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追放少女と混乱
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時は遡る。
凪咲の居合の一閃は、ドラゴンの首を落としただけでは終わらなかった。
斬られた巨大な扉のさらに奥、
階層を隔てるべき結界までもが、同時に断たれていたのだ。
それは決して気づけるものではなかった。
音もなく、色も変わらず、ただ、世界の境界線だけが静かに、確実に崩壊していた。
そして今。
その裂け目から、這い上がってくる無数の気配。
モンスターたちは、止まることなく、怒涛の勢いでダンジョンを駆け上がり、
地上へ、街へと、殺到し始めていた。
早朝。
非常時の鐘の音で、凪咲は目を覚ました。
「……なに、これ……?」
ぼんやりとした意識の中で、異様な空気を感じ取る。
隣ではミナが、ぺたんと床に広がったままうとうとしていた。
「ミナ、起きて!」
体をゆすり起こすと、ふにゃあと伸びたスライムが、やがて人間形態へと変わった。
「おねえちゃん、なにかあったの?」
答える間もなく、外に駆け出る。
宿の外は大混乱だった。
人々が悲鳴を上げ、兵士が駆け回り、建物の影からは黒煙が立ち上る。
そこへ、弓使いのリアが合流した。
彼女も荒い息を吐きながら、凪咲に駆け寄る。
「聞いて! ダンジョンから、大量のモンスターが溢れてきてる!」
「え……?」
凪咲は目を見開いた。
(まさか、私が斬った……あの扉が?)
何も告げる間もなく、事態は急速に悪化していった。
「行こう! 私たちも!」
リアに腕を引かれる。
ミナもすぐに頷き、三人は人の波をかき分けながら、ダンジョンの門へ向かった。
ダンジョン入口。
そこには、街中の冒険者たちが集結していた。
精鋭ではない、雑多な顔ぶれ。
それでも皆、剣を抜き、弓を構え、盾を構えて、死に物狂いで陣を敷いている。
普段は見かけない、王国軍の兵士たちの姿もあった。
ここが最後の防衛線。
この門を超えられれば、街は蹂躙され、すべてが終わる。
――ゴゴゴゴゴ……!
地響きが鳴り響き、ダンジョンの闇の奥から、モンスターたちのうねりが迫ってくる。
「っ……!」
凪咲は剣を握った。
だが、震えていた。
(こんな乱戦……私は)
敵味方が入り乱れる混戦。
誰が敵で、誰が味方かもわからない。
間違えて斬ってしまったら。
足がすくんだその瞬間――
「――ッ!?」
轟音。
凪咲の足元の地面が、大きく割れた。
避ける間もなかった。
弓使いのリアも、ミナも、周囲の数人の冒険者たちも巻き込まれ、
崩れ落ちた床と共に、奈落へと落ちていく。
「おねえちゃん!!」
「凪咲!!」
誰かの叫び声が、ぐしゃぐしゃに混ざる中。
凪咲たちは、まるで飲み込まれるように、ダンジョンのさらに深層へと落ちていった。
凪咲の居合の一閃は、ドラゴンの首を落としただけでは終わらなかった。
斬られた巨大な扉のさらに奥、
階層を隔てるべき結界までもが、同時に断たれていたのだ。
それは決して気づけるものではなかった。
音もなく、色も変わらず、ただ、世界の境界線だけが静かに、確実に崩壊していた。
そして今。
その裂け目から、這い上がってくる無数の気配。
モンスターたちは、止まることなく、怒涛の勢いでダンジョンを駆け上がり、
地上へ、街へと、殺到し始めていた。
早朝。
非常時の鐘の音で、凪咲は目を覚ました。
「……なに、これ……?」
ぼんやりとした意識の中で、異様な空気を感じ取る。
隣ではミナが、ぺたんと床に広がったままうとうとしていた。
「ミナ、起きて!」
体をゆすり起こすと、ふにゃあと伸びたスライムが、やがて人間形態へと変わった。
「おねえちゃん、なにかあったの?」
答える間もなく、外に駆け出る。
宿の外は大混乱だった。
人々が悲鳴を上げ、兵士が駆け回り、建物の影からは黒煙が立ち上る。
そこへ、弓使いのリアが合流した。
彼女も荒い息を吐きながら、凪咲に駆け寄る。
「聞いて! ダンジョンから、大量のモンスターが溢れてきてる!」
「え……?」
凪咲は目を見開いた。
(まさか、私が斬った……あの扉が?)
何も告げる間もなく、事態は急速に悪化していった。
「行こう! 私たちも!」
リアに腕を引かれる。
ミナもすぐに頷き、三人は人の波をかき分けながら、ダンジョンの門へ向かった。
ダンジョン入口。
そこには、街中の冒険者たちが集結していた。
精鋭ではない、雑多な顔ぶれ。
それでも皆、剣を抜き、弓を構え、盾を構えて、死に物狂いで陣を敷いている。
普段は見かけない、王国軍の兵士たちの姿もあった。
ここが最後の防衛線。
この門を超えられれば、街は蹂躙され、すべてが終わる。
――ゴゴゴゴゴ……!
地響きが鳴り響き、ダンジョンの闇の奥から、モンスターたちのうねりが迫ってくる。
「っ……!」
凪咲は剣を握った。
だが、震えていた。
(こんな乱戦……私は)
敵味方が入り乱れる混戦。
誰が敵で、誰が味方かもわからない。
間違えて斬ってしまったら。
足がすくんだその瞬間――
「――ッ!?」
轟音。
凪咲の足元の地面が、大きく割れた。
避ける間もなかった。
弓使いのリアも、ミナも、周囲の数人の冒険者たちも巻き込まれ、
崩れ落ちた床と共に、奈落へと落ちていく。
「おねえちゃん!!」
「凪咲!!」
誰かの叫び声が、ぐしゃぐしゃに混ざる中。
凪咲たちは、まるで飲み込まれるように、ダンジョンのさらに深層へと落ちていった。
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