追放されて一人になったので全部斬る!

ルノ

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追放少女と迷い

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弓使いのリアと別れ、凪咲とミナは宿へと戻った。
部屋の扉を閉めた途端。

「ふにゃぁ……」

ミナはふらふらとよろめき、そのまま床にぺたんと潰れた。
彼女の身体はみるみる液状化し、あっという間に元のスライム形態に戻ってしまった。

「……ミナ、大丈夫?」

しゃがみ込んで問いかけると、ミナはぷるぷる震えながら答えた。

「ながく、にんげんのかたち……つかれた……」

どうやら、まだ人間形態を長時間維持するのは負担が大きかったようだ。
ミナの体温はほんのり温かく、けれどとても頼りなかった。

「仕方ないな……」

凪咲は小さくため息をつきながら、自分の体を差し出した。

「……触っていいよ」

ぴと、とスライムの身体が手にまとわりつく。
ぬるり、ぺたぺた、背中を這う柔らかい感触――

「ひゃっ……あっ……や、やっぱりくすぐったい……!」

何度やっても、この感覚には慣れない。
特に背中や脇腹を這われると、思わず肩を震わせてしまう。

(でも、これは……ミナにとって必要なことだもんね……)

必死に耐える凪咲だったが、ふと、頭に不安がよぎった。

(そうだ……ミナがスライムだってこと、リアには伝えてない)

あのドラゴンとの戦いの際、ミナがブレスから守ってくれた瞬間を、もしかしたらリアに見られていたかもしれない。
もし気づかれていたら?
もしスライムという正体を知って、排除しようとするなら?

リアは優しい子だと信じたい。
でも、冒険者としての常識を考えれば、魔物と行動を共にするなんて異常だ。

(隠すべきか、打ち明けるべきか――)

凪咲はベッドの端に座り、頭を抱えた。
そんな彼女の袖を、スライムの小さな触手が引っ張る。

「おねえちゃん。いやなら、たべちゃえばいいよ」

ミナが、にっこりと無邪気に言った。

「……食べちゃだめ」

思わず即答する凪咲。

「にんげん、たべちゃだめ?」

「だめ」

強く諭すと、ミナはしょんぼりと縮こまった。
どうやら、スライムとしての自然な発想だったらしい。

「……ありがとうね、励ましてくれようとしたんだよね」

凪咲は微笑み、ミナのやわらかい頭を撫でた。
結局、悩みはまとまらないまま。
気疲れしたふたりは、狭いベッドに潜り込むことにした。

ミナは人間形態に戻らず、スライムのまま、凪咲の腕にぴたっとくっついてきた。
ほんのり温かく、心地よい重さ。

「おやすみ、ミナ」

「おやすみ、おねえちゃん」

静かな夜が、二人を優しく包み込む。
答えはまだ出ない。
けれど、それでも。
「一緒にいる」それだけで、今は十分だった。
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