『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

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隠された真実

非日常に引きずり込まれていく夜

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バットは全員分のそうめんをテーブルに用意して、小学校の家庭の授業で作ったと思われる、炎を吐く黒いドラゴンの派手な刺繍が施されたエプロンを脱いでハンガーにかけていた。
「年齢的に恥ずかしくなってきたんだけど、捨てるのは勿体無いからさ」
バットはハンガーを台所の窓のカーテン軸に引っかけるついでに、窓のシャッターを閉めた。

「美味そうだな」
サファイヤが水槽から魚姿で飛び出したと思ったら、空中でポンと人間の姿になった。

正直、バットは少し雑な性格だと思っていたけど、薄く輪切りにされた赤い梅干しが薔薇みたいに盛り付けられていて、それを支えるようにシソの葉が敷かれていた。オクラの星型の断面が、麺つゆに沈むそうめんに散りばめられていて、料理と言うよりも一種の芸術作品のように丁寧に盛り付けられていた。

大学のレポートを仕上げた峻兄ちゃんがリビングからやってきて、これで全員が揃った。

『いただきます』

梅干しの酸っぱさとシソの葉の苦みを、オクラのネバネバが和らげてくれる。麺つゆは梅干しとぶつからないように薄くしたようだけど、ほんの少しだけ甘みを感じる。

「ネットのメニュー通りに作ったら、味が濃すぎたんだ。それで麺つゆに水を少し入れて薄めたんだけど、何かそれはそれで物足りなくなちゃって。試しに砂糖とみりんを混ぜたやつを極微量入れてみたら、結構上手いこといったんだ」

なるほど、料理に関してはバットは天才だっていうウルフの言葉その通りだ。

私、バットに料理教えてもらおうかな。

バットのそうめんはあっという間にお腹の中に入ってしまった。普段は残った麺つゆは多すぎなければ捨ててしまうんだけど、捨てるにはあまりにも勿体無いからじっくりと味わいながら飲ませてもらった。

「彗星の奴、そろそろ来るな」
エメラルドが時計を見ている。

18時25分。

峻兄ちゃんとバットが食器を洗う水の音。シンクに跳ねる水の音。食器と食器が触れ合う音。

「そういえばさ、金太郎の遺言だけど」
サファイヤがリビングから蓮くんのノートを持ってきて、テーブルの上に置きながら思い出したように言った。
「金太郎さ、空に憧れてたんだって。泳いでみたいなって、ずっと水槽から空を眺めるたびに思ってたらしい。だから、金太郎の夢が叶って良かったなって」

サファイヤがノートをパタンと広げた。

カチカチ…

18時28分。

カチカチ…

18時29分。

カチカチ…

「来るぞ」

エメラルドが時計を見た瞬間、針が18時30分を指した。


ピーンポーン


『遅くに申し訳ございません。彗星と一裕です』


…来た。

「はいはーい」

食器を洗い終えたバットがタオルで手を拭いてから玄関に向かった。

「こんばんは、皆さん」

あれ、彗星さんの髪が短くなってる。海夏さんみたい。
「翠ちゃんね、イメチェンしてみたんだって。俺、もう、可愛くって可愛くって、たまんないの~」
「あら、人前でそのような鼻を伸ばしたような顔をなさらないで」

一裕×彗星カップルは、相も変わらずお互いにベタ惚れだ。

「そんなこと言ったらな、俺らにも報告することはあるんだよ。な?」
バットが蓮くんと私の背中を押して、一裕と彗星さんの前に突き出した。
「俺と佳奈美は…」
蓮くんはそこまで言うと、顔を梅干しみたいに真っ赤にして俯いてしまった。
「早よ言わんかい!」
「付き合うことになりました!」

バットが蓮くんの背中をどついたのと同時に、蓮くんが「報告」をした。彗星さんは口を両手で隠して上品に驚いていたけど、一裕は驚くどころが「1+1=2ですよ」と言われたような表情を見せて蓮くんを見ている。

「お前ら、付き合ってなかったの?蓮、お前、こないだショッピングモールに皆で翠ちゃんに会いに行ったときに、一緒にトイレしただろ。そん時、確か、俺は佳奈美がすっ…!」
蓮くんが一裕の口を塞いだ。
「まあまあ、さてさて」
エメラルドが一裕たちを台所に連れて行って、テーブルに座らせた。
「これ、バットが作ったジュースだから飲んでみて。あいつには似合わず繊細な味がするから」
「お前、今一言余計だったぞ」
ウルフはレモンとイチゴのシロップの残りをそれぞれコップに入れて、牛乳を注いだ。
「お、ホントだ。美味い」
「まあ、私こんなに美味しい飲み物は初めてですわ」
二人に絶賛されて、バットは得意げな表情で二人がジュースを飲むのを見ていた。

「それでは皆さん」

サファイヤが新しいページを開けたノートをテーブルの中央に置いた。たった一冊のノートを、9人が緊張した眼差しで見つめる。


「ゲーム、スタート」

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