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第23話「冷水と眼光」
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二週間もの期間が開いたので久しぶりに教室のドアを開ける。まだ足に痺れを感じて少々歩きにくいが、退院日直前に松葉杖が外れたので、いかにも重症の人みたいな見た目は回避する事が出来た。
自分の机へと辿り着き、鞄の中の荷物を机の中に移動させていると、自分より少し遅れて教室に入ってきた純が真っ直ぐこちらに向かってきた。
「冬馬! ずっと心配してたんだよ。ごめんね決勝戦負けちゃって」
「いや、みんな頑張ったし、決勝まで行けたのも凄いことだよ」
花園から聞いた話だが、純たちが全力を出して決勝戦を戦ったというのは知っている。だから自分の代わりに走ってくれたのは本当に嬉しかった。
「それでさ、言いたかった事なんだけど……放課後一緒に駅近くの喫茶店に行って欲しいんだ。そこで話したい」
「あ、ああ……良いけど」
純が言う「話」とは、球技大会の時に純が「終わってから話したいことがある」と言っていた事だろう。いつもふわふわしている純がこんなにも改まって言う事に全然想像もつかないが、それほど大事な話なんだろう。
球技大会の日から一週間くらい経ってしまってずっと待ちぼうけを食らった状態にあるので、早く放課後になって欲しいものだ。
「それと、冬馬。学校来て何か変わった事ある?」
「んー、特に何にもないかな。何かあったの?」
「いや、何にもないなら大丈夫」
純はそう言うと、いつものニコニコした表情に戻って、自分の席へと戻っていった。
変わった事と言っても、同じクラスの生徒は退院した人間に対して「久しぶり」とか「大丈夫?」とか気を使ってくれるものなのだろうけど、冬馬が学校に来てからクラスメイトに一言も話しかけられていない。
だがそれは冬馬がクラスの中でスクールカーストが一番下の部類に入っていて、いつもの日常と変わっていないため普通の事だと思うが、球技大会を共に戦った仲間たちでさえ話しかけてきてくれない。
(……まあ、考えすぎか)
冬馬は一時間目の教科に使用する教科書と資料集を机の上に上げて、朝のHRが始まるまで新しく購入した小説で読書を始めた。
結局授業が始まってから四時間目の最後まで、誰とも話さないまま昼休みを迎えてしまった。
「冬馬、ご飯一緒に食べよう」
「良いよ……あ、今日弁当忘れた。ごめん純、俺学食に行ってくるから他の人と食べてて」
本来冬馬は学食で昼ご飯を済ませているが、純が一緒にご飯を食べたいという事で毎週水曜日だけ弁当を持ってくることになっている。
自分が弁当を忘れたことを伝えると、純が「僕も学食に行くよ」と言ったが、それはせっかく弁当を作ってくれた純の母親に失礼だということで丁寧に断った。その代わり明日一緒に食べる約束をして食堂へと向かった。
冬馬は学食が無料で食べられる権利を持つゴールドピンを持っているので毎日食堂に通っていても問題はないが、純は持っていないので毎日弁当を持参している。
一階まで階段を降りて、廊下の突き当りまで歩いて行くと、食堂の存在を認識させる独特の臭いが冬馬の鼻孔を通過した。
(……今日も適当に済ませるか)
冬馬がいつも購入しているのは「日替わりランチセット」という、食堂で働いている料理人のおばさんたちの気分で毎日おかずが変わるメニューだ。
これを頼むには訳があって、いつも固定された昼食をしていると流石に健康に良くないだろうという事で一応身体に気を使っている。
(あ……花園)
厨房のカウンターにチケットを渡したとき、偶然にも近くの席で仲がいい友だちのグループと一緒にご飯を食べている花園が視界に入った。
だが花園は相変わらずこちらには眼中にもないといった感じで、和気藹々に友達と食事を楽しんでいた。
(ま、いっか)
普段と同様端っこにある席に腰を下ろして間もなくしてからランチセットが運ばれてきた。どうやら今日は麻婆豆腐がメインの中華ランチセットらしい。
「いただきます」
食堂のおばさんたちが作るメニューは正直に言ってどれも美味しい。それも若き時代はどこぞの名門料理店で働いていたのかと思わせるほどだ。
この麻婆豆腐も美味しいなと思いながら箸を動かしていると、複数の男子が話している声がっみに入ってきた。
「はぁーどっかの糞陰キャが球技大会出しゃばっちゃってまじつまんなかったわー」
「それなーしかもそいつ球技大会の日に事故に遭って病院送りになったらしいぜ」
「調子に乗った罰の因果応報じゃん」
冬馬にも聞こえるように話すのはわざとやっていると自分でもわかる。その「事故に遭って病院送りになった」どっかの糞陰キャっていうのは間違いなく自分の事だろう。
「くっそ意味わかんねーわ。あ、そこにいるの糞陰キャ君じゃね?」
「あー! 本当や!」
こういうのは無視した方がいい。関わったら面倒な事に巻き込まれてせっかくの落ち着いた昼食の時間が無駄になる。絶対に目を合わせてはいけない。
「おーい聞いてんのー?」
「ちょっとこっち向けよ糞陰キャ君ー!」
意識すれば意識するほど腹が煮えくり返ってくる。何だよ「糞陰キャ君」って。あまりお互いの事を知らないからって変なあだ名で呼びつけやがって。こんな風に食堂の場を乱されたら他の人にも迷惑がかかるだろ。
冬馬はとうとう堪えていた我慢が解かれて、後ろからものを言ってくる人たちの方を振り向いて声を荒げないように言った。
「何ですか」
振り向くとそこにいたのは、クラスメイトの伊達と他のクラスの男子生徒二人だった。学校生活を過ごしてきて今まで話したこともない人間に罵倒されるなんてますます意味が分からない。
「何ですかじゃねーんだよ。花園にも近づいてちょっかいかけてるらしいじゃねーか!」
伊達は冬馬のトレーに乗っていた冷水が入ったコップを持ち上げると、そのまま冬馬の頭上に勢い良くぶちまけた。
それと同時に、髪と着ていた制服が水浸しになってしまい、おまけに冬馬の席の周りまでに被害が及んでしまった。
途端に食堂全体が冷たい空気に包み込まれたかのように静まり返る。
「いいか、もう二度と花園に近づくな。お前みたいな陰キャが近づいて良い存在じゃねぇ」
伊達は自分にそう吐き捨てると、嘲笑している連れの二人と共に食堂を出て行ってしまった。この光景を見た周りの生徒も口々にクスクスと鼻を鳴らしているのが耳に流れ込んでくる。
ここで朝に純が言っていたことが脳裏をよぎる。
--学校に来て何か変わった事ある?
それに嫌に冷たいようなクラスの雰囲気。これでようやく全ての事に合点がいった。
どうやら気のせいではなかったようだ。どこが情報発信源なのかは知らないが、「球技大会で調子に乗っていた水城っていうやつが花園に手を出しているらしい」という意味不明な噂が流れているらしい。
(くそ……冷てぇ)
冬馬が放心状態になりかけているなか、ちらっと花園が座っているテーブルの方に目を向ける。視線の先には貧民を嘲笑うかのような目付きでこちらを見ながら笑みを飛ばしている女子生徒たちが映った。
(花園……)
一瞬目が合った気がしたが、花園は自分から目を背けるように同席している女子たちとの会話の中に混じって、周りの生徒と同じように自分を憐れむような目で嘲笑した。
(……なんだよ揃いも揃って)
勉強合宿の時から少しずつ花園を見直して、最近では普通に話せる良い子かもしれないと少しだけ思い始めていた。そして今回の球技大会も花園が応援に来てくれたのがとても嬉しくて、バスケの試合を見に行った時も自然と花園を目で追っていた。
あのとき笹森と会話の中で「気が付いたら目で追ってる女子いない?」と言われた時、正直ドキッとして自分は花園の事が好きなのかもしれない。と思っていたのにこれだ。
(結局か……)
今の花園の目はどこかで見覚えがある。
そう、最近になって完全に心の中に閉じ込める事が出来たと思っていた、中学時代の思い出。あの教室の中でとある女の子がゴミを見るような目付きで冬馬を見つめたものと似ている。
それに、自分に罪がないのにも関わらず、散々な罵倒を浴びせられたあげく冷水を被せられるのは、いくら耐えようとしても心に来るものがある。あんな行為をされては身もプライドもボロボロだ。
冬馬は周りの視線から目を背け、食堂のおばさんから借りた雑巾で水浸しになった席の周辺を掃除して、びちゃびちゃの髪と服を着たまま保健室へと向かった。
自分の机へと辿り着き、鞄の中の荷物を机の中に移動させていると、自分より少し遅れて教室に入ってきた純が真っ直ぐこちらに向かってきた。
「冬馬! ずっと心配してたんだよ。ごめんね決勝戦負けちゃって」
「いや、みんな頑張ったし、決勝まで行けたのも凄いことだよ」
花園から聞いた話だが、純たちが全力を出して決勝戦を戦ったというのは知っている。だから自分の代わりに走ってくれたのは本当に嬉しかった。
「それでさ、言いたかった事なんだけど……放課後一緒に駅近くの喫茶店に行って欲しいんだ。そこで話したい」
「あ、ああ……良いけど」
純が言う「話」とは、球技大会の時に純が「終わってから話したいことがある」と言っていた事だろう。いつもふわふわしている純がこんなにも改まって言う事に全然想像もつかないが、それほど大事な話なんだろう。
球技大会の日から一週間くらい経ってしまってずっと待ちぼうけを食らった状態にあるので、早く放課後になって欲しいものだ。
「それと、冬馬。学校来て何か変わった事ある?」
「んー、特に何にもないかな。何かあったの?」
「いや、何にもないなら大丈夫」
純はそう言うと、いつものニコニコした表情に戻って、自分の席へと戻っていった。
変わった事と言っても、同じクラスの生徒は退院した人間に対して「久しぶり」とか「大丈夫?」とか気を使ってくれるものなのだろうけど、冬馬が学校に来てからクラスメイトに一言も話しかけられていない。
だがそれは冬馬がクラスの中でスクールカーストが一番下の部類に入っていて、いつもの日常と変わっていないため普通の事だと思うが、球技大会を共に戦った仲間たちでさえ話しかけてきてくれない。
(……まあ、考えすぎか)
冬馬は一時間目の教科に使用する教科書と資料集を机の上に上げて、朝のHRが始まるまで新しく購入した小説で読書を始めた。
結局授業が始まってから四時間目の最後まで、誰とも話さないまま昼休みを迎えてしまった。
「冬馬、ご飯一緒に食べよう」
「良いよ……あ、今日弁当忘れた。ごめん純、俺学食に行ってくるから他の人と食べてて」
本来冬馬は学食で昼ご飯を済ませているが、純が一緒にご飯を食べたいという事で毎週水曜日だけ弁当を持ってくることになっている。
自分が弁当を忘れたことを伝えると、純が「僕も学食に行くよ」と言ったが、それはせっかく弁当を作ってくれた純の母親に失礼だということで丁寧に断った。その代わり明日一緒に食べる約束をして食堂へと向かった。
冬馬は学食が無料で食べられる権利を持つゴールドピンを持っているので毎日食堂に通っていても問題はないが、純は持っていないので毎日弁当を持参している。
一階まで階段を降りて、廊下の突き当りまで歩いて行くと、食堂の存在を認識させる独特の臭いが冬馬の鼻孔を通過した。
(……今日も適当に済ませるか)
冬馬がいつも購入しているのは「日替わりランチセット」という、食堂で働いている料理人のおばさんたちの気分で毎日おかずが変わるメニューだ。
これを頼むには訳があって、いつも固定された昼食をしていると流石に健康に良くないだろうという事で一応身体に気を使っている。
(あ……花園)
厨房のカウンターにチケットを渡したとき、偶然にも近くの席で仲がいい友だちのグループと一緒にご飯を食べている花園が視界に入った。
だが花園は相変わらずこちらには眼中にもないといった感じで、和気藹々に友達と食事を楽しんでいた。
(ま、いっか)
普段と同様端っこにある席に腰を下ろして間もなくしてからランチセットが運ばれてきた。どうやら今日は麻婆豆腐がメインの中華ランチセットらしい。
「いただきます」
食堂のおばさんたちが作るメニューは正直に言ってどれも美味しい。それも若き時代はどこぞの名門料理店で働いていたのかと思わせるほどだ。
この麻婆豆腐も美味しいなと思いながら箸を動かしていると、複数の男子が話している声がっみに入ってきた。
「はぁーどっかの糞陰キャが球技大会出しゃばっちゃってまじつまんなかったわー」
「それなーしかもそいつ球技大会の日に事故に遭って病院送りになったらしいぜ」
「調子に乗った罰の因果応報じゃん」
冬馬にも聞こえるように話すのはわざとやっていると自分でもわかる。その「事故に遭って病院送りになった」どっかの糞陰キャっていうのは間違いなく自分の事だろう。
「くっそ意味わかんねーわ。あ、そこにいるの糞陰キャ君じゃね?」
「あー! 本当や!」
こういうのは無視した方がいい。関わったら面倒な事に巻き込まれてせっかくの落ち着いた昼食の時間が無駄になる。絶対に目を合わせてはいけない。
「おーい聞いてんのー?」
「ちょっとこっち向けよ糞陰キャ君ー!」
意識すれば意識するほど腹が煮えくり返ってくる。何だよ「糞陰キャ君」って。あまりお互いの事を知らないからって変なあだ名で呼びつけやがって。こんな風に食堂の場を乱されたら他の人にも迷惑がかかるだろ。
冬馬はとうとう堪えていた我慢が解かれて、後ろからものを言ってくる人たちの方を振り向いて声を荒げないように言った。
「何ですか」
振り向くとそこにいたのは、クラスメイトの伊達と他のクラスの男子生徒二人だった。学校生活を過ごしてきて今まで話したこともない人間に罵倒されるなんてますます意味が分からない。
「何ですかじゃねーんだよ。花園にも近づいてちょっかいかけてるらしいじゃねーか!」
伊達は冬馬のトレーに乗っていた冷水が入ったコップを持ち上げると、そのまま冬馬の頭上に勢い良くぶちまけた。
それと同時に、髪と着ていた制服が水浸しになってしまい、おまけに冬馬の席の周りまでに被害が及んでしまった。
途端に食堂全体が冷たい空気に包み込まれたかのように静まり返る。
「いいか、もう二度と花園に近づくな。お前みたいな陰キャが近づいて良い存在じゃねぇ」
伊達は自分にそう吐き捨てると、嘲笑している連れの二人と共に食堂を出て行ってしまった。この光景を見た周りの生徒も口々にクスクスと鼻を鳴らしているのが耳に流れ込んでくる。
ここで朝に純が言っていたことが脳裏をよぎる。
--学校に来て何か変わった事ある?
それに嫌に冷たいようなクラスの雰囲気。これでようやく全ての事に合点がいった。
どうやら気のせいではなかったようだ。どこが情報発信源なのかは知らないが、「球技大会で調子に乗っていた水城っていうやつが花園に手を出しているらしい」という意味不明な噂が流れているらしい。
(くそ……冷てぇ)
冬馬が放心状態になりかけているなか、ちらっと花園が座っているテーブルの方に目を向ける。視線の先には貧民を嘲笑うかのような目付きでこちらを見ながら笑みを飛ばしている女子生徒たちが映った。
(花園……)
一瞬目が合った気がしたが、花園は自分から目を背けるように同席している女子たちとの会話の中に混じって、周りの生徒と同じように自分を憐れむような目で嘲笑した。
(……なんだよ揃いも揃って)
勉強合宿の時から少しずつ花園を見直して、最近では普通に話せる良い子かもしれないと少しだけ思い始めていた。そして今回の球技大会も花園が応援に来てくれたのがとても嬉しくて、バスケの試合を見に行った時も自然と花園を目で追っていた。
あのとき笹森と会話の中で「気が付いたら目で追ってる女子いない?」と言われた時、正直ドキッとして自分は花園の事が好きなのかもしれない。と思っていたのにこれだ。
(結局か……)
今の花園の目はどこかで見覚えがある。
そう、最近になって完全に心の中に閉じ込める事が出来たと思っていた、中学時代の思い出。あの教室の中でとある女の子がゴミを見るような目付きで冬馬を見つめたものと似ている。
それに、自分に罪がないのにも関わらず、散々な罵倒を浴びせられたあげく冷水を被せられるのは、いくら耐えようとしても心に来るものがある。あんな行為をされては身もプライドもボロボロだ。
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