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「ほら、ルシオン…いつまで隠れてるんだ。」
セレスは俺の腰骨の辺りを撫で回してくる。
そこは、本当にくすぐったくて、さらには下半身が疼いてくる微妙な場所なのだ。
止めて欲しくてセレスの手から逃れようと向きを変えると、待っていたかのように布団を剥がされキスをされる。
「んんっ!」
不意討ちをくらい、抗議の声をあげるが言葉にならない。黒い人影がいつ襲ってくるか解らない為、舌を入れられまいと唇に力を込める。だがそんな俺の唇を意図も容易くセレスは陥落してきた。
くちゅ、くちゅ、と音がするほど舌と舌で唾液を絡め合いお互い貪った。
正直、セレスとのキスは、何も考えたくなくなるくらい気持ちが良い。俺はキスに夢中になっていた。
その時
「ヂ、ヂヂ、ヂ…。」
何か火花が散るような音がした。
「来たな。」
唇を離し俺を背後に庇い、セレスは来るのを知っていたかのように剣を構えた。
「さて……本人が来るとは思わなかったな。」
なんと、黒い人影じゃなくて犯人が直接来たのか?
というか、俺は未だに犯人が誰なのか知らされていないんだけど。
セレスに庇われながら、気になって相手を見た。
「それは………俺のものだ。」
窓のガラスが鋭利なもので半分に切られていて、そこから現れたのは、グレース王子だった。
「な、んで…。」
いつも無表情で何を考えているのか解らない人だったが、今は怒りの表情が怖い。ゲームの俺様で無慈悲なグレース王子そのままだった。
「ルシオンをあげたつもりもないのですが。」
「もう俺のものだ!」
グレース王子はそう言い放つと、セレスの方に剣を構えて走り出した。
セレスは俺を庇っているせいで、あまり身動きができない。
「ルシオン、俺から離れるな!」
そう言われても、庇われて守られているだけなんて出来ない。
俺のせいでセレスは上手く剣を使いこなせていないのだ。俺にも何か出来る事はないか、考え閃いた。
俺の闇属性を使って、グレース王子の足を動かないようにすれば良いんじゃないかと。
俺の闇属性魔法は自分の影を使い、物を取ってきたりする地味なものだが、幸い今夜は月夜で明るい。
俺はセレスの背後から、自分の影を使いグレース王子の足に絡ませる。
これで少しは加勢出来るだろうと思ったのだが、グレース王子の剣で切られ消されてしまった。
それでも、何度もやればグレース王子の邪魔は出来るだろうと思い影を使う。
だが、その俺の影を掴むものが現れた。例の黒い人影だ。
『…ジャマ、アンタハジャマ…』
男でも女でもないような、がらがら声が黒い人影から聴こえてきた。
その黒い人影に俺の影は捕まれたまま、俺まで金縛りに会ったように動けない。
『…キエテ!』
そう黒い人影が言った直後、黒い霧が俺を襲ってきた。
あ、知ってる。これヤバいやつだ。俺は冷や汗をかきながら呆然と見ているしかない。そして動けないまま、黒い霧に囲まれていく。
目の前が暗くなりかけた時、急に明るくなった。
誰かが剣で黒い霧を切り払ったのだ。
そして部屋に明かりも灯され、全体が把握できた。
「ルシオン、お前は俺が守る。」
俺の目の前に現れ、黒い霧を切って払ってくれたのはマクビルだった。
『…ドウシテ…』
黒い人影が両手を前に伸ばし、ゆらゆら近付いてくる。
さながら、亡霊みたいで怖い。
本当に人間みたいな影だ。いや、人間に影が纏わりついているような感じだ。
そこで俺は、思い出した。
ゲームの後半でヒロインに失恋した俺ことルシオンは、闇属性に取り付かれてしまう。最後にはあんな感じに自分では制御出来なくなり、闇に支配されマクビルに倒されるのだ。
(マクビルは、ヒロインを守りルシオンを倒す)
配役が違うだけで、今まさにこの状況なのだ。
ん?ヒロインが俺ってことか?じゃあ、あの闇に支配されているのは誰なんだ?
誰も闇属性は持っていなかったはずなのに。
『…ナゼ…ドウシテ…』
黒い霧を纏った誰かは、俺の影を引っ張りこみ自分のものにしてしまった。
俺の中の闇属性が引き摺り出された感触に、吐き気がしてその場で踞る。
なんて力だ。内臓を掻き回されたような気持ち悪さだ。
「ルシオン!大丈夫か!?…お前、何をした!」
『…ソイツヲ、コロス、タメ、ヤミヲモラッタ…』
体の内側が熱いのに背筋は寒くて、両腕で自分の体を抱き締めても震えが止まらない。額からは汗が伝ってくる。
気を失いそうになった時に、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「「「「ルシオン!」」」」
それは………セレス、マクビル、テオルド、ヒューリの声だった。
セレスは俺の腰骨の辺りを撫で回してくる。
そこは、本当にくすぐったくて、さらには下半身が疼いてくる微妙な場所なのだ。
止めて欲しくてセレスの手から逃れようと向きを変えると、待っていたかのように布団を剥がされキスをされる。
「んんっ!」
不意討ちをくらい、抗議の声をあげるが言葉にならない。黒い人影がいつ襲ってくるか解らない為、舌を入れられまいと唇に力を込める。だがそんな俺の唇を意図も容易くセレスは陥落してきた。
くちゅ、くちゅ、と音がするほど舌と舌で唾液を絡め合いお互い貪った。
正直、セレスとのキスは、何も考えたくなくなるくらい気持ちが良い。俺はキスに夢中になっていた。
その時
「ヂ、ヂヂ、ヂ…。」
何か火花が散るような音がした。
「来たな。」
唇を離し俺を背後に庇い、セレスは来るのを知っていたかのように剣を構えた。
「さて……本人が来るとは思わなかったな。」
なんと、黒い人影じゃなくて犯人が直接来たのか?
というか、俺は未だに犯人が誰なのか知らされていないんだけど。
セレスに庇われながら、気になって相手を見た。
「それは………俺のものだ。」
窓のガラスが鋭利なもので半分に切られていて、そこから現れたのは、グレース王子だった。
「な、んで…。」
いつも無表情で何を考えているのか解らない人だったが、今は怒りの表情が怖い。ゲームの俺様で無慈悲なグレース王子そのままだった。
「ルシオンをあげたつもりもないのですが。」
「もう俺のものだ!」
グレース王子はそう言い放つと、セレスの方に剣を構えて走り出した。
セレスは俺を庇っているせいで、あまり身動きができない。
「ルシオン、俺から離れるな!」
そう言われても、庇われて守られているだけなんて出来ない。
俺のせいでセレスは上手く剣を使いこなせていないのだ。俺にも何か出来る事はないか、考え閃いた。
俺の闇属性を使って、グレース王子の足を動かないようにすれば良いんじゃないかと。
俺の闇属性魔法は自分の影を使い、物を取ってきたりする地味なものだが、幸い今夜は月夜で明るい。
俺はセレスの背後から、自分の影を使いグレース王子の足に絡ませる。
これで少しは加勢出来るだろうと思ったのだが、グレース王子の剣で切られ消されてしまった。
それでも、何度もやればグレース王子の邪魔は出来るだろうと思い影を使う。
だが、その俺の影を掴むものが現れた。例の黒い人影だ。
『…ジャマ、アンタハジャマ…』
男でも女でもないような、がらがら声が黒い人影から聴こえてきた。
その黒い人影に俺の影は捕まれたまま、俺まで金縛りに会ったように動けない。
『…キエテ!』
そう黒い人影が言った直後、黒い霧が俺を襲ってきた。
あ、知ってる。これヤバいやつだ。俺は冷や汗をかきながら呆然と見ているしかない。そして動けないまま、黒い霧に囲まれていく。
目の前が暗くなりかけた時、急に明るくなった。
誰かが剣で黒い霧を切り払ったのだ。
そして部屋に明かりも灯され、全体が把握できた。
「ルシオン、お前は俺が守る。」
俺の目の前に現れ、黒い霧を切って払ってくれたのはマクビルだった。
『…ドウシテ…』
黒い人影が両手を前に伸ばし、ゆらゆら近付いてくる。
さながら、亡霊みたいで怖い。
本当に人間みたいな影だ。いや、人間に影が纏わりついているような感じだ。
そこで俺は、思い出した。
ゲームの後半でヒロインに失恋した俺ことルシオンは、闇属性に取り付かれてしまう。最後にはあんな感じに自分では制御出来なくなり、闇に支配されマクビルに倒されるのだ。
(マクビルは、ヒロインを守りルシオンを倒す)
配役が違うだけで、今まさにこの状況なのだ。
ん?ヒロインが俺ってことか?じゃあ、あの闇に支配されているのは誰なんだ?
誰も闇属性は持っていなかったはずなのに。
『…ナゼ…ドウシテ…』
黒い霧を纏った誰かは、俺の影を引っ張りこみ自分のものにしてしまった。
俺の中の闇属性が引き摺り出された感触に、吐き気がしてその場で踞る。
なんて力だ。内臓を掻き回されたような気持ち悪さだ。
「ルシオン!大丈夫か!?…お前、何をした!」
『…ソイツヲ、コロス、タメ、ヤミヲモラッタ…』
体の内側が熱いのに背筋は寒くて、両腕で自分の体を抱き締めても震えが止まらない。額からは汗が伝ってくる。
気を失いそうになった時に、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「「「「ルシオン!」」」」
それは………セレス、マクビル、テオルド、ヒューリの声だった。
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