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14:愛しい人生
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盛大な結婚式から年月は過ぎ、幾つもの奇跡が訪れた。
公爵夫人となった私は、王妃様や宮廷の貴婦人たちによくしてもらい、平和に日々を重ねている。
新しい人生は色鮮やかで、豊かな驚きに満ちていた。
長男のエミールは天使様の面影がそっくりそのまま小さくなった様子で、わんぱく。
神様の御慈悲で興された公爵家をしっかり守っていってくれそうで頼もしい。
「ちゃんと人間だから安心して」
今では夫の天使様が、悪戯っぽく私に囁く。
そんなエミールが愛してやまないのは、三つ下の妹ソフィア。
ソフィアは私と天使様のどちらにも似ていて、少し内気だけれど好奇心もたっぷり持ち合わせた魅力的な女の子だった。
二人とも愛しくてたまらない。
幸い、国も平和で、子どもたちはすくすくと育っていった。
私は公爵夫人として、また一人の母親として、そして妻として、充実した日々を送っている。
たまに噂を耳にすることもあった。
それは王妃様や、その侍女、または貴婦人たちによって、私の元へと運ばれて来るあの人の近況だった。
「イザベラ夫人は年々わがままに磨きがかかっていますわね」
「お婿さんもあちこち謝罪に走り回って、ご苦労ですこと」
レオナルド。
私が昔、愛した人。
彼が婿入りしたモンフォール侯爵家は、名家だったのに、今はもうあまりいい噂を聞かない。
13才になったソフィアがエリック王子と婚約すると、結婚準備の多忙の隙間を吹き抜ける風のように、また二人の噂が耳に入った。
「モンフォール侯爵は奥様の浪費癖に四苦八苦みたいですわね」
「お婿さんにしてはよくやっていらっしゃいますこと」
あまりいい噂は聞かないけれど、私は微かに安堵する。
なぜなら、あの日、私を見棄てたある男性は、今では妻を見棄てず、どんな苦境にも寄り添っているようだったから。
だけどもう、遠い人。
私は噂を聞いてふと思い出した時にだけ、モンフォール侯爵家の安寧を祈る。
たとえそれが借金でも、没落でも。
二人の歩む道がどれだけ険しくても、愛しあって、支え合って、生き抜いてほしい。誰もがそうであるように。
「アリシア」
公爵として多忙な中、時間を作って私を気遣ってくれる優しい夫。
フィリップ様、天使様、そして旦那様。
私の愛する人はすっかり人間らしくなって、元気に日々を過ごしている。
「朝ぶりだね。今日もうっとりするほど綺麗だよ」
「あなたのおかげよ」
「そうかもしれない。ソフィアも最近、どんどん君に似てきたね」
「あっという間に結婚式ね」
「ああ、思い出すよ」
父親の顔をして、私の天使様が遠くに視線を移す。
「……ウェディングドレス姿の君が、今も、目に映る……」
「ソフィアの方がずっと綺麗。あなたにも似ていますもの」
「私は私の面影にうっとりしないよ」
我に返ったように言い放つ夫に、私はくすりと笑みを返す。
私が幸せであるように、あなたもまた、幸せなのね。
嬉しい。
こんな日々がこれからも続いていく。
愛しい日々が。
私が神様にこの命をお返しする日が来たら、息子に、娘に、夫に、最期に伝えたいこと。
それはきっと、今思っている気持ちと変わらない。
私のもとへ舞い降りてくれて、ありがとう。
愛してる。
あなたの愛する人生を、大切に生きてね。
公爵夫人となった私は、王妃様や宮廷の貴婦人たちによくしてもらい、平和に日々を重ねている。
新しい人生は色鮮やかで、豊かな驚きに満ちていた。
長男のエミールは天使様の面影がそっくりそのまま小さくなった様子で、わんぱく。
神様の御慈悲で興された公爵家をしっかり守っていってくれそうで頼もしい。
「ちゃんと人間だから安心して」
今では夫の天使様が、悪戯っぽく私に囁く。
そんなエミールが愛してやまないのは、三つ下の妹ソフィア。
ソフィアは私と天使様のどちらにも似ていて、少し内気だけれど好奇心もたっぷり持ち合わせた魅力的な女の子だった。
二人とも愛しくてたまらない。
幸い、国も平和で、子どもたちはすくすくと育っていった。
私は公爵夫人として、また一人の母親として、そして妻として、充実した日々を送っている。
たまに噂を耳にすることもあった。
それは王妃様や、その侍女、または貴婦人たちによって、私の元へと運ばれて来るあの人の近況だった。
「イザベラ夫人は年々わがままに磨きがかかっていますわね」
「お婿さんもあちこち謝罪に走り回って、ご苦労ですこと」
レオナルド。
私が昔、愛した人。
彼が婿入りしたモンフォール侯爵家は、名家だったのに、今はもうあまりいい噂を聞かない。
13才になったソフィアがエリック王子と婚約すると、結婚準備の多忙の隙間を吹き抜ける風のように、また二人の噂が耳に入った。
「モンフォール侯爵は奥様の浪費癖に四苦八苦みたいですわね」
「お婿さんにしてはよくやっていらっしゃいますこと」
あまりいい噂は聞かないけれど、私は微かに安堵する。
なぜなら、あの日、私を見棄てたある男性は、今では妻を見棄てず、どんな苦境にも寄り添っているようだったから。
だけどもう、遠い人。
私は噂を聞いてふと思い出した時にだけ、モンフォール侯爵家の安寧を祈る。
たとえそれが借金でも、没落でも。
二人の歩む道がどれだけ険しくても、愛しあって、支え合って、生き抜いてほしい。誰もがそうであるように。
「アリシア」
公爵として多忙な中、時間を作って私を気遣ってくれる優しい夫。
フィリップ様、天使様、そして旦那様。
私の愛する人はすっかり人間らしくなって、元気に日々を過ごしている。
「朝ぶりだね。今日もうっとりするほど綺麗だよ」
「あなたのおかげよ」
「そうかもしれない。ソフィアも最近、どんどん君に似てきたね」
「あっという間に結婚式ね」
「ああ、思い出すよ」
父親の顔をして、私の天使様が遠くに視線を移す。
「……ウェディングドレス姿の君が、今も、目に映る……」
「ソフィアの方がずっと綺麗。あなたにも似ていますもの」
「私は私の面影にうっとりしないよ」
我に返ったように言い放つ夫に、私はくすりと笑みを返す。
私が幸せであるように、あなたもまた、幸せなのね。
嬉しい。
こんな日々がこれからも続いていく。
愛しい日々が。
私が神様にこの命をお返しする日が来たら、息子に、娘に、夫に、最期に伝えたいこと。
それはきっと、今思っている気持ちと変わらない。
私のもとへ舞い降りてくれて、ありがとう。
愛してる。
あなたの愛する人生を、大切に生きてね。
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ご感想ありがとうございます。
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お読み下さり本当にありがとうございました。
優しいお話でした。
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