『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

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日常のひと時

電車の乗客は、実は古代生物かもしれませんよ…?

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「待って、後にして」
ショッピングモールでお昼ご飯を食べながら聞くとしよう。人々で賑わってて、私たちの会話に耳を傾ける人もいないだろうから。

ここは電車の中。皆、色んな参考書を集中して読んでいるから、たまにコソコソとお話以外は電車が走る音以外は何も聞こえない。

金太郎っていう名前は、一般的には童話の主人公の名前。だから、その人の遺言なんてあるわけない。そこで、金太郎は飼っていた金魚の名前ですって言ったら一瞬納得してくれるだろうけど、男子高校生が金魚から遺言を言われたなんて、世間がそう簡単に理解できるとは思わない。そこで、実はこの男子高校生は人間に化けたネッシーで、普段はよく水槽で魚と一緒に泳いで過ごしていますなんて言った日には…。

案の定、サファイヤの横に座っているエメラルドがサファイヤの口を塞いでいる。

そういえば、お昼ご飯何にしようかな。皆は何が食べたいんだろう。サファイヤ、エメラルドは私の向かい側に、蓮くんと峻兄ちゃんは私の横に座って、ウルフとバットは私たちの近くの吊革につかまって立っている。
「ねえねえ、サファイヤ、エメラルド、ウルフ、バット…はっ!」

乗客の不思議そうな視線が突き刺さる。私は思わず自分の口を両手で塞いだ。

今まで全然意識せずに読んでたけど、そうか。この四人、名前が珍し過ぎる。後で皆で話し合って決めよう。この四人に、現実に生きる人間の名前として自然な名前を、決めておかないと。

ショッピングモールに着いたのは、午前11時。お腹が空いてるような、空いてないような。昼ご飯を食べるかどうか、一番迷う時間帯に着いてしまった。だけど、フードコートは既に家族連れや学生で賑わっていて、たこ焼きやクレープや焼きそばとか、色々な食べ物が混ざった匂いに包まれる。
「もう、今のうちに食べておこうぜ。席が無くなる」

私たちはフードコートの隅に空いていたテーブルに早足で向かった。だけど、四人分の椅子しかない。あと、三つ、どこかから借りるしかないな。峻兄ちゃんとウルフ、バット、サファイヤは既に椅子に各自のカバンの紐を背もたれに引っかけた。

「あの人達から椅子、借りれないかな」
蓮くんが五つくらい離れたテーブルを見ている。四人掛けのテーブルに、お母さんと思われる女の人が一人座ってて、自分の横にベビーカーを置いて、時々揺らしてあやしては親子丼を食べている。席がちょうど三つ余ってる。
「行こう。今のうちに。他の人たちに借りられると困る」

エメラルドが真っ先にそこへ大股で歩いて行って、蓮くんと私は小走りでついていった。
「あのー、すみません、椅子を借りても」
「ああ、良いですよ。持ってって」
エメラルドは二つの椅子を両脇に抱えて、蓮くんは残った椅子を持ち上げた。ベビーカーの中で赤ちゃんがエメラルドを見ながらはしゃいでる。エメラルドは人間姿だし、カラコンも入れて瞳は黒いし…でも、確か赤ちゃんって第六感が優れてるって言われてるって、前にどこかで聞いたな。赤ちゃん、エメラルドの正体に気付いてる?
「あら、ごめんね。こら、静かに」
お母さんがベビーカーを優しく揺らすと、赤ちゃんは落ち着いてそのまま寝始めた。
「おーい」
私たちの席から峻兄ちゃんが財布を手に持って私たちを呼んでいる。
「何が食べたい。俺たちはかつ丼を食べることにしたけど」
テーブルの残り三人は、イヤホンを耳に指して、何かの音楽を聴いているのか足でリズムを取っている。
「俺、海鮮丼が良いです」
「ええと、僕はアナゴ丼で」
「じゃあ、私はいくら丼」
エメラルドと蓮くんが椅子を担ぎながら、丼もの専門店のメニュー表を見て値段を確認している峻兄ちゃんに伝えた。だけど、ますます人が増えてきて、近くにゲームセンターもあるから、騒がしくて私たちの声が届かなかったみたい。
「何丼だって?」
「海鮮!」
「アナゴ!」
「いくら!」

子供の頃は、親から店では叫ぶなって躾けられてきたけど、素直に従うだけじゃ世の中、上手くいくようにはなっていない。

「ねえねえ、みんな」
私は蓮くんが運んでくれた椅子に腰を下ろして、音楽を聴いている皆の肩を順番に叩いていった。
「どうしたの?今さ、佳奈美さんが昨日くらいに言ってた好きなアイドルの歌を聴いてたんだけど、カッコいいねこいつら」

あ、良い話題見つけた。それはさておき。

「皆に人間っぽい名前を付けたいの。皆の名前はかなり珍しくって、他の人が聞いてるところじゃ変に注目を集めちゃう」
皆がイヤホンを丸めてズボンのポケットにしまうと、サファイヤはスマホで「名づけ 男の子」と調べ始めた。
「バット、ウルフ、一応人間として学校に通っているんだったよね?名前、どうしてるの?」
私が2人に尋ねると、2人は顔を見合わせて何度かパチパチと瞬きをした。

え…?

まさか、バットとウルフって…本名?

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