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日常のひと時
友達のクシャミが喧しすぎる件について、誰か助けて下さい
しおりを挟む私は蓮くんの手を引いて、雑貨屋を目指した。雑貨屋はここから1つ上に上がった二階にあって、そこでは主に女子中高生向けの文房具や、アクセサリー、鞄とか諸々売られてるんだけど、私の目当てはただ一つ。
私の愛するジュンヒョンのグッズ!
「どこに行こうとしてるんだよ」
蓮くんとエスカレーターに並んで乗っているとき、蓮くんはギュッと手すりに掴まって下を見ないようにしていた。高所恐怖症なのだ。私たちが幼稚園児の時に、蓮くんがどうしても幼稚園の二階には上がらないのだと泣いて抵抗していたのを思い出す。でも今は、エスカレーターに乗れている。
「…成長したね」
「は?」
「別に」
エスカレーターを下りて、洋服屋さんとメガネ屋さん、化粧品売り場を通り過ぎると、私の愛しいジュンヒョンのポスターが雑貨屋の入り口近くの壁に貼られているのが見えた。蓮くんが握っていた私の手を離した。
「俺、入りづらいよ」
確かに、この雑貨屋は女子中高生がターゲットだから当然お客さんの中には、私みたいな女子学生が多い。だけど、中には彼女へのプレゼントを買うために訪れる男性客もいるのだ。
「大丈夫でしょ。ほら、あれ」
大学生くらいの男の人が、入り口近くで販売さえれているアクセサリーコーナーをうろうろしている。
「来てよ」
どうしてか店に入りたがらない蓮くんを無理やり雑貨屋に連れ込んだ。今は鞄や文房具はどうでもいい。私の愛しいジュンヒョンは、店の一番奥にある。
「k-popコーナー?」
韓国アイドルに興味のない蓮くんからしたら、ただ男の顔が印刷された摩訶不思議な商品が売られている空間かもしれないけど、ごめん、今は付き合って。
「俺、いなきゃダメ?」
他の韓国アイドルのグッズもあるのに、蓮くんは何故かジュンヒョンのグッズを恨めしそうに見ている。私が籠に、ジュンヒョンのクリアファイル、定規、ノート、スマホケースを次々と入れていくほど、蓮くんはますます不機嫌になる。もう…何でよ。
「蓮くん」
私が目を離しているうちに店から出ようとしていた蓮くんを止めて、最近知った韓国語を披露してあげた。
「パボヤ!」
「…はあ?」
蓮くんは韓国語を全く知らない。私に左手を握られたまま、口を半開きにして私を見ている。
「どういう意味だよ」
「バカってこと。カッコいい人をカッコいいって思って何がダメなの」
蓮くんは口を尖らせて、私から目を逸らしている。
「…じゃあさ、世界で一番カッコいいって思ってるってことか?」
「いや、それは…」
私は蓮くんの手を離した。
言えるわけがない。
ジュンヒョンのことは蓮くんに似ているから好きになっただなんて。
…蓮くんが世界で一番カッコいいなんて。
「ご来店ありがとうございましたー」
雑貨屋を出たのは、12時10分過ぎ。まだまだ時間はある。あんなに拗ねていたのに、蓮くんはジュンヒョンのグッズが大量に入った袋を代わりに持ってくれている。
「蓮くんはどこか、行きたいところ無いの?」
まあ、蓮くんはショッピングモールに行きつくしてるから、今更知らない店なんて無いんだろうけど。
「…俺…あそこに行きたい。bloom&brew…」
蓮くんの私の手を握る力が少し強くなった。
「…良いよ。行こう」
私は蓮くんの手を強く握り返した。
bloom&brewは、蓮くんと私が付き合って初めて二人だけで行ったジュース専門店。安いし、美味しいし、珍しい味のもあるから、学生や家族連れに人気の場所。確か、蓮くんはあの時、イチゴとリンゴのミックスジュースを飲んでたっけ。
「うわあ、結構種類増えたね」
実際行ってみると、メニュー表は目を凝らさないと見えないくらい沢山の種類のジュース名で埋め尽くされていた。私は頑張って文字を読もうとするけど、蓮くんは目が良いから目を細めることもない。
「俺、パイナップルのスムージーにする。佳奈美は?」
「うそ!本当にパイナップル平気になったの?」
信じられない。あんなに怖がっていたのに。幼稚園の時は、パイナップルを見ただけで逃げていったのに。
「…好きだ…から…。佳奈美は?」
「私、イチゴとリンゴのミックスジュース」
蓮くんがハッとした顔で私を見た。
「蓮くんも覚えてる?次に来たときは、お互いの飲み物を頼んでみようって約束したもんね。覚えててくれてありがとう」
そうだった。私は初めてここに来た時、今から蓮くんが飲もうとしているのと全く同じパイナップルスムージーを頼んだんだった。
私と蓮くんは並んでレジに立って、注文を始めた。
「以上の2点でよろしかったでしょうか」
「はい」
「合計500円頂戴します」
蓮くんが財布から500円玉を取り出して、店員さんに渡すと、別の店員さんがほとんど同時に私たちのジュースをトレイに乗せて私たちに渡してきた。
「二人に幸が訪れるよう」
ジュースのカップに黒いマーカーでメッセージが書かれていて、ストローは途中でハート型にくるりと曲がったタイプのものが刺さっている。蓮くんのは黄緑色で、私のは薄い紫色。これは、カップル限定のストロー。
幼稚園児と小学校高学年くらいの男と女の兄弟が、大人しく二人並んで私たちの隣で、美味しそうにジュースを飲んでいる。りこちゃんと圭吾くんみたい。二人が戻ってきたら、連れてきてあげたい。桜大兄ちゃんも一緒に。
蓮くんはパイナップルスムージーを3分の1くらい飲んで、少しリニューアルされた店内を見渡している。
「蓮くん」
「ん?」
蓮くんは内装に興味津々で、私の顔を見ずに返事した。
「いつか子供達を連れて来ようよ」
「…うん」
蓮くんはやっぱり、私の顔を見ないで首を縦に振った。
その瞬間。
「ハアックショーン!!!」
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