ＤＥＡＴＨＧＡＭＥ～裏切りと信念の姫～

四章

悲しくて残酷で、優しくて幸福な夢

　――あぁ、これは夢だとすぐに分かった。
　だって、目の前でみんなが何もなかったように笑っている。……人形になった人も、ナナミも、兄さん達も、アイトも。……シルヤの、屈託のない笑顔なんて久しぶりに見た。
（ごめんね、シルヤ……）
　心の中で謝りながら、昔のことを思い出す。
　思えば私は、シルヤに苦労ばかりかけさせてしまっていた。……祖父母が亡くなった時に引きこもってしまった私を、外に連れ出そうとカウンセリングの先生と必死になって寄り添ってくれた。おじが亡くなって誰とも会いたくないと言った時も、彼は常に傍にいてくれた。
　――私に不思議な力を持っていると知っても、絶対に離れないでいてくれた。
（あなたがいてくれて、本当に幸せだったよ）
　涙が流れる。その幸せを、私は壊すかもしれないのだ。
　目の前の、幸せな夢が眩しすぎて目をそらしてしまう。私は、そこに混ざったらダメだ。
「……なんで、こんな夢を見るんだよ……」
　拳を握り締める。既に、希望にすがるほど生存欲求なんてない。それなのになんでこんな、酷く残酷な夢を見てしまったのだろうか？
　――あぁ、なんで私が生きて、生きたかったハズの人形が死んでしまったのだろう。

　目を開くと、シルヤが心配そうにのぞき込んでいた。
「スズ、どうしたんだよ？涙なんか流して……」
　そう言われ、初めて頬が濡れていることに気付いた。
「悪夢でも見ていたのか？」
「……ううん、そうじゃないよ……」
　涙を拭いながら首を横に振る。実際、悪夢ではなかった。
「……シルヤ」
「なんだ？」
「……絶対に、死なないでね……」
　小さく告げたその言葉に彼は目を丸くした後、
「……あぁ」
　悲しそうな瞳をしながら頷いた。