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謎の人物の正体
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「お、落ち着いてください、弟君。私はあなたを害する気はありません」
「落ち着いてって言われても、俺にとっては不審者と変わらないんだけど。あやかし?それとも霊?」
依然、臨戦体制を崩さない俺への対応に困っているのか無言の空気感が俺たちの間を流れていく。
「桜夏どうかした?」
「に、兄さん。ん?桜夏?」
俺たちの無言の空気感を壊したのは二階に上がってきた兄さんだった。
兄さんは男の人の方を見ながら不思議そうに聞いた。
「あ、怜。遅かったから心配したよ」
兄さんは俺が発した言葉で俺に気付いたのか緊張感のない声で言った。
「申し訳ありません、我が主。主から仰せつかった任、果たせず、あまつさえこのような醜態を晒してしまうとは」
男の人は兄さんの方を見ながら平身低頭し、謝っていた。
「そういう堅苦しいのは辞めてくれると助かるよ。きみ別に、江戸とか明治とかそういう昔に死んだ存在じゃないんだからさ。僕を敬ってくれるのは嬉しいけど、それだと接しづらいからね。あとすぐに謝るのは無し!」
「承知いたしました。善処します」
俺は全く状況が掴めず、ただその様子を見ておくことしか出来なかった。
「に、兄さん‥‥‥」
絞り出した声で兄さんに呼びかけると、兄さんは俺の方を向き微笑んだ。
何の微笑みだよぉ‥‥‥。
俺の心情を悟ったのか微笑みながら俺の頭を優しく撫で始めた。
「ごめんね。説明忘れてた」
その笑顔意味を知っても俺の中には兄さんに対する呆れが凄かった。
さっきまでの恐怖はどこかへ行き、分からない状況に目を回すしか無かった。
心ここに在らずの俺は兄さんと一緒にゆっくりと一階に降りると、母さんが用意したおやつが机の上に並べてあった。
「あら、やっときたのね。怜」
「ごめん、ちょっと色々あってね」
母さんに一言謝ると、俺と兄さんは席についた。
いまだに桜夏と呼ばれた男の人の説明をしていない。
「優、説明してあげないと怜が桜夏くんのことが気になって仕方ないみたいよ」
俺がチラチラと桜夏さんの方を見ていた事に気づいていたのか母さんが言った。
「そうだね。怜、式神は知ってるよね」
「うん。巴菜みたいな人でしょ。式神は善と悪を見分ける能力を持った者で元人間が霊となり、相応しき主に仕える者のこと。だったっけ」
「そう、正解!さっすが怜だね」
兄さんは俺の答えが満足のいくものだったのか頭をよしよしと撫でてくる。
でも、今更なんでそんなことを聞くんだろ。
除霊家に生まれた以上この知識は最低限知っておかなければいけない事の中に入る。
兄さんはその存在を再確認させたかった?
いやでもなんで?
この状況から桜夏さんが関係しているのか?
あ、まさか‥‥‥‥‥。
「兄さん一つ質問」
「うん?どうした」
「もしかしてその人、桜夏さんは兄さんの式神なの?」
俺の中で一つの答えに辿り着き兄さんに確認すると、兄さんは一度離していた手をまた俺の頭に置きもう一度ニコニコしながら撫でてきた。
「兄さん?」
「いや、ごめん。うちの弟は優秀だなと思ってさ」
そう言いながらさらに強く撫でる。
「兄さん流石に痛いかも」
「あ、ごめん。つい」
「で、桜夏さんは本当に式神なの?」
「うん。そうだよ」
俺が聞くと兄さんは少し真面目な顔をして答えてくれた。
「やっぱりそうなんだ。母さんは知ってたの?」
「えぇ、もちろん。知らなかったのは怜と颯ね。ここに連れてきた時は來くんと驚いたわ」
母さんに聞くと、母さんはその時を思い出したのか、クスッと笑って答えてくれた。
「いつから桜夏さんは式神なの?」
「弟君、私のことは桜夏とお呼びください」
「じゃあ桜夏も弟君は辞めて。怜で良いから」
「では、恐れながら怜さまとお呼びさせていただきます」
桜夏は俺の気が狂いそうなほど丁寧に話す。
「全く、さっきの善処します、はどこに行ったんだろね~」
兄さんは桜夏にわざとらしく言う。
「申し訳ありません。なんか抜けなくて」
「抜けないって、癖なの?この喋り方」
俺は桜夏の言い方に何か引っ掛かり、尋ねた。
「いや、最初に桜夏と会って、式神にした時は普通にフランクな喋り方だったんだけどね。うちに連れてきた途端こうなった」
「どういうこと?それと兄さんが桜夏を式神にしたのはいつなの?」
連れてきた途端とは一体何があったのか。
それに、もし桜夏がずっと以前からいたのならばなぜ気付かなかったんだろ?
「式神にしたのは昨日だね。昨日の現場で桜夏を見つけて、除霊しようとしたんだけど、霊にしては珍しくあやかし並みに霊力があったから勿体無いと思って式神にならないか誘ったんだよ。まぁ、でも一番の理由は空気が綺麗だったからかな」
兄さんの言葉にその時のことを思い出しているのか桜夏は軽く目を閉じていた。
〝霊は空気を纏う〟
これは霊と関わりを持つ除霊家、巫女家では常識的に教えられることだ。
そしてその見え方は人によって違がうが、基準として悪霊は漆黒のような禍々しい空気を纏っており、良霊は新緑のような新鮮で清々しい空気を纏っているという。
この空気は術を使う者との相性が良ければ良いほど綺麗に感じるそうだ。
だから兄さんと桜夏は相性がいいのだろう。
「それで桜夏がこうなった理由は‥‥‥原因は巴菜だね」
「そうね。巴菜ね」
兄さんの言葉に母さんは同意するように繰り返す。
「落ち着いてって言われても、俺にとっては不審者と変わらないんだけど。あやかし?それとも霊?」
依然、臨戦体制を崩さない俺への対応に困っているのか無言の空気感が俺たちの間を流れていく。
「桜夏どうかした?」
「に、兄さん。ん?桜夏?」
俺たちの無言の空気感を壊したのは二階に上がってきた兄さんだった。
兄さんは男の人の方を見ながら不思議そうに聞いた。
「あ、怜。遅かったから心配したよ」
兄さんは俺が発した言葉で俺に気付いたのか緊張感のない声で言った。
「申し訳ありません、我が主。主から仰せつかった任、果たせず、あまつさえこのような醜態を晒してしまうとは」
男の人は兄さんの方を見ながら平身低頭し、謝っていた。
「そういう堅苦しいのは辞めてくれると助かるよ。きみ別に、江戸とか明治とかそういう昔に死んだ存在じゃないんだからさ。僕を敬ってくれるのは嬉しいけど、それだと接しづらいからね。あとすぐに謝るのは無し!」
「承知いたしました。善処します」
俺は全く状況が掴めず、ただその様子を見ておくことしか出来なかった。
「に、兄さん‥‥‥」
絞り出した声で兄さんに呼びかけると、兄さんは俺の方を向き微笑んだ。
何の微笑みだよぉ‥‥‥。
俺の心情を悟ったのか微笑みながら俺の頭を優しく撫で始めた。
「ごめんね。説明忘れてた」
その笑顔意味を知っても俺の中には兄さんに対する呆れが凄かった。
さっきまでの恐怖はどこかへ行き、分からない状況に目を回すしか無かった。
心ここに在らずの俺は兄さんと一緒にゆっくりと一階に降りると、母さんが用意したおやつが机の上に並べてあった。
「あら、やっときたのね。怜」
「ごめん、ちょっと色々あってね」
母さんに一言謝ると、俺と兄さんは席についた。
いまだに桜夏と呼ばれた男の人の説明をしていない。
「優、説明してあげないと怜が桜夏くんのことが気になって仕方ないみたいよ」
俺がチラチラと桜夏さんの方を見ていた事に気づいていたのか母さんが言った。
「そうだね。怜、式神は知ってるよね」
「うん。巴菜みたいな人でしょ。式神は善と悪を見分ける能力を持った者で元人間が霊となり、相応しき主に仕える者のこと。だったっけ」
「そう、正解!さっすが怜だね」
兄さんは俺の答えが満足のいくものだったのか頭をよしよしと撫でてくる。
でも、今更なんでそんなことを聞くんだろ。
除霊家に生まれた以上この知識は最低限知っておかなければいけない事の中に入る。
兄さんはその存在を再確認させたかった?
いやでもなんで?
この状況から桜夏さんが関係しているのか?
あ、まさか‥‥‥‥‥。
「兄さん一つ質問」
「うん?どうした」
「もしかしてその人、桜夏さんは兄さんの式神なの?」
俺の中で一つの答えに辿り着き兄さんに確認すると、兄さんは一度離していた手をまた俺の頭に置きもう一度ニコニコしながら撫でてきた。
「兄さん?」
「いや、ごめん。うちの弟は優秀だなと思ってさ」
そう言いながらさらに強く撫でる。
「兄さん流石に痛いかも」
「あ、ごめん。つい」
「で、桜夏さんは本当に式神なの?」
「うん。そうだよ」
俺が聞くと兄さんは少し真面目な顔をして答えてくれた。
「やっぱりそうなんだ。母さんは知ってたの?」
「えぇ、もちろん。知らなかったのは怜と颯ね。ここに連れてきた時は來くんと驚いたわ」
母さんに聞くと、母さんはその時を思い出したのか、クスッと笑って答えてくれた。
「いつから桜夏さんは式神なの?」
「弟君、私のことは桜夏とお呼びください」
「じゃあ桜夏も弟君は辞めて。怜で良いから」
「では、恐れながら怜さまとお呼びさせていただきます」
桜夏は俺の気が狂いそうなほど丁寧に話す。
「全く、さっきの善処します、はどこに行ったんだろね~」
兄さんは桜夏にわざとらしく言う。
「申し訳ありません。なんか抜けなくて」
「抜けないって、癖なの?この喋り方」
俺は桜夏の言い方に何か引っ掛かり、尋ねた。
「いや、最初に桜夏と会って、式神にした時は普通にフランクな喋り方だったんだけどね。うちに連れてきた途端こうなった」
「どういうこと?それと兄さんが桜夏を式神にしたのはいつなの?」
連れてきた途端とは一体何があったのか。
それに、もし桜夏がずっと以前からいたのならばなぜ気付かなかったんだろ?
「式神にしたのは昨日だね。昨日の現場で桜夏を見つけて、除霊しようとしたんだけど、霊にしては珍しくあやかし並みに霊力があったから勿体無いと思って式神にならないか誘ったんだよ。まぁ、でも一番の理由は空気が綺麗だったからかな」
兄さんの言葉にその時のことを思い出しているのか桜夏は軽く目を閉じていた。
〝霊は空気を纏う〟
これは霊と関わりを持つ除霊家、巫女家では常識的に教えられることだ。
そしてその見え方は人によって違がうが、基準として悪霊は漆黒のような禍々しい空気を纏っており、良霊は新緑のような新鮮で清々しい空気を纏っているという。
この空気は術を使う者との相性が良ければ良いほど綺麗に感じるそうだ。
だから兄さんと桜夏は相性がいいのだろう。
「それで桜夏がこうなった理由は‥‥‥原因は巴菜だね」
「そうね。巴菜ね」
兄さんの言葉に母さんは同意するように繰り返す。
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