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四章
モニター室は怪しいものがたくさん
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服を着替え、少し休んでいるとエレンさんに「ユウヤ」と呼ばれた。
「どうしました?」
「その……もし私に何かあったら……スズエを頼みますね」
縁起でもないことを言われ、ボクは言葉を詰まらせる。
「……っ、急に何を言うんですか?」
ボクがそう言うけど、彼はただ笑っているだけだった。
ゆっくり休めたからか、身体が軽い。……でも、やっぱり心は休まらない。
「おう、起きたか」
タカシさんがボクとエレンさんを見て言う。どうやら人形達は充電があるらしく、それを繋いでいた。
部屋から出ると、スズエさん達以外はロビーに集まっていた。
「あれ?スズちゃん達は?」
マイカさんが首を傾げる。「さすがにゆっくりさせましょうよ」とレイさんがなだめていると、三人の足音が聞こえてきた。
「す、すみません……遅くなりました」
「大丈夫ですよ。むしろもう少しゆっくり休まないといけないですよ」
スズエさんが頭を下げるとカナクニ先生がそう言った。でも彼女は「いえ、私達だけ休むわけにもいかないですよ」と答えた。
「大丈夫っすよ。スズが無理しないように見張っておくっすから」
シルヤ君が笑顔でそう言う。ラン君も「……まぁ、ペアだしな」と頭を掻いた。それならいいかとボク達は一応納得する。
――スズエさんの、どこか悲しげな瞳が印象に残った。
「……とにかく、首輪をどうにかしたいですね」
スズエさんの言葉に「そうだな……」とマミさんは頷く。
「な、何か心当たりとかは……」
キナちゃんの言葉に人形達は首を横に振る。
「俺達も探索しているわけじゃないんだ。だから分からないかな」
「そ、そうですか……」
「……それなら、ちょっとハッキングしますか」
レイさんが冷たく言うと、スズエさんがパソコンを持ち出してそんなことを言い出した。
「え、ハッキング?え?」
「ちょっと待っててください。この施設の地図さえ出せばいいですよね?」
すぐに終わります、と言って彼女はカタカタとパソコンで何かをし出した。
「シルヤ、アメリカが建国された年って何年?」
なんか変な問題が出てきたんだけど、とスズエさんは首を傾げた。
「独立宣言なら1776年だろ?スズ、本当に世界史が苦手なんだな」
「……うるさいよ。世界史なんて覚えても意味ないじゃん」
シルヤ君の言葉に彼女は顔を赤くしながら答える。あ、世界史が苦手なんだ……意外……。
そこさえ乗り越えたらあとは簡単だったのだろう、「地図が出てきましたよ」とパソコンの画面を見せてくれた。
「上の階にモニター室があるみたいですね。あ、図書館もある……」
あるとしたらここですかね?とスズエさんが言うと、「へー……いろいろな場所があるんだねー」とケイさんが呟いた。
「そうみたいですね。分かれて行動するのもありだとは思います」
「うーん……そうだねー……じゃあ、スズちゃん達とユウヤ達がモニター室に行ってほしいかなー?」
ケイさんの指示に「まぁ、私は構いませんけど」とスズエさんが頷く。
「それじゃあ、スズちゃん達に首輪の設定をどうにかしてもらう間、それぞれ分かれて探索しようかー」
そうして、ボク達は別々に探索し始めた。
上の階へはエレベーターを使う必要があるらしい。試しに行ってみると、意外にも使うことが出来た。
「行きましょうか」
エレンさんに言われ、タカシさんは左のエレベーターに、スズエさんが右のエレベーターに乗る。ボク達も右のエレベーターに乗ると、
「おい!そこの銀髪と黒髪!せめてお前らはこっち来い!」
タカシさんにそう言われた。え?スズエさんの方が大事なんだけど……。
「……タカシさんもこっちに来たらどうでしょう?まだ余裕がありますし」
スズエさんが彼を呼ぶ。優しいなぁ……。
上の階に来ると、スズエさんは一直線にモニター室に向かった。モニター室はどこもおかしなところはなさそうだった。
スズエさんが触っていくと、画面に首輪の設定が出てきた。
「これですね。ちょっと時間がかかりそうです……監視カメラがあったので、何かあったら教えてください」
ボク達に指示を出したスズエさんはすぐに首輪の設定をいじり出す。せめて赤い糸だけでもどうにか出来たら自由に行動出来る。
ボク達はまず、モニター室の中を探索していく。特におかしなところはないように思えるけど……。
(……ん?)
壁に少し違和感がある。なんだろ……?
下手に触るわけにもいかないから一度別の場所を見て回る。……なんだろ?この小さなモニター。
電源を入れようと手を伸ばすと「ユウヤさん」と声をかけられた。ビクッと震え、振り返るとスズエさんが立っていた。
「す、スズエさん?」
「……?どうしました?少し分からないところがあったから聞きたかっただけなんですけど……」
「あ、あぁ、そうなんだ。どれ?」
冷や汗をかきながら、ボクはスズエさんと一緒にモニターを見る。
……ちょっとだけ、怖かった。
そう思ってしまう自分が情けない。……疑いたくないのに。
(何かあるのかな……?)
気になるけど、聞くことなんて出来るわけもなかった。
「どうしました?」
「その……もし私に何かあったら……スズエを頼みますね」
縁起でもないことを言われ、ボクは言葉を詰まらせる。
「……っ、急に何を言うんですか?」
ボクがそう言うけど、彼はただ笑っているだけだった。
ゆっくり休めたからか、身体が軽い。……でも、やっぱり心は休まらない。
「おう、起きたか」
タカシさんがボクとエレンさんを見て言う。どうやら人形達は充電があるらしく、それを繋いでいた。
部屋から出ると、スズエさん達以外はロビーに集まっていた。
「あれ?スズちゃん達は?」
マイカさんが首を傾げる。「さすがにゆっくりさせましょうよ」とレイさんがなだめていると、三人の足音が聞こえてきた。
「す、すみません……遅くなりました」
「大丈夫ですよ。むしろもう少しゆっくり休まないといけないですよ」
スズエさんが頭を下げるとカナクニ先生がそう言った。でも彼女は「いえ、私達だけ休むわけにもいかないですよ」と答えた。
「大丈夫っすよ。スズが無理しないように見張っておくっすから」
シルヤ君が笑顔でそう言う。ラン君も「……まぁ、ペアだしな」と頭を掻いた。それならいいかとボク達は一応納得する。
――スズエさんの、どこか悲しげな瞳が印象に残った。
「……とにかく、首輪をどうにかしたいですね」
スズエさんの言葉に「そうだな……」とマミさんは頷く。
「な、何か心当たりとかは……」
キナちゃんの言葉に人形達は首を横に振る。
「俺達も探索しているわけじゃないんだ。だから分からないかな」
「そ、そうですか……」
「……それなら、ちょっとハッキングしますか」
レイさんが冷たく言うと、スズエさんがパソコンを持ち出してそんなことを言い出した。
「え、ハッキング?え?」
「ちょっと待っててください。この施設の地図さえ出せばいいですよね?」
すぐに終わります、と言って彼女はカタカタとパソコンで何かをし出した。
「シルヤ、アメリカが建国された年って何年?」
なんか変な問題が出てきたんだけど、とスズエさんは首を傾げた。
「独立宣言なら1776年だろ?スズ、本当に世界史が苦手なんだな」
「……うるさいよ。世界史なんて覚えても意味ないじゃん」
シルヤ君の言葉に彼女は顔を赤くしながら答える。あ、世界史が苦手なんだ……意外……。
そこさえ乗り越えたらあとは簡単だったのだろう、「地図が出てきましたよ」とパソコンの画面を見せてくれた。
「上の階にモニター室があるみたいですね。あ、図書館もある……」
あるとしたらここですかね?とスズエさんが言うと、「へー……いろいろな場所があるんだねー」とケイさんが呟いた。
「そうみたいですね。分かれて行動するのもありだとは思います」
「うーん……そうだねー……じゃあ、スズちゃん達とユウヤ達がモニター室に行ってほしいかなー?」
ケイさんの指示に「まぁ、私は構いませんけど」とスズエさんが頷く。
「それじゃあ、スズちゃん達に首輪の設定をどうにかしてもらう間、それぞれ分かれて探索しようかー」
そうして、ボク達は別々に探索し始めた。
上の階へはエレベーターを使う必要があるらしい。試しに行ってみると、意外にも使うことが出来た。
「行きましょうか」
エレンさんに言われ、タカシさんは左のエレベーターに、スズエさんが右のエレベーターに乗る。ボク達も右のエレベーターに乗ると、
「おい!そこの銀髪と黒髪!せめてお前らはこっち来い!」
タカシさんにそう言われた。え?スズエさんの方が大事なんだけど……。
「……タカシさんもこっちに来たらどうでしょう?まだ余裕がありますし」
スズエさんが彼を呼ぶ。優しいなぁ……。
上の階に来ると、スズエさんは一直線にモニター室に向かった。モニター室はどこもおかしなところはなさそうだった。
スズエさんが触っていくと、画面に首輪の設定が出てきた。
「これですね。ちょっと時間がかかりそうです……監視カメラがあったので、何かあったら教えてください」
ボク達に指示を出したスズエさんはすぐに首輪の設定をいじり出す。せめて赤い糸だけでもどうにか出来たら自由に行動出来る。
ボク達はまず、モニター室の中を探索していく。特におかしなところはないように思えるけど……。
(……ん?)
壁に少し違和感がある。なんだろ……?
下手に触るわけにもいかないから一度別の場所を見て回る。……なんだろ?この小さなモニター。
電源を入れようと手を伸ばすと「ユウヤさん」と声をかけられた。ビクッと震え、振り返るとスズエさんが立っていた。
「す、スズエさん?」
「……?どうしました?少し分からないところがあったから聞きたかっただけなんですけど……」
「あ、あぁ、そうなんだ。どれ?」
冷や汗をかきながら、ボクはスズエさんと一緒にモニターを見る。
……ちょっとだけ、怖かった。
そう思ってしまう自分が情けない。……疑いたくないのに。
(何かあるのかな……?)
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