愛するあなたへ最期のお願い

つぶあん

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9:求婚

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「アリシア。あなたにご紹介したい方がいるの」

ある貴婦人が言った。

「王家としても信頼している方ですよ」

王妃様もそう言った。

「フィリップ・ド・モンテスキュー公爵よ」
「…………」

その人は、私の目の前で微笑んでいた。

「……」

その人を、私は忘れてはいなかった。

「……」

天使様。

私の祈りを聞いて、とてもよくしてくださった、あの優しい天使様。
天国で一度だけお会いした、美しくて優しい天使様。

あの方にそっくりな男性が私に微笑んでいる。

「はじめまして」
「……」

とろけるような甘い声で、天使様が……

いいえ。
モンテスキュー公爵が、挨拶をしてくれる。

お辞儀をしようと膝を折りかけた、その時。

「!」

モンテスキュー公爵が悪戯っぽく目を細め、唇に人差し指を当てる。

「……」

秘密。
二人だけの、秘密。

この方はあの天使様……

「愛らしい。噂には聞いていましたが、本当に美しく清らかな令嬢ですね」

初対面を装って天使様が公爵として王妃様や貴婦人たちと談笑している。
そんな時間が穏やかに過ぎていく。

そして。

「アリシア・ベルモンド伯爵令嬢。君に恋をしてしまった」
「天……」

その方の人差し指が私の唇を塞いだ。
眩しい程の微笑みが私に注がれる。

「可愛いアリシア。愛している」
「……」
「私と、結婚してください」

私は天使様に恋をしていたのだろうか。
わからない。

でも。

天使様は私の心に居てくださった。
ずっとずっと、私の支えになってくださった。

天使様への感謝の気持ちは本物で、愛の告白は、涙が溢れるほど嬉しかった。

この方が愛してくれるなら。
その愛に、心から報いたい。

「はい。喜んでお受けいたします」
「ありがとう、アリシア」
「こんな私ですが、よろしくお願いいたします」

天使様が私を優しく抱きしめてキスをする。
あの時と同じように、優しく抱きしめて、今は、キスを。

でも……どうして?

今までモンテスキュー公爵という方は存在していなかった。
それなのに、王妃様も紹介してくださった貴婦人も、ずっと交流があったかのように自然に打ち解けている。

聞いてみると、お父様もお母様も、モンテスキュー公爵の存在を知っていた。

私だけが知らなかったの……?

「神様に交渉して、私を人間にしてもらったんだよ」
「えっ!?」

どくん、と心臓が波打った。
何かとてもいけない事のような気がした。

そんな私を抱き寄せて天使様……公爵様は甘く微笑む。

「君と生きたかったから。アリシア、君が幸せな人生を送ったら、私はまた天使に戻るから安心して」
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