『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

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開始せよ

俺の幼馴染が、実はドラゴンらしいってマジ?

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近所のあの子。

小説の第一王女。

少女に見える少年。

圭吾って言うのはあの子がその場で思いついた名前だったのか?

ブランコまでのたった数歩。色んな思いが交錯する。

キーパーソンは、あなただけではない。

その言葉を心の中で反芻する。

俺が再び右手でブランコの鎖を掴もうと鎖に手を伸ばした瞬間、宮司の方を振り返る。宮司は今も泣き出しそうな幼児みたいな表情をしている。
「お前、下の名前、龍臣だろ。ドラゴンの臣下だってよ。お前、あの小説のキャラみたいな名前してんな?」
冗談のつもりで言った。そのとき、日下部さんの目が一瞬また、爬虫類みたいになった。いや、ただの爬虫類じゃない。それは、間違いなく…。

俺はどうやら限りなく正解に近づいてしまったらしい。

日下部さんの瞳に浮かんだ、あの光。
それはただの“爬虫類”ではなかった。

――竜のそれだ。

金色と深緑、そして燃えるような朱。見たことのない虹彩が、確かに俺を睨んだ。日下部さんの口元が、ほとんど 気づかれないほどに歪んだ。まるで、俺の推理を肯定するように。
「成瀬……何、それ。どういう……?」
宮司が不安げに声を震わせながら俺に寄ってくる。
「お前、名前。龍臣。ドラゴンの家臣……」
俺が口にした言葉の意味を、宮司はまだ分かっていないようだった。けれど、彼の背後で、夕陽が弾けるように光った。

パキンッ

何かが割れた音がした。
見れば、宮司の足元に光の裂け目が走っていた。夕暮れの景色にヒビが入る。ガラスを割ったみたいに、世界が音を立てて歪み始めた。
「龍臣様」
日下部さんが、静かに、けれど確かにそう言った。
「……え?」
「思い出していただく時が参りました。あなたは、かの王国にて、第一王女様に仕えていた唯一の護竜士でございます。」
「ちょ、ちょっと待てよ日下部さん。何だよそれ……俺が?」
宮司の声は完全に素のままだったが、足元のヒビはもう彼のふくらはぎまで到達していた。
「王族は、竜の加護なしに即位することは叶わぬ定め。そして、あの戦で……あなたは命を落とされました。ですが、彼の方――成瀬蓮様が“名前”を記憶していた。それが、奇跡の継ぎ目となったのです。」
「お前……お前、なんか変な薬とか盛ったか?それか、どっきりか?マジでわかんねぇ……!」
「宮司!!」
俺は思わず彼の肩をつかんで叫んだ。
「思い出せって言われてるんだよ!」
「何をだよ!! 俺はただの大学生だぞ、成瀬と一緒に適当に授業受けて、たまにカラオケ行って……なんで、なんでいきなりそんなこと言われんだよ!」

涙が混じっていた。彼は本当に分からないんだ。けれど――彼の背中から、淡い青の鱗が浮かび上がっていた。まるで、彼の心の中から滲み出たかのように。彼はまだ気づいていない。けれど、もう始まってしまった。俺はブランコに視線を戻した。圭吾は、まだそこにいる。俺を待っている。
「圭吾、俺……俺、逃げないから。今度こそ、最後まで、ちゃんと見るから。」
そして――俺は、ブランコの鎖に触れた。
「宮司、お前も鎖、触ってみろよ。何かが起きるかも。」

何が起きるのかは全然分からない。なんで龍臣が小説からの転生者みたいになってるんだ。どこぞのガキが妄想しているような世界。ドラゴン、王国、転生。要素が完璧に揃っているのではないか。でも、その要素の中には俺たちも含まれている。きっと、俺たちがいなきゃダメなんだ。だから、呼ばれた。俺たちはこの世界の部品なんだ。多分。宮司は欠けた歯車かなんかで、俺は潤滑油みたいなもんか。

「……成瀬、お前、マジで言ってんのかよ……?」
宮司は震える指で、そろそろとブランコの鎖に触れた。

その瞬間、温い風が吹いた。

何もなかったはずの公園の空気が、急に形を持ったように渦巻き始める。ブランコの鎖が金色に、滑り台が銀色に光る。地面には、幾何学模様の魔法陣が音もなく浮かび上がった。
「ちょっと……なんだこれ……?うそだろ……」
宮司の背中、そこから羽のような光が伸びようとしていた。鱗とは違う。もっと、神聖な、でも確かに異世界のもの。

「君が王女圭吾の“盾”であり、龍臣たる名に込められし魂そのものであるのなら、君―成瀬蓮は、“記録の書き手”であり、“導きの者”であるべき存在です」

日下部さんが、またしても唐突に言う。すでに彼の姿は人のそれではなかった。腕の節々に鋭い金のうろこが浮かび、髪は宙を泳ぐように揺らめき、瞳は人と竜とのあわいにある。
「物語には、“記す者”が必要です。君が本を手にしたのは偶然ではありません。君の思考が、言葉が、物語を進める力を持つのです」
「そんな、馬鹿なこと……」
俺は言いかけて、やめた。胸の奥に、あの日の感覚が蘇っていた。あの時、確かに俺は思ったんだ。

――この子のことを、誰かに話さなきゃ。忘れたくないって。誰かの人生を「語る」ことは、忘れないことと同じだ。忘れないことは、死なせないってことなんじゃないか。だったら、俺は――

「わかったよ日下部さん。俺が“記録の者”ってんなら、そうする。でも、その代わり、約束してくれ。宮司を、圭吾を、死なせないって」
「成瀬、てめぇ何勝手に……!」
「お前、思い出してる最中だろ?」
俺はにやりと笑う。
「なら、せっかくだから全部思い出してから文句言えよ。」
宮司が何かを叫ぼうとした時、空が、割れた。
闇が開き、そこに新たな扉が現れる。
そして、そこに書かれていた文字。


『記憶の竜の番人――成瀬蓮、記録を開始せよ』
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