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四章
人形達の裏切り
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「あ、なるほど。こうしたらよかったんですね」
何とか一緒に解いて、さぁ赤い糸の設定を解除しようとしたその時だった。
「――っ!?」
監視カメラを見ていたシルヤ君が声なき悲鳴をあげた。スズエさんはすぐにシルヤ君のところに行き、監視カメラを見る。ボクも同じように、カメラを見た。
――マイカさんが、ゴウさんを刺していた。
スズエさんはシルヤ君の手を握り、エレンさんとタカシさん、ラン君を呼ぶ。そしてすぐに現場へ向かった。
現場には既に全員がそろっていた。キナちゃんとフウ君が顔を青ざめていると「マミさん、ハナさん、キナとフウを見ていてください」とスズエさんが指示を出していく。こういう時、スズエさんの冷静さが本当に助かる。
マイカさんはゴウさんに飛ばされたのか、地面に倒れていた。壊れては……いなさそうだ。スズエさんがゴウさんとマイカさんに近付くと、シルヤ君も続こうとする。
「シルヤ、お前はエレン……兄さんと一緒にいなさい。あんまり見ない方がいい」
しかし、それをスズエさん自身が止めた。
「でも、二人でした方が……」
「こういう時ぐらい、私の言うことを聞きなさい。……大丈夫、人手が必要になったら頼むから」
そう言われ、シルヤ君は怯んだのちエレンさんの傍に向かう。それを見て、スズエさんはまずゴウさんの傷口を確認した。
「……内臓にまでは達していなさそうですね。それが不幸中の幸いですか。でもわき腹に刺されたことを考えると一刻を争いますね」
ブツブツ言いながら、スズエさんは自分の上着を脱いで傷口を押さえた。その間も、マイカさんの方をチラチラ見ている。
「あー、クソッ。救急箱を持ってくればよかった……」
時々、そんな悪態をつきながらボクの方を見て、「すみません、押さえていてくれませんか?」と頼まれた。頷いて近くに来ると、すぐに代わって今度はマイカさんの方に向かう。
「ど、どうする気?」
ユミさんをはじめとした人形達が怯えたような目をする。正直、ボクもかなりひやひやしていた。
――まさか、壊しはしないよね……。
スズエさんの意図が読み取れない。それがさらに恐怖感を煽る。
スズエさんはマイカさんの前にしゃがみ、「……大丈夫ですか?」と問いかけた。少し揺さぶると、マイカさんは薄く目を開く。
「ひっ……す、スズちゃん……」
そして、スズエさんの顔を見て青ざめさせた。かなり怯えているようだ。
彼女はマイカさんの腕を掴むと、振り払おうとブンブン振っていた。
「落ち着いてください」
「い、いや……!死にたくない……っ!」
「あの……」
「ごめんなさい……っ!」
「だから!落ち着いてください!」
スズエさんが叫ぶと、マイカさんが肩を震わせた。
「まったく……私、何かしたかなぁ……?」
スズエさんがため息をつきながら頭を掻く。……え、何もしないの?
「血も涙もない奴だとでも思っていたんですか?……まぁ、否定しないけどさ……」
「そ、その……」
「別に、腕の怪我を確認しようと思っただけですよ。そこまで怖がらせるつもりなかったんですけど……」
あ、そういう……?
というより、少しぐらい否定してほしい。スズエさんの場合、嘘をついてるとはどうしても思えないから。
改めてマイカさんの腕を優しく見ると、「なるほど……」と少し考えこんだ。そしてどこで見つけたのか、工具を取り出して修理し始めた。
「え……?」
「動かさないでください、集中できないので。腕が動かなくなってもいいなら構いませんけど」
そう言われては動くわけにもいかないだろう。マイカさんは怯えた顔をしながら直していくスズエさんを見ていた。
少しして、包帯まで巻き終わったスズエさんは立ち上がる。マイカさんは腕が動くことを確認して、驚いていた。その間にスズエさんはボクの方に来た。
「ゴウさんは大丈夫そうですか?」
「あ、いや……ちょっと厳しいかも」
「……そう、ですか……」
ボクの答えにスズエさんは拳を握り、落ちていた包丁を拾った。「な、何する気なの!?」とレイさんが駆け寄ろうとするけど、その前に彼女は自分の手首を強く斬りつけた。
――あぁ、まさか……。
全員がキョトンとしている中、彼女がゴウさんの傷口に血を垂らすと小さな光があふれた。彼女が何をしたのか、ボクには分かった。
目を開いたゴウさんは傷口が塞がっていることに驚いていた。スズエさんは手首を隠しながら「今はゆっくりしていてください」と彼に告げた。
「シルヤ、ラン、行こう。赤い糸の解除をしたい」
「了解!あ、手首の手当てはあとでする」
「ありがとう、シルヤ」
そのまま、スズエさんはシルヤ君とラン君を連れてモニター室に戻っていった。
何とか一緒に解いて、さぁ赤い糸の設定を解除しようとしたその時だった。
「――っ!?」
監視カメラを見ていたシルヤ君が声なき悲鳴をあげた。スズエさんはすぐにシルヤ君のところに行き、監視カメラを見る。ボクも同じように、カメラを見た。
――マイカさんが、ゴウさんを刺していた。
スズエさんはシルヤ君の手を握り、エレンさんとタカシさん、ラン君を呼ぶ。そしてすぐに現場へ向かった。
現場には既に全員がそろっていた。キナちゃんとフウ君が顔を青ざめていると「マミさん、ハナさん、キナとフウを見ていてください」とスズエさんが指示を出していく。こういう時、スズエさんの冷静さが本当に助かる。
マイカさんはゴウさんに飛ばされたのか、地面に倒れていた。壊れては……いなさそうだ。スズエさんがゴウさんとマイカさんに近付くと、シルヤ君も続こうとする。
「シルヤ、お前はエレン……兄さんと一緒にいなさい。あんまり見ない方がいい」
しかし、それをスズエさん自身が止めた。
「でも、二人でした方が……」
「こういう時ぐらい、私の言うことを聞きなさい。……大丈夫、人手が必要になったら頼むから」
そう言われ、シルヤ君は怯んだのちエレンさんの傍に向かう。それを見て、スズエさんはまずゴウさんの傷口を確認した。
「……内臓にまでは達していなさそうですね。それが不幸中の幸いですか。でもわき腹に刺されたことを考えると一刻を争いますね」
ブツブツ言いながら、スズエさんは自分の上着を脱いで傷口を押さえた。その間も、マイカさんの方をチラチラ見ている。
「あー、クソッ。救急箱を持ってくればよかった……」
時々、そんな悪態をつきながらボクの方を見て、「すみません、押さえていてくれませんか?」と頼まれた。頷いて近くに来ると、すぐに代わって今度はマイカさんの方に向かう。
「ど、どうする気?」
ユミさんをはじめとした人形達が怯えたような目をする。正直、ボクもかなりひやひやしていた。
――まさか、壊しはしないよね……。
スズエさんの意図が読み取れない。それがさらに恐怖感を煽る。
スズエさんはマイカさんの前にしゃがみ、「……大丈夫ですか?」と問いかけた。少し揺さぶると、マイカさんは薄く目を開く。
「ひっ……す、スズちゃん……」
そして、スズエさんの顔を見て青ざめさせた。かなり怯えているようだ。
彼女はマイカさんの腕を掴むと、振り払おうとブンブン振っていた。
「落ち着いてください」
「い、いや……!死にたくない……っ!」
「あの……」
「ごめんなさい……っ!」
「だから!落ち着いてください!」
スズエさんが叫ぶと、マイカさんが肩を震わせた。
「まったく……私、何かしたかなぁ……?」
スズエさんがため息をつきながら頭を掻く。……え、何もしないの?
「血も涙もない奴だとでも思っていたんですか?……まぁ、否定しないけどさ……」
「そ、その……」
「別に、腕の怪我を確認しようと思っただけですよ。そこまで怖がらせるつもりなかったんですけど……」
あ、そういう……?
というより、少しぐらい否定してほしい。スズエさんの場合、嘘をついてるとはどうしても思えないから。
改めてマイカさんの腕を優しく見ると、「なるほど……」と少し考えこんだ。そしてどこで見つけたのか、工具を取り出して修理し始めた。
「え……?」
「動かさないでください、集中できないので。腕が動かなくなってもいいなら構いませんけど」
そう言われては動くわけにもいかないだろう。マイカさんは怯えた顔をしながら直していくスズエさんを見ていた。
少しして、包帯まで巻き終わったスズエさんは立ち上がる。マイカさんは腕が動くことを確認して、驚いていた。その間にスズエさんはボクの方に来た。
「ゴウさんは大丈夫そうですか?」
「あ、いや……ちょっと厳しいかも」
「……そう、ですか……」
ボクの答えにスズエさんは拳を握り、落ちていた包丁を拾った。「な、何する気なの!?」とレイさんが駆け寄ろうとするけど、その前に彼女は自分の手首を強く斬りつけた。
――あぁ、まさか……。
全員がキョトンとしている中、彼女がゴウさんの傷口に血を垂らすと小さな光があふれた。彼女が何をしたのか、ボクには分かった。
目を開いたゴウさんは傷口が塞がっていることに驚いていた。スズエさんは手首を隠しながら「今はゆっくりしていてください」と彼に告げた。
「シルヤ、ラン、行こう。赤い糸の解除をしたい」
「了解!あ、手首の手当てはあとでする」
「ありがとう、シルヤ」
そのまま、スズエさんはシルヤ君とラン君を連れてモニター室に戻っていった。
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