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エピローグ
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「グレース王子、何もかも捨てて楽になった?」
グレース王子はこちらを見てへたり込んだ。
目線が同じになる。
「俺、今まで生きてきて凄く辛い事がいっぱいあった。何で俺だけこんな目に合うんだろうって、その度に死にたいとも思った。けど、俺は諦めなかったよ。足掻いて失敗もいっぱいして…頑張って俺は生きてる。」
俺はグレース王子に笑いかけた。この思いが伝わって欲しくて。
すると、どこか諦めていた表情のグレース王子は涙を流して泣き出した。
「すまない。ルシオン、すまなかった。」
グレース王子のこんな姿を誰も見たことが無いだろう。いつも王族として毅然としていたのだから。そして泣く事も愚痴を言う事も禁じられて、厳しく王族としての振る舞いを求められていたのだろう。
俺は、やっと人間らしくなったグレース王子の頭を撫でていた。
◆◆◆
俺たちは、グレース王子の所から戻り、エルーシ殿下の所に来て報告をしていた。
「ルシオンの男らしさには感動したよ。」
「殴って大丈夫だったかな。」
今になって不安になってきていた。また変な方にグレース王子が歪んでしまったらと思うと怖くなる。
「大丈夫だ。グレース王子の表情は、憑物が落ちたような感じだったからな。」
そうなのだ。何かを決心したようなスッキリとした表情だった。
「そして?君達はいつ式を挙げるんだ?」
「は?」
式って何の式?エルーシ殿下に唐突に話を振られ俺は、考えを巡らせる。この世界に、成人式は無いしと考えているとセレスが顔を赤らめてエルーシ殿下に反論する。
「まだプロポーズもしていないのに、話が早すぎます。」
「ええ!セレス、結婚するの⁉︎」
「ほら、この通り。」
何か、俺だけが話の内容を理解していないようで2人は残念そうに俺を見る。
「セレスも大変だな。」
エルーシ殿下はニヤリと笑った。
♦︎♦︎♦︎
侯爵家の邸に戻った俺たちは、夕食を終えてセレスの部屋にいた。
真面目な顔で話があると言われれば、やっぱりセレスの結婚の話なのかと鼓動が早くなり苦しくなった。
いずれは侯爵としてセレスは跡を継ぎ、結婚をして子供を作らなければならない。まだ先の話だと思っていたが、セレスももう17歳なのだから結婚の話があってもおかしくない。
その話を聞いて、俺は耐えられるだろうか。
まるで死刑台にいるような気持ちで、ソファに座っていた。
隣に座ったセレスは話を切り出してきた。
「ルシオン…結婚してくれ。」
そうか、俺が結婚してこの邸を出て行くのか。その方が良い。政略結婚なんて良くある話だ。
「…うん。解った。……相手はどこのご令嬢?」
「は?俺とだが?」
「うん。そっか、セレスは誰と?」
「だから、俺とルシオンが結婚するんだよ!」
「え?は?なに?」
頭がこんがらがって整理できない。つまり俺が、セレスと…セレスと俺が…。
セレスは俺の両手を握り真剣な眼差しで
「ルシオン、俺と結婚して欲しい。」
とプロポーズしてきた。これが本物のプロポーズか、と感心すると共に疑問が残る。
「俺…子供産めないんだけど…。」
「心配いらない。親戚から跡継ぎとして引き取れば良い。貴族だから同性で出来ないなんて言わせない。世間を変えれば良いだけだ。」
セレスは何でもないように平気で言うが、それがどんなに大変な事か解っているだろう。それでも、俺と一緒になりたいと思ってくれた事が嬉しい。
「俺で良いの?」
「ルシオンが良い。」
「セレス……俺と一緒に生きて、俺だけを愛していてくれる?」
「ルシオンの方が情熱的だったな。喜んで。」
俺たちは儀式として、お互いの指に針を刺し血を出し、それを舐め合ったあと、深い口付けを交わした。
これでお互いの魔力を分け与え、夫婦となるのだ。
普通は教会で結婚式の時にするものだが、俺たちは待てなかった。
「愛してる。」
「セレス、俺も…俺も愛してる。」
♦︎♦︎♦︎
学園が再開され皆元通りになったが、あの事件の事は誰も話さなかった。
グレース王子は廃嫡され、隣国の神殿で神父見習いとして頑張っているらしい。
俺はセレスと結婚したが、生活は何も変わっていない。
テオルドは笑顔で祝福してくれたが、少し瞳が潤んでいたのは内緒にしておく。
マグビルには、
「ケンカしたら俺の所に来いよ。………いつか、別れた時は今度こそ俺のものになってくれ。」
手を取られ指先に口付けされた。
マグビルの気持ちには気付いていた。鈍感な俺でも分かりやすいほど、あからさまに好意を示してくれていた。俺は、(ごめんそしてありがとう)と心の中で謝る。
ヒューリは知っていたようで、「おめでとう」とだけ言われた。
まだ学園生活も後1年。セレスとエルーシ殿下は卒業する。そして寮からも卒業と同時に居なくなるので寂しいが、俺は結婚をしたので週末には邸に戻ってセレスと過ごす事になっている。
ゲームと同じキャラクターなのに、物語が違っているこの世界は、現実なのか夢の中なのか未だ俺には解らない。だが血を巡らせ希望をもって、俺は生きている。この先に困難があっても諦めないだろう。
おわり
ーーーーーーー
最後まで、読んでくださりありがとうございます。
拙い文章で分かりにくい所もあったかと思います。最後までお付き合いくださり誠にありがとうございました。
後ほど、番外編も書く予定ですのでよろしくお願いします。
グレース王子はこちらを見てへたり込んだ。
目線が同じになる。
「俺、今まで生きてきて凄く辛い事がいっぱいあった。何で俺だけこんな目に合うんだろうって、その度に死にたいとも思った。けど、俺は諦めなかったよ。足掻いて失敗もいっぱいして…頑張って俺は生きてる。」
俺はグレース王子に笑いかけた。この思いが伝わって欲しくて。
すると、どこか諦めていた表情のグレース王子は涙を流して泣き出した。
「すまない。ルシオン、すまなかった。」
グレース王子のこんな姿を誰も見たことが無いだろう。いつも王族として毅然としていたのだから。そして泣く事も愚痴を言う事も禁じられて、厳しく王族としての振る舞いを求められていたのだろう。
俺は、やっと人間らしくなったグレース王子の頭を撫でていた。
◆◆◆
俺たちは、グレース王子の所から戻り、エルーシ殿下の所に来て報告をしていた。
「ルシオンの男らしさには感動したよ。」
「殴って大丈夫だったかな。」
今になって不安になってきていた。また変な方にグレース王子が歪んでしまったらと思うと怖くなる。
「大丈夫だ。グレース王子の表情は、憑物が落ちたような感じだったからな。」
そうなのだ。何かを決心したようなスッキリとした表情だった。
「そして?君達はいつ式を挙げるんだ?」
「は?」
式って何の式?エルーシ殿下に唐突に話を振られ俺は、考えを巡らせる。この世界に、成人式は無いしと考えているとセレスが顔を赤らめてエルーシ殿下に反論する。
「まだプロポーズもしていないのに、話が早すぎます。」
「ええ!セレス、結婚するの⁉︎」
「ほら、この通り。」
何か、俺だけが話の内容を理解していないようで2人は残念そうに俺を見る。
「セレスも大変だな。」
エルーシ殿下はニヤリと笑った。
♦︎♦︎♦︎
侯爵家の邸に戻った俺たちは、夕食を終えてセレスの部屋にいた。
真面目な顔で話があると言われれば、やっぱりセレスの結婚の話なのかと鼓動が早くなり苦しくなった。
いずれは侯爵としてセレスは跡を継ぎ、結婚をして子供を作らなければならない。まだ先の話だと思っていたが、セレスももう17歳なのだから結婚の話があってもおかしくない。
その話を聞いて、俺は耐えられるだろうか。
まるで死刑台にいるような気持ちで、ソファに座っていた。
隣に座ったセレスは話を切り出してきた。
「ルシオン…結婚してくれ。」
そうか、俺が結婚してこの邸を出て行くのか。その方が良い。政略結婚なんて良くある話だ。
「…うん。解った。……相手はどこのご令嬢?」
「は?俺とだが?」
「うん。そっか、セレスは誰と?」
「だから、俺とルシオンが結婚するんだよ!」
「え?は?なに?」
頭がこんがらがって整理できない。つまり俺が、セレスと…セレスと俺が…。
セレスは俺の両手を握り真剣な眼差しで
「ルシオン、俺と結婚して欲しい。」
とプロポーズしてきた。これが本物のプロポーズか、と感心すると共に疑問が残る。
「俺…子供産めないんだけど…。」
「心配いらない。親戚から跡継ぎとして引き取れば良い。貴族だから同性で出来ないなんて言わせない。世間を変えれば良いだけだ。」
セレスは何でもないように平気で言うが、それがどんなに大変な事か解っているだろう。それでも、俺と一緒になりたいと思ってくれた事が嬉しい。
「俺で良いの?」
「ルシオンが良い。」
「セレス……俺と一緒に生きて、俺だけを愛していてくれる?」
「ルシオンの方が情熱的だったな。喜んで。」
俺たちは儀式として、お互いの指に針を刺し血を出し、それを舐め合ったあと、深い口付けを交わした。
これでお互いの魔力を分け与え、夫婦となるのだ。
普通は教会で結婚式の時にするものだが、俺たちは待てなかった。
「愛してる。」
「セレス、俺も…俺も愛してる。」
♦︎♦︎♦︎
学園が再開され皆元通りになったが、あの事件の事は誰も話さなかった。
グレース王子は廃嫡され、隣国の神殿で神父見習いとして頑張っているらしい。
俺はセレスと結婚したが、生活は何も変わっていない。
テオルドは笑顔で祝福してくれたが、少し瞳が潤んでいたのは内緒にしておく。
マグビルには、
「ケンカしたら俺の所に来いよ。………いつか、別れた時は今度こそ俺のものになってくれ。」
手を取られ指先に口付けされた。
マグビルの気持ちには気付いていた。鈍感な俺でも分かりやすいほど、あからさまに好意を示してくれていた。俺は、(ごめんそしてありがとう)と心の中で謝る。
ヒューリは知っていたようで、「おめでとう」とだけ言われた。
まだ学園生活も後1年。セレスとエルーシ殿下は卒業する。そして寮からも卒業と同時に居なくなるので寂しいが、俺は結婚をしたので週末には邸に戻ってセレスと過ごす事になっている。
ゲームと同じキャラクターなのに、物語が違っているこの世界は、現実なのか夢の中なのか未だ俺には解らない。だが血を巡らせ希望をもって、俺は生きている。この先に困難があっても諦めないだろう。
おわり
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最後まで、読んでくださりありがとうございます。
拙い文章で分かりにくい所もあったかと思います。最後までお付き合いくださり誠にありがとうございました。
後ほど、番外編も書く予定ですのでよろしくお願いします。
応援ありがとうございます!
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