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第6章第3節 魔王城からの脱出、あるいは地獄の豪華客船クルーズ
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魔王との密室での「共犯者会議」を終え、レンが広間へ戻ると、ヒロインたちが待ち構えていた。
「……レン様! ……お話は終わりましたの?」
エリナが、待ちきれないといった様子で駆け寄ってきた。
「……ああ。……全ては順調だ」
レンは、疲労困憊の体を隠すように、努めて穏やかな笑顔で答えた。
(……順調どころか、崖っぷちだけどな……。……二重スパイとか、マジでどうすんだよ……)
「……師匠! ……それで、深淵の王は、どのように我々の聖戦に協力するのですか? ……やはり、深淵の軍勢を率いて、人間界に攻め込むので!?」
アリアが、興奮して鼻息を荒くする。
「……いや、それは時期尚早だ。……まずは、我々が聖教国へ戻り、内部から敵の正体を探る。……魔王殿には、そのための情報提供と、後方支援をお願いしてきた」
レンは、魔王との取り決めを、アリアにも理解できるように(そして、あまり過激にならないように)翻訳して伝えた。
「……なるほど。……まずは潜伏し、敵の喉元に刃を突きつける、というわけですね。……さすがは師匠、深遠な作戦です……!」
アリアは、勝手に納得してくれたようだ。
セシリアは、少し安堵したような表情を見せた。
「……つまり、すぐに戦争になるわけではないのですね。……良かった……」
「……ああ。……だが、油断はできない。……我々は、敵地へ戻るのだからな」
レンは、わざと厳しい表情を作って見せた。
その時、ベルゼブブが静かに近づいてきた。
「……レン殿。……魔王様より、帰還の準備が整ったとの伝言です。……城の裏手に、皆様を送るための『船』をご用意いたしました」
「……船?」
レンは、耳を疑った。魔族領は、聖教国とは陸続きのはずだ。船など必要なのだろうか?
「……はい。……陸路では、魔獣の襲撃や、聖教国の監視の目を掻い潜るのに時間がかかります。……空路で、一気に移動するのが得策かと」
(……空路!? ……まさか、飛行船的なやつ!? ……うわぁ、ファンタジーっぽい!)
レンのテンションが少しだけ上がった。男の子は、空飛ぶ乗り物に弱いのだ。
一行は、ベルゼブブの案内で、城の裏手にある巨大なテラスへと向かった。
そこでレンたちを待っていたのは、想像を遥かに超える代物だった。
「……な、何だこれ……?」
レンは、目の前の光景に絶句した。
テラスの先に停泊していたのは、巨大な「黒い帆船」だった。だが、それは海に浮かんでいるのではなく、虚空に浮かんでいた。船体は、黒曜石のように滑らかで、所々に禍々しい赤い魔力光が明滅している。帆には、魔王の紋章である逆さ十字が大きく描かれていた。
(……いやいや、これ、ただの幽霊船じゃん! ……しかも、空飛ぶ幽霊船! ……絶対、乗りたくないんだけど!?)
レンの胃痛が、またぶり返した。
「……魔王様専用の空中戦艦『ディアボロス号』です。……人間界への移動には、これが最も適しているかと」
ベルゼブブが、誇らしげに説明した。
「……す、すごい……! ……これが、深淵の技術力……!」
アリアが、目を輝かせて船を見上げている。
「……こんな巨大な船が、空を飛ぶなんて……。……魔王の力は、我々の想像を絶しますね……」
セシリアも、驚きを隠せない様子だ。
「……まぁ♡ 素敵なクルーズになりそうですわね! ……レン様、二人でデッキで星空を眺めましょうね♡」
エリナは、すでにロマンチックな空想に浸っている。
(……いや、ロマンチックどころか、ホラー映画のオープニングだよ! ……どう見ても、生きて帰れない雰囲気じゃん!)
レンは、心の中で全力でツッコミを入れた。だが、断る理由もない。
「……フッ。……なかなか、面白い船じゃないか。……魔王殿の粋な計らいに感謝しよう」
レンは、引きつった笑顔で、そう言うしかなかった。
一行は、ベルゼブブの案内で、ディアボロス号に乗船した。
船内は、外見の禍々しさとは裏腹に、豪華な調度品で飾られていた。魔族貴族の屋敷をそのまま船にしたような、贅沢な作りだ。
「……こちらの部屋を、レン殿のためにご用意いたしました」
ベルゼブブが案内したのは、船の最上階にある、広々としたスイートルームだった。巨大な窓からは、魔族領の荒涼とした大地と、その先に広がる聖教国の国境線が一望できた。
「……快適な船旅をお楽しみください。……聖教国への到着は、明朝を予定しております」
ベルゼブブは恭しく一礼し、部屋を出て行った。
レンは、部屋に残されたフカフカのソファに、倒れ込むように座った。
「……はぁぁぁぁ…………。……疲れた……」
魔王城での滞在は、正味二日足らずだったが、レンにとっては数年分の寿命を削られたような気分だった。
(……とりあえず、生きて帰れた……。……それだけで、十分だ……)
レンは、窓の外を流れる景色を眺めながら、深くため息をついた。
遠くに見える聖教国の街並みは、平和そのものだ。だが、レンは知っている。あの街の裏側には、教皇の陰謀と、エリナの狂気と、そして何より、魔王との二重スパイという、胃薬がいくらあっても足りない現実が待ち受けていることを。
(……明日から、また地獄の日々が始まるのか……。……誰か、時間を止めてくれ……)
レンの憂鬱な船旅は、こうして始まった。ディアボロス号は、レンの重すぎる溜息と胃痛を乗せて、静かに夜空へと進んでいった。
「……レン様! ……お話は終わりましたの?」
エリナが、待ちきれないといった様子で駆け寄ってきた。
「……ああ。……全ては順調だ」
レンは、疲労困憊の体を隠すように、努めて穏やかな笑顔で答えた。
(……順調どころか、崖っぷちだけどな……。……二重スパイとか、マジでどうすんだよ……)
「……師匠! ……それで、深淵の王は、どのように我々の聖戦に協力するのですか? ……やはり、深淵の軍勢を率いて、人間界に攻め込むので!?」
アリアが、興奮して鼻息を荒くする。
「……いや、それは時期尚早だ。……まずは、我々が聖教国へ戻り、内部から敵の正体を探る。……魔王殿には、そのための情報提供と、後方支援をお願いしてきた」
レンは、魔王との取り決めを、アリアにも理解できるように(そして、あまり過激にならないように)翻訳して伝えた。
「……なるほど。……まずは潜伏し、敵の喉元に刃を突きつける、というわけですね。……さすがは師匠、深遠な作戦です……!」
アリアは、勝手に納得してくれたようだ。
セシリアは、少し安堵したような表情を見せた。
「……つまり、すぐに戦争になるわけではないのですね。……良かった……」
「……ああ。……だが、油断はできない。……我々は、敵地へ戻るのだからな」
レンは、わざと厳しい表情を作って見せた。
その時、ベルゼブブが静かに近づいてきた。
「……レン殿。……魔王様より、帰還の準備が整ったとの伝言です。……城の裏手に、皆様を送るための『船』をご用意いたしました」
「……船?」
レンは、耳を疑った。魔族領は、聖教国とは陸続きのはずだ。船など必要なのだろうか?
「……はい。……陸路では、魔獣の襲撃や、聖教国の監視の目を掻い潜るのに時間がかかります。……空路で、一気に移動するのが得策かと」
(……空路!? ……まさか、飛行船的なやつ!? ……うわぁ、ファンタジーっぽい!)
レンのテンションが少しだけ上がった。男の子は、空飛ぶ乗り物に弱いのだ。
一行は、ベルゼブブの案内で、城の裏手にある巨大なテラスへと向かった。
そこでレンたちを待っていたのは、想像を遥かに超える代物だった。
「……な、何だこれ……?」
レンは、目の前の光景に絶句した。
テラスの先に停泊していたのは、巨大な「黒い帆船」だった。だが、それは海に浮かんでいるのではなく、虚空に浮かんでいた。船体は、黒曜石のように滑らかで、所々に禍々しい赤い魔力光が明滅している。帆には、魔王の紋章である逆さ十字が大きく描かれていた。
(……いやいや、これ、ただの幽霊船じゃん! ……しかも、空飛ぶ幽霊船! ……絶対、乗りたくないんだけど!?)
レンの胃痛が、またぶり返した。
「……魔王様専用の空中戦艦『ディアボロス号』です。……人間界への移動には、これが最も適しているかと」
ベルゼブブが、誇らしげに説明した。
「……す、すごい……! ……これが、深淵の技術力……!」
アリアが、目を輝かせて船を見上げている。
「……こんな巨大な船が、空を飛ぶなんて……。……魔王の力は、我々の想像を絶しますね……」
セシリアも、驚きを隠せない様子だ。
「……まぁ♡ 素敵なクルーズになりそうですわね! ……レン様、二人でデッキで星空を眺めましょうね♡」
エリナは、すでにロマンチックな空想に浸っている。
(……いや、ロマンチックどころか、ホラー映画のオープニングだよ! ……どう見ても、生きて帰れない雰囲気じゃん!)
レンは、心の中で全力でツッコミを入れた。だが、断る理由もない。
「……フッ。……なかなか、面白い船じゃないか。……魔王殿の粋な計らいに感謝しよう」
レンは、引きつった笑顔で、そう言うしかなかった。
一行は、ベルゼブブの案内で、ディアボロス号に乗船した。
船内は、外見の禍々しさとは裏腹に、豪華な調度品で飾られていた。魔族貴族の屋敷をそのまま船にしたような、贅沢な作りだ。
「……こちらの部屋を、レン殿のためにご用意いたしました」
ベルゼブブが案内したのは、船の最上階にある、広々としたスイートルームだった。巨大な窓からは、魔族領の荒涼とした大地と、その先に広がる聖教国の国境線が一望できた。
「……快適な船旅をお楽しみください。……聖教国への到着は、明朝を予定しております」
ベルゼブブは恭しく一礼し、部屋を出て行った。
レンは、部屋に残されたフカフカのソファに、倒れ込むように座った。
「……はぁぁぁぁ…………。……疲れた……」
魔王城での滞在は、正味二日足らずだったが、レンにとっては数年分の寿命を削られたような気分だった。
(……とりあえず、生きて帰れた……。……それだけで、十分だ……)
レンは、窓の外を流れる景色を眺めながら、深くため息をついた。
遠くに見える聖教国の街並みは、平和そのものだ。だが、レンは知っている。あの街の裏側には、教皇の陰謀と、エリナの狂気と、そして何より、魔王との二重スパイという、胃薬がいくらあっても足りない現実が待ち受けていることを。
(……明日から、また地獄の日々が始まるのか……。……誰か、時間を止めてくれ……)
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