2026年1月1日 生きているのがしんどいと感じた事がある人へ、受験生の皆さんへ

ラムネ

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馬到成功 ※地震について述べた部分があります。精神的苦痛を伴う可能性がありますので、ご注意下さい。

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寝静まった寝室。布団に包まって密かにスマホの光を浴びる。布団の中はとても狭くて、自身の息で暑苦しくて、だけどスマホの向こうに広がる世界が心地良かった。

自分自身は異性愛者…だよね?
自身の身体と心の性別は、一致してる…よね?

夢の中の自分は何故か、逆の性別になってしまう。夢の中の自分は、それに違和感は抱かなくて、寧ろ心地良いと思う。夢の中では、「異性」と当たり前のように下ネタで燥いだり、「同性」と交際して愛おしいと思ったり。夢の世界に突如鳴り響いた目覚ましの音に、ふと自分は現実世界に戻る。現実世界の自分は、夢の中の自分とは逆の性別。元通りになった筈なのに、自分の身体に僅かな違和感を抱く。だけどそれも朝の数時間で消えてしまって、いつの間にか自分はまた、性別違和など気にせずに生きていく。

BLを試しに呼んでみようか。いつだったか、ふとそう感じた。理由はよく分からない。でももしかしたら、心の奥底に眠る「もしも自分が同性愛者だったら」「もしも自分が逆の性別だったら」という疑問が、そうさせたのかもしれない。そんな些細な思いに誘われるように、昨晩もBL漫画の世界に浸っていたのだ。

ふとスマホ画面の左上に視線をやれば、23:59。あぁ、今年が終わっていく。そして新しい今年がやって来る。段々と目を開けているのも辛くなってきて、フツっとスマホを消して枕元に置く。漫画の続きは、明日の自由時間にでも読もう。そんな事を思っていた時、遠くから脳に語りかけるような音が聞こえた。あぁ、そうか。そう言えばそうだった。ようやく眠りに就こうとした時に除夜の鐘が鳴り始めた。

過去の記憶が静かに蘇ってくる。時系列順というわけでもなく、パッと現れてはパッと消えていく。言葉にしてしまえば支離滅裂になっていきそうな記憶を、真っ暗な映画館で一人ぼっちで観る。

石川の地震。自分と同い年が死んでいった。年下たちが死んでいった。年上が死んだら決して何も思わないわけではないけれど、当たり前のように生きていく筈の子供たちが、あっという間に消え去っていくのに衝撃を受けた。あの日の夜のテレビに映し出された悲惨な有様を見て、今後は新年は祝えないな、と正直にそう思った。

東日本大震災。あれは私が幼稚園に入園した直後のこと。おもちゃ売り場で遊んでいたら、突然大人たちが慌て始めた。磁石のおもちゃで遊んでいた私を、親が必死になって子供用の低い机に押し込んだ。今でもはっきりと覚えているけれど、あの時の地震は、まったく怖くなかった。地面が揺れているだけで、何をそんなに騒ぐことがあるのかと。地震によって命が奪われる事など思いも寄らなかった。だから、怖くなかった。当時の私は無知だった。今思えば、無知であることは精神面的には最強無敵なのだろうが、やはり危険だ。
「この学校には、東日本大震災を知らない生徒達がいます」
これは、昨年に学校で黙祷を行った時に校長から言われた言葉。中高一貫校に自分は通っているのだが、私は校長のその発言に驚愕した。あの時の生々しい記憶を語り継いでいけるのは、自分たち世代が最後なのかもしれないと思った。そして、戦争を知っている祖父母たちも同じような気持ちなのかもしれないと感じた。

私の先祖たちの話を思い返す。空襲の中、当時中学生だった兄に背負われて機銃掃射から逃げまくった2歳の祖母。「機銃掃射から逃げ切れなかった人たちが倒れていた。身体にポッカリと穴が空いていて、溢れるように血が流れていた」。そう語る祖母のその言葉は、とても淡々としていた。同じ頃、父親を先頭に家族全員で逃げ惑った祖父。「親父についていけば大丈夫な気がした」。私が生まれた頃には既に老衰で亡くなっていた祖父の言葉。母親から伝え聞いたその言葉に、聞いたことのない祖父の声を想像する。彼は高校生の時に、当時不治の病とされていた結核を患い、余命宣告もされて医師からも見放され、死を待つ日々を過ごした。結核仲間が次々と死んでいく。次は自分か。何度もそう思い続けて、生き残ってしまった最後の一人になった時、結核の薬が出来た。「俺にしては十分に長生きした方だ」。70歳で亡くなる直前に、祖父はそう言い遺したそうだ。

生きてるって何だろな。進撃の巨人を断片的にYoutubeで見て、とある兵長を知った時にそう思うようになった。最初は、精悍な顔つきで最強な兵長という肩書きに憧れたけれど、彼の過去を知ってからは、簡単に彼みたいになりたいとは思えない。生きるということは、それだけ沢山の物を自分の手で犠牲にしていくことなのではないか。自分が呑気にそんな事を考えている間にも、何処かで誰かが死んでいく。半年前、当時高校2年生で亡くなった生徒を弔う儀式が学校で行われた。名前も初めて聞いて、顔も知らないし、もしかしたらすれ違っていたかもしれない。その人が亡くなった事に特別な悲しみを抱かなかったが、身近に夭逝した人が現れた時の衝撃は忘れられない。確かにそれまでにもニュース等で、病気などの為に若くして亡くなった人たちの話は聞いていたけれど、何処か架空の話みたいな気がして、現実味を帯びていなかった。

そんな時ふと、初恋の記憶が蘇る。段々と色褪せていく。顔もはっきりと思い出せないけど、貴方は今も眩しい光に包まれて笑顔を浮かべている。少し大人ぶってみたくて、お互いに照れながら一瞬で終わっちゃった初めてのハグの温もりもキスの温度も、微かに身体は覚えてる。今の貴方に好きな人がいようがいまいが貴方の自由だし、私が気にすることはないけれど、「生きててくれたら嬉しいな」と思った。

そんな自分は、過去に希死念慮を抱いた。初恋が終わりを迎えた後のこと。死を望んだと言うよりは、生を避けるための手段に近かった。好きな歌手、好きなキャラクターに出会ってからは、変わった。生きたいと思うようになった。好きだと思えるものに再び出会えたからかもしれない。それでも時折、生きるのが怖くなる。雑然とした未来の先の自分は幸せだろうか。幸せじゃなかったらどうしよう。幸せな日々が壊されるかもしれない不安から、壊される前にこの世から逃げてしまおうかと考えることもある。社会は、自ら死ぬことを「許さない」。周りの人が悲しむよ?生きていたら良いことあるよ?そんなこと、本当は分かってる。この世に逃げ場がないから、向こうに行くしかない。死が命綱になることもあるんじゃないの?だったら大人しく見守ってよ。そこまで考えた私でも、臆病だった。やっぱり、死んじゃうのは怖かった。リストカットをしてみようとしたけれど、痛みすら怖くて、手の甲を軽く定規で擦って赤い跡を付けたくらいだった。

どうして自分が生まれてきたのか。前世で犯した罪を償うため、カルマを解消するため。色々な説が言われている。もしかしたら、神様に「もう良いよ」と言われた瞬間が、死なのかもしれない。もしも今の自分が自ら死んだら、閻魔様から「お前はまだ前世の罪を解消していない。だからもう一回生まれてこい」と新たな命にされるのかな。何それ。生まれ損?死に損?自分を大切に思ってくれる人を悲しませるだけで、もう一回振り出しに戻るの?

ところで、生きているうちに元号が変わることはそこまで珍しくもないけれど、世紀を跨ぐのは選ばれた者にしか出来ないのでは?もしも自分が22世紀の空気を吸おうとするなら……


何が何でも長生きしてやろうじゃないか!!


私は、希死念慮が芽生え始めた時、好きなものを列挙するようにしている。好きな歌手、好きな人、好きな色、好きな食べ物、好きな趣味。何でも良い。1つでも言えたら、十分に幸せ。生きる価値はある。2つ言えたら、人生はなかなか楽しいものになる。3つ言えたら上等だ。そう考えるようにしている。

ところで、私には胎内記憶がある。初めてこの世界にやってきた時、私は怖かった。物凄く高い場所から突き落とされた先の世界は暗闇。とても暗くて、何があるのかも分からなくて不安だった。そして漸くその世界にも慣れてきた頃、ある日突然、馬鹿みたいに強い力に引っ張られた。私はまた、違う世界に連れて行かれるの?抵抗して、喚いて、それなのに力は弱まるどころか強くなる。初めは怖かった私も段々と腹が立ってきた。

恐怖と苛立ちと一緒に、私は寒くて白っぽい世界にやって来た。今思えばこれが、腹の外に出た瞬間だった。赤ちゃんが生まれて勝手に喜ぶのは腹の外の人間で、赤ちゃんは案外喜ばないものかもしれないね。

我々生きている人間は、古代から死を恐れる。私が思うにそれは、未知への恐怖だ。本来なら喜ばしい誕生すら、この世という世界を知らなかった私には恐怖の対象だった。生まれてみれば案外、この世は悪くない。生きている以上は必ず死神がつきまとうけど、仕方ない。割り切ろう。この世には絶品も絶景も、絶世の美女も美青年も美声もある。沢山の美しいもので溢れるこの世界。自分自身が美しくなくたって良い。折角なら、この世の美しさを味わいまくって楽しみまくってから死のうじゃないか。

2026年1月1日。今これを入力している私を、死神は背後からチラリと覗いているのかもしれない。死神さん、もう少しだけ待って。

目指せ!22世紀!

そして受験生の皆さん。2026年は午年ですね。中国由来の四字熟語に、「馬到成功」というものがあるそうな。馬が到着すると、成功が訪れるという意味だそうです(ネット調べ)。入試は目と鼻の先。
合格を目指して駆け抜けよう!


最後に。いつかこの世界が、いつ、どこへ、誰として生まれても後悔しないような世界になりますように。いや、そんな世界を、私たちは作っていってみせる。
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