ステータスなしの元人気メンタリスト、異世界の最強ドラゴンをお手だけで服従させる~目を見ただけで思考が読めるので、魔法使いが詠唱してくれません

マーマー

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第4章第4節 異端審問局

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 大聖堂の地下深くに、その施設は存在した。
 異端審問局本部。教会の闇を象徴する、光の届かない場所だ。

 レンは、セシリアに支えられながら、長く陰気な石造りの廊下を進んでいた。壁には、過去の「魔女」たちが火刑に処される様子を描いたタペストリーが掛けられ、空気は埃と、微かな血の臭いに満ちていた。

 (……うわぁ、趣味悪っ。……ここが裁判所ってマジかよ。……完全に処刑場じゃん)

 レンは、観察(スキャン)するまでもなく、この場所が「公平な裁判」を行うための場所ではないことを悟った。ここは、あらかじめ決まった「有罪」という結論を、法的に確定させるための儀式の場なのだ。

「……レン様。……大丈夫でしょうか。……アリア殿は、無事でしょうか……」

 セシリアが、不安そうに尋ねた。彼女の手は、レンの腕を掴みながら、小刻みに震えている。

「……心配ない。……アリアは、私がついている」

 レンは、動かない体で精一杯の虚勢を張り、セシリアを安心させるように微笑んだ。
 (……嘘だよ。……心配だよ。……俺だって今すぐ逃げ出したいよ……!)

 やがて、二人は巨大な鉄の扉の前にたどり着いた。
 扉には、教会の紋章である十字架と、それを貫く剣のレリーフが刻まれている。

「……ここが、法廷です」

 案内役の神官が、無感情な声で告げ、扉を開けた。

 ギギギィ、と重い音を立てて扉が開くと、そこには、異様な空間が広がっていた。
 円形の石造りの部屋。中央には被告人席があり、そこにはアリアが、手枷と足枷をつけられ、さらに首には「魔封じの首輪」を嵌められた状態で座らされていた。
 彼女の周囲を、黒い法衣に身を包んだ数十人の異端審問官たちが取り囲んでいる。その中には、昨日レンに恥をかかされたガイウスの姿もあった。彼は、レンを見ると、ニヤリと残酷な笑みを浮かべた。

「……ようこそ、賢者殿。……お待ちしておりましたよ」

 そして、法廷の最上段。裁判官席には、三人の老人が座っていた。彼らの目は、信仰心というよりは、権力への渇望に濁っていた。

「……開廷する。……被告人、魔女アリアの審問を始める」

 中央の裁判長が、冷徹な声で宣言した。

 レンは、傍聴席の最前列に座らされた。セシリアは、その隣に立ち、いつでも剣を抜けるように身構えている。

「……被告人アリア。……貴様は、教会の許可なく、神聖な領域で魔力を行使し、教会の秩序を乱した。……これは重大な『異端』行為である。……申し開きはあるか?」

 裁判長の言葉に、アリアはゆっくりと顔を上げた。彼女の顔色は悪いが、その瞳は、不敵な光を失っていなかった。

「……フフフ。……秩序、ね。……あなた方の言う秩序など、深淵の前には塵芥に等しいわ」

 アリアは、ニヤリと笑った。

「……私が魔力を使った? ……違うわ。……これは、世界が私に呼びかけているのよ。……神を超越した、真理の力……!」

 (……馬鹿! ……余計なこと言うな! ……それ完全に魔女のセリフじゃねーか!)

 レンは頭を抱えた。この中二病娘は、自分が置かれている状況を全く理解していない。むしろ、この状況を楽しんでいる節さえある。

「……フン。……自ら罪を認めたか。……裁判長、もはや審問の必要はないでしょう。……即刻、火刑を……」

 ガイウスが、勝ち誇ったように言った。

 その時。
 レンが、動かない体を無理やり起こし、ゆっくりと立ち上がった。

「……異議あり」

 レンの声が、静まり返った法廷に響き渡った。
 全ての視線が、レンに集中する。

「……賢者殿。……貴方は傍聴人だ。……発言権はない」

 裁判長が、不快そうに眉をひそめた。

「……いいえ。……私は、被告人アリアの『弁護人』として、ここに立ちました」

 レンは、ニヤリと笑った。

「……法廷の規則によれば、被告人は弁護人を選任する権利があるはずです。……そうですね? ……アリア」

 レンがアリアに目配せをする。
 アリアは、一瞬きょとんとしたが、すぐに状況を(深読みして)理解し、ニヤリと笑い返した。

「……ええ、そうよ。……師匠こそ、私の深淵なる弁護人。……全ては、師匠の計画通りよ」

 (……いや、計画なんてねーよ! ……完全に行き当たりばったりだよ!)

 レンは内心でツッコミながらも、外面だけは「余裕の賢者」を演じ続けた。

「……フン。……弁護人だと? ……異教徒の賢者が、教会の法廷で何を語るつもりだ?」

 ガイウスが嘲笑う。

「……真実を、語るまでです」

 レンは、ガイウスを真っ直ぐに見据えた。
 彼の観察眼(スキャン)が、法廷内の全員の心理状態を解析していく。
 裁判官たちの権力欲。審問官たちの盲目的な信仰。ガイウスの個人的な恨みと功名心。そして、アリアの無邪気な信頼。

 (……さあ、ショータイムだ。……この狂った法廷を、俺の『言葉』だけでひっくり返してやる!)

 レンは、動かない体で、不敵な笑みを浮かべた。
 彼の胃痛は、ピークに達していたが、彼の瞳は、冷静な計算と、かすかな希望の光を宿していた。
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