除霊と妖狐

陽真

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ただいま

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「ただいま」
「お帰りなさいませ、怜さま」
文庫と分かれ家に帰ると巴菜はなが出迎えてくれた。
「ただいま、巴菜はな。父さんたちいる?」
「いえ、主さまは今お仕事でございます」
「母さんは?」
「奥さまはいらっしゃますよ」
「そう、ありがとう」
巴菜はなに確認を取ると俺は家の中に入った。
まぁ、父さんがいれば俺の声を聞いた瞬間に飛び出してきそうなもんだし。

俺が確認を取ったのは父さんに抱きつかれないためでもあるし、あと何より母さんの邪魔をしていけないと思ったからだ。
母さまは家で家系の仕事でもある除霊された霊をこの世の果てに送るのを見守ることをしている。
基本は兄さんが除霊した霊を送っているから今日会った兄さんが除霊したなら見送っている最中ってことも考えられる。

「あら怜、お帰り。途中で優と会ったのかしら」
リビングに入ると母さんが本を見ながら座っていた。
「うん。あ、兄さんから聞いたんだ?」
「違うわ。優が除霊から帰ってきた時に顔が光悦しまくっていたからね、多分そうだろうなって思ったのよ」
母さんはおっとりと言うと、席を立ち紅茶を入れ始めた。
「あぁ、奥さま。私の仕事でございます」
「大丈夫よ。それより巴菜はなは他にすることがあるんでしょ。身の回りの事くらい出来るわ」
「お気遣いありがとうございます」
巴菜はなは母さんにお礼を言うと、どこかえ消えた。

巴菜はなどっかに行ったの?」
「それが來くんがね、仕事場に霊が溢れてるから除霊の手伝いに来てくれって巴菜はなに頼んできたらしいのよ。全く裏稼業をしちゃうのは癖なのかしらね」
母さんは入れた紅茶を優雅に飲みながら困ったように言った。
俺が物心ついた頃にはまだ父さんが裏稼業の当主をしていた。
その頃は表も裏も父さんが当主をしていて、兄さんが裏の当主になったのは割と最近だ。
なんで父さんは裏と表、両方の当主をしていたのかは聞いてもうまくはぐらかされてしまう。
だから今はもう聞かなくなった。

「それより怜早く着替えてきなさい。紅茶入れておくからおやつにしましょう。ついでに優が起きているようなら連れてきてくれるかしら」
「うん。分かった」
母さんに急かされまだ制服なのに気付き、母さんに返事をしつつ二階に上がった。

♦︎♦︎♦︎♦︎

「兄さん居る?」
俺は二階に上がると兄さんの部屋をノックした。
「あぁ、いるよ!どうしたんだい、怜」
俺がノックするとすぐに、女性方を一瞬で殺傷してしまいそうな満面の笑みでやってきた。
でも、兄さんの態度にいちいち驚いていたらキリがないと最近、悟った。
「良かった、母さんがおやつにしようって。兄さんが起きているようなら連れてきてって言われたんだよ。来る?」
「もちろん。優は着替えてからかな」
「そうだね。先に行ってて」
兄さんは小さく頷くと一階に降りて行った。

「ふぅ、なんとか乗り切ったぁ」
兄さんを呼び終わったあと、俺は自分の部屋でガッツポーズをしていた。
兄さんのブラコン攻撃を回避したのだから達成感が半端ない。
「早く着替えておやつ食べよ」
俺は一時、達成感を感じると気を取り直して制服から着替え、そして、メガネとボサボサとした髪を綺麗に直した。
一応、姉さんにされている手前制服を着替えるまではこの格好を崩さないようにしている。

「弟君、いらっしゃいますか?」
「え?」
髪をセットし直し、部屋を出ようとドアノブに手をかけた時、扉の向こう側から若い男の人の声がした。
弟君って‥‥‥‥。

妖怪‥‥あやかしならば個体によっては人に擬態し俺たちになんらかの意図を持って接触してきてもおかしくない。
九条家は除霊が専門だが、除霊をするには霊力と呼ばれる霊と対峙するための力が備わっている。
その為か、霊力を霊より多く持つあやかしと呼ばれるはるか昔から世界に存在するものが見えてしまう。

あやかしには人間と同じように、良いも悪いもの存在する。
良いものは人間との共存を望み、友好的だ。
実際俺も家や父さんのことで孤立しており、どうすることも出来なかった幼い頃はあやかしと遊んでいた。
だからもし、扉の向こう側にいる存在があやかしならばあまりどうこうはしたくない。
だけどもし、悪いあやかしなら‥‥‥‥‥。

「痛っ!」
俺は情けないことばかり考えている自分の頬を叩いた。
想像以上に痛くて、思わず声が出てしまったけど。
だけどその痛みは俺自身を思考の海から救うには十分な痛みだった。
今、考えても仕方がない。
扉を開ける前から弱腰でどうする。
俺は除霊を行う家系に生まれたんだから、いつかはしなければいけないことなんだ。
それが今なだけだ。

「ふぅ。よし!」
覚悟を決め、父さんに少しだけ習った除霊術の展開術式を頭に浮かべながら思いっきり扉を開けると、目の前には兄さんと同じくらいの中性的な顔立ちの男の人が立っていた。
「誰?何者?」
臨戦体制をとりながら威圧を込めて男の人に聞くと、男の人は少し慌てたような驚いたような表情をしていた。

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