冒険者として生きていく~召喚されて早々、ニセ勇者と罵られ王国に処分されそうになった俺。実は最強のチートスキル持ちだった~

夏芽空
ファンタジー
しがないサラリーマンをしていたユウリは、勇者として異世界に召喚された。 そんなユウリに対し、召喚元の国王はこう言ったのだ――『ニセ勇者』と。 召喚された勇者は通常、大いなる力を持つとされている。 だが、ユウリが所持していたスキルは初級魔法である【ファイアボール】、そして、【勇者覚醒】という効果の分からないスキルのみだった。 多大な準備を費やして召喚した勇者が役立たずだったことに大きく憤慨した国王は、ユウリを殺処分しようとする。 それを知ったユウリは逃亡。 しかし、追手に見つかり殺されそうになってしまう。 そのとき、【勇者覚醒】の効果が発動した。 【勇者覚醒】の効果は、全てのステータスを極限レベルまで引き上げるという、とんでもないチートスキルだった。 チートスキルによって追手を処理したユウリは、他国へ潜伏。 その地で、冒険者として生きていくことを決めたのだった。 ※TS要素があります(主人公)