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追放少女と名前
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「はい、これ、着て」
凪咲はスライム――いまだ名もない彼女に、予備の服を手渡した。
さすがにそのままでは目立つし、町の人たちに怪しまれる。
一見人間に見える今の姿なら、ちゃんと着飾れば違和感も少ないはずだ。
「わぁ……!」
スライムは目を輝かせながら、ぎこちない手つきで服を身につけた。
少しずつだけど、人間らしくなってきている気がする。
そして、二人は町の門をくぐった。
町は賑わっていた。
行き交う人々、香ばしい屋台の匂い、見慣れない商品が並ぶ露店。
スライムはそのすべてに興味津々だった。
「なぎさ、これなに? たべていい?」
「ちょ、待って、それはお店のだって!」
言うが早いか、スライムは屋台の焼き菓子に手を伸ばし、ぱくり。
店主が目を剥き、凪咲は慌てて財布を取り出す。
「す、すみません! これ、払います!」
さらに、織物屋では布の感触に感動して棚ごと引き倒し。
武具屋では興味本位で剣を持ち上げ、警備兵に注意され。
そのたびに凪咲はお金を払い、何度も頭を下げた。
気づけば財布はすっからかん。
本日の狩りで得たお金ごとなくなってしまう。
足取りも重く、宿へ向かうころには、心身ともにぐったりしていた。
「ご、ごめんね、なぎさ」
スライムはしょんぼりとついてくる。
何が悪かったかまでは分かっていないようだが、凪咲が悲しそうだと"彼女"も悲しいようだ。
宿の一室に着くと、凪咲はベッドに座り込む。
そして、スライムに目を向ける。
(せっかく町に来たのに、こんな気分にさせるのは嫌だな)
思案した末、ふっと笑って、スライムに向き直った。
「ねえ、君に名前をつけてあげるよ」
「なまえ?」
スライムはぱちぱちと目を瞬かせた。
「これからずっと一緒にいるんだから、名前くらいないとね」
その言葉に、スライムの瞳がぱあっと輝いた。
「……なまえ、もらえるの!?なぎさ、くれるの!?」
「うん、もちろん」
興奮したスライムは、ふにゅりと身体を伸ばし、凪咲に飛びついた。
ぬるぬると、ぺたぺたと、柔らかな感触が背中や腕に広がる。
「わっ、ちょ、また、くすぐっ、だめっ、あはっ、や、やめ……!」
スライムは楽しそうに身体を覆いながら言った。
「だって、なぎさ、まえはこれでいっぱいわらってくれたもん!」
くすぐったさに悶えながら、それでも凪咲は笑っていた。
自然と、心がほどけていく。
「まったく、君って子は……」
スライムの温かさに包まれながら、凪咲は考える。
この小さな存在に、ふさわしい、特別な名前を。
「……ミナ、ミナとかとうかな?」
「みなみな?」
「ミナ、だよ」
スライムは笑顔になってこう返した。
「うん!わたし今日からミナ!」
凪咲はスライム――いまだ名もない彼女に、予備の服を手渡した。
さすがにそのままでは目立つし、町の人たちに怪しまれる。
一見人間に見える今の姿なら、ちゃんと着飾れば違和感も少ないはずだ。
「わぁ……!」
スライムは目を輝かせながら、ぎこちない手つきで服を身につけた。
少しずつだけど、人間らしくなってきている気がする。
そして、二人は町の門をくぐった。
町は賑わっていた。
行き交う人々、香ばしい屋台の匂い、見慣れない商品が並ぶ露店。
スライムはそのすべてに興味津々だった。
「なぎさ、これなに? たべていい?」
「ちょ、待って、それはお店のだって!」
言うが早いか、スライムは屋台の焼き菓子に手を伸ばし、ぱくり。
店主が目を剥き、凪咲は慌てて財布を取り出す。
「す、すみません! これ、払います!」
さらに、織物屋では布の感触に感動して棚ごと引き倒し。
武具屋では興味本位で剣を持ち上げ、警備兵に注意され。
そのたびに凪咲はお金を払い、何度も頭を下げた。
気づけば財布はすっからかん。
本日の狩りで得たお金ごとなくなってしまう。
足取りも重く、宿へ向かうころには、心身ともにぐったりしていた。
「ご、ごめんね、なぎさ」
スライムはしょんぼりとついてくる。
何が悪かったかまでは分かっていないようだが、凪咲が悲しそうだと"彼女"も悲しいようだ。
宿の一室に着くと、凪咲はベッドに座り込む。
そして、スライムに目を向ける。
(せっかく町に来たのに、こんな気分にさせるのは嫌だな)
思案した末、ふっと笑って、スライムに向き直った。
「ねえ、君に名前をつけてあげるよ」
「なまえ?」
スライムはぱちぱちと目を瞬かせた。
「これからずっと一緒にいるんだから、名前くらいないとね」
その言葉に、スライムの瞳がぱあっと輝いた。
「……なまえ、もらえるの!?なぎさ、くれるの!?」
「うん、もちろん」
興奮したスライムは、ふにゅりと身体を伸ばし、凪咲に飛びついた。
ぬるぬると、ぺたぺたと、柔らかな感触が背中や腕に広がる。
「わっ、ちょ、また、くすぐっ、だめっ、あはっ、や、やめ……!」
スライムは楽しそうに身体を覆いながら言った。
「だって、なぎさ、まえはこれでいっぱいわらってくれたもん!」
くすぐったさに悶えながら、それでも凪咲は笑っていた。
自然と、心がほどけていく。
「まったく、君って子は……」
スライムの温かさに包まれながら、凪咲は考える。
この小さな存在に、ふさわしい、特別な名前を。
「……ミナ、ミナとかとうかな?」
「みなみな?」
「ミナ、だよ」
スライムは笑顔になってこう返した。
「うん!わたし今日からミナ!」
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