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隠された真実
橋の向こうへ
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俺は地下牢の隅っこの一番暗いところに身を隠した。エメラルドは音のする方を牢の中から見ている。サファイヤはエメラルドの瞳の中で息を潜めている。
「ラルフ」
地下牢にやって来たのは、アドルフだった。アドルフは柵を開けて牢の中に入ってきた。アドルフはエメラルドが立ち上がろうとするのを止めて、エメラルドの前に腰を下ろした。
「先ほどは…拒んで申し訳なかった」
「いいえ、兄上のお気持ちを察することが出来ず申し訳ありませんでした…兄上、」
アドルフの楓色の瞳と、エメラルドの緑色の瞳が暗闇の中、星みたいに輝いている。
「私は、桜大を存じております。桜大の親友だった者と地球で共に過ごして参りました」
「それは誠か」
アドルフは目を見開いて、エメラルドの肩を両手で掴んだ。エメラルドはしっかりと首を縦に振った。エメラルドが俺の方を見て、来いとジェスチャーで示してきた。アドルフの視線も俺に注がれている。
「ウルフ、兄上は闇雲に地球を憎んでいらっしゃるわけではないから安心しろ」
「何に向かって話しているのだ、ラルフ」
アドルフは俺の姿が見えていないようだ。でも、エメラルドの言うように、アドルフは本当は悪い奴じゃない。優しすぎて、地球を再び愛する勇気を持てなかっただけの、物凄く人間的な奴なんだ。
俺は意を決して、人間姿になってエメラルドの隣に立った。サファイヤはビックリ箱から飛び出すように、エメラルドの瞳から飛び出して俺の隣に立った。本来なら俺達は不法侵入者なんだけど、アドルフは怒ることもなくポカンと口を開けて俺達を見ている。
「ご覧の通り、俺達は地球の生き物です。地球には他にも沢山弟君の友人がおります。私はサファイヤで、こいつはウルフです。因みに狼とは全く関係の無いやつです」
アドルフが俺とサファイヤとエメラルドの顔を順番に見ていった。
「…何のために獣神国に来たのだ」
不法侵入者が弟の友人であるという事実を飲み込むのが思いの外早くて、安心しつつも王として頼りないのではないかとも心配になった。
「アドルフ兄上は、謎を解く鍵であられます。あまりにも多くて、複雑に絡み合った、世界を跨ぐ謎を解き明かさなくてはならないのです。話し出せばキリがございません。兄上、一度地球にお越しください」
エメラルドは静かで落ち着いた声で、まくし立てるようにアドルフに地球に来るように頼んだ。
「兄上、いってらっしゃいませ」
アドルフの背後にピンク色の瞳が光っているのが見える。ランドルフだ。
「兄上の御苦しみは、見ている我等も胸が痛く御座います。兄上のお気持ちが少しでも晴れるようなら、このランドルフ、精一杯応援致す所存です。政務ならばご安心を。私が代理を務めます」
アドルフとランドルフとエメラルド。3人は確かに兄弟の絆で繋がっている。そして、宇宙の暗黙の了解にも背く勇者でもあるのだ。
「参ろう」
フワッと体が軽くなったと思うと、俺達は緑色の柔らかな光に包まれた。エメラルドの言っていた、異世界への移動スポットだ。
俺達は地球に戻ろうとしている。今度は、アドルフも連れて。
「ラルフ、兄上」
ランドルフの姿はもう、緑色の光に遮られて見えなかったが、声は確かに届いた。
「いつか、地球へ旅行しに行く夢を叶えましょう」
ガクン
地球だ。重力だ。
ここは…アパートのリビングか。
電気は消えていて、台所の窓の外に小さな星たちがか弱く光っているのが見える。
「ラルフよ、ここは何処だ」
「私の地球の居場所です」
リビングの時計の針は12時を指している。
流石に皆、寝てしまったか?
カタ…
寝室の扉が静かに開いた。
「あれ、おかえり。明日になるかと思ってたのに。皆寝ちゃったよ」
バットが寝室の扉から顔だけを出している。アドルフにはまだ気付いていない。
「兄を連れてきた」
「え?」
バットが寝室の扉を静かに開けて、抜き足差し足忍び足でリビングにやって来た。
「あ、ホント。狼男が2人いる」
「夜分遅くに申し訳ない。ラルフの兄のアドルフだ」
アドルフは天井に頭が付きそうなくらいに大きい。俺たちの中では大きい方だったエメラルドが小さく見える。
「…で、エメラルド。何で連れてきたの」
「エメラルド?」
アドルフは案の定、何故ラルフと呼ばれていないのか分からず、彗星の時と同じような反応を示した。
「私の地球での名前です。ウルフが付けてくれました」
そういえば俺、高校生で誰かの名付け親になるなんて夢にも思わなかったな。ましてや狼男の。
「私が謎を解く鍵になると聞いて参った。何より、桜大の親友だった者に御目通り願いたい」
「なんで?」
ガタ…
「バット、何してる」
峻兄さんは俺達の会話で目が覚めたのか、リビングにやって来た。高校生から使っているという、着古されたヨレヨレの半袖半ズボンで。
「…エメラルド、お兄さんか」
峻兄さんはアドルフに気が付くと、リビングの扉を閉めて電気を付けた。
ピカーッ
獣神国では地下牢にいたから、久しぶりの光が眩しく感じる。
「おかけ下さい」
峻兄さんはアドルフをテーブルの椅子に座るよう促して、峻兄さんはその向かいに座った。エメラルドはアドルフの隣に座って、俺とサファイヤは峻兄さんの両隣に座った。椅子が足りなかったから、バットは俺の真後ろに立つことになった。
「時間が時間ですので、ご用がございますならば明日にして頂ければ幸いなのですが…」
「ああ、会いたい者がいて急いでしまった。地球の事情を考慮しなかったこと、面目ない」
当たり前かもしれないが、アドルフって時代劇でしか聞かれないような話し方するな。
「桜大の親友だった者に会いたいのだが」
峻兄さんの左の眉がピクッと動いた。
「私ですが…」
「ラルフ」
地下牢にやって来たのは、アドルフだった。アドルフは柵を開けて牢の中に入ってきた。アドルフはエメラルドが立ち上がろうとするのを止めて、エメラルドの前に腰を下ろした。
「先ほどは…拒んで申し訳なかった」
「いいえ、兄上のお気持ちを察することが出来ず申し訳ありませんでした…兄上、」
アドルフの楓色の瞳と、エメラルドの緑色の瞳が暗闇の中、星みたいに輝いている。
「私は、桜大を存じております。桜大の親友だった者と地球で共に過ごして参りました」
「それは誠か」
アドルフは目を見開いて、エメラルドの肩を両手で掴んだ。エメラルドはしっかりと首を縦に振った。エメラルドが俺の方を見て、来いとジェスチャーで示してきた。アドルフの視線も俺に注がれている。
「ウルフ、兄上は闇雲に地球を憎んでいらっしゃるわけではないから安心しろ」
「何に向かって話しているのだ、ラルフ」
アドルフは俺の姿が見えていないようだ。でも、エメラルドの言うように、アドルフは本当は悪い奴じゃない。優しすぎて、地球を再び愛する勇気を持てなかっただけの、物凄く人間的な奴なんだ。
俺は意を決して、人間姿になってエメラルドの隣に立った。サファイヤはビックリ箱から飛び出すように、エメラルドの瞳から飛び出して俺の隣に立った。本来なら俺達は不法侵入者なんだけど、アドルフは怒ることもなくポカンと口を開けて俺達を見ている。
「ご覧の通り、俺達は地球の生き物です。地球には他にも沢山弟君の友人がおります。私はサファイヤで、こいつはウルフです。因みに狼とは全く関係の無いやつです」
アドルフが俺とサファイヤとエメラルドの顔を順番に見ていった。
「…何のために獣神国に来たのだ」
不法侵入者が弟の友人であるという事実を飲み込むのが思いの外早くて、安心しつつも王として頼りないのではないかとも心配になった。
「アドルフ兄上は、謎を解く鍵であられます。あまりにも多くて、複雑に絡み合った、世界を跨ぐ謎を解き明かさなくてはならないのです。話し出せばキリがございません。兄上、一度地球にお越しください」
エメラルドは静かで落ち着いた声で、まくし立てるようにアドルフに地球に来るように頼んだ。
「兄上、いってらっしゃいませ」
アドルフの背後にピンク色の瞳が光っているのが見える。ランドルフだ。
「兄上の御苦しみは、見ている我等も胸が痛く御座います。兄上のお気持ちが少しでも晴れるようなら、このランドルフ、精一杯応援致す所存です。政務ならばご安心を。私が代理を務めます」
アドルフとランドルフとエメラルド。3人は確かに兄弟の絆で繋がっている。そして、宇宙の暗黙の了解にも背く勇者でもあるのだ。
「参ろう」
フワッと体が軽くなったと思うと、俺達は緑色の柔らかな光に包まれた。エメラルドの言っていた、異世界への移動スポットだ。
俺達は地球に戻ろうとしている。今度は、アドルフも連れて。
「ラルフ、兄上」
ランドルフの姿はもう、緑色の光に遮られて見えなかったが、声は確かに届いた。
「いつか、地球へ旅行しに行く夢を叶えましょう」
ガクン
地球だ。重力だ。
ここは…アパートのリビングか。
電気は消えていて、台所の窓の外に小さな星たちがか弱く光っているのが見える。
「ラルフよ、ここは何処だ」
「私の地球の居場所です」
リビングの時計の針は12時を指している。
流石に皆、寝てしまったか?
カタ…
寝室の扉が静かに開いた。
「あれ、おかえり。明日になるかと思ってたのに。皆寝ちゃったよ」
バットが寝室の扉から顔だけを出している。アドルフにはまだ気付いていない。
「兄を連れてきた」
「え?」
バットが寝室の扉を静かに開けて、抜き足差し足忍び足でリビングにやって来た。
「あ、ホント。狼男が2人いる」
「夜分遅くに申し訳ない。ラルフの兄のアドルフだ」
アドルフは天井に頭が付きそうなくらいに大きい。俺たちの中では大きい方だったエメラルドが小さく見える。
「…で、エメラルド。何で連れてきたの」
「エメラルド?」
アドルフは案の定、何故ラルフと呼ばれていないのか分からず、彗星の時と同じような反応を示した。
「私の地球での名前です。ウルフが付けてくれました」
そういえば俺、高校生で誰かの名付け親になるなんて夢にも思わなかったな。ましてや狼男の。
「私が謎を解く鍵になると聞いて参った。何より、桜大の親友だった者に御目通り願いたい」
「なんで?」
ガタ…
「バット、何してる」
峻兄さんは俺達の会話で目が覚めたのか、リビングにやって来た。高校生から使っているという、着古されたヨレヨレの半袖半ズボンで。
「…エメラルド、お兄さんか」
峻兄さんはアドルフに気が付くと、リビングの扉を閉めて電気を付けた。
ピカーッ
獣神国では地下牢にいたから、久しぶりの光が眩しく感じる。
「おかけ下さい」
峻兄さんはアドルフをテーブルの椅子に座るよう促して、峻兄さんはその向かいに座った。エメラルドはアドルフの隣に座って、俺とサファイヤは峻兄さんの両隣に座った。椅子が足りなかったから、バットは俺の真後ろに立つことになった。
「時間が時間ですので、ご用がございますならば明日にして頂ければ幸いなのですが…」
「ああ、会いたい者がいて急いでしまった。地球の事情を考慮しなかったこと、面目ない」
当たり前かもしれないが、アドルフって時代劇でしか聞かれないような話し方するな。
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峻兄さんの左の眉がピクッと動いた。
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