魔女の喫茶店

たからだから

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――出会い――

魔女の喫茶店

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 赤色が混じった茶髪の彼女は今日も自身の経営する喫茶店を開く。店内は暗い茶色の木製で、コーヒーの香りと共に木の匂いと薬草の匂いが混じる。
 薬草の匂いは外壁に張り付いているオトギソウの匂いだろう。オトギソウは傷の治りを早くしてくれる植物であり、成長速度がとても速いのだ。おまけに何かに張り付かないと成長しない為彼女は店の壁に張り付かせている。
 最近は中にまでオトギソウの葉が侵入してきている為そろそろ整えなければと彼女は考えていた。

 黒い杖を壁に向けると杖の先が光った。店内に侵入していた葉は無くなり、彼女の手元へ集まってくる。

「こんなに沢山伸びてたのね。丁度、薬切らしてたから作っちゃおうかしら」
 小さく笑いながら呟く彼女の名はミア・リード。24歳の魔法使い、と言うより魔女と呼ばれている。何故魔女と呼ばれているかと言われれば簡単。ミアは魔法に関する能力が優れている為魔女と言う言葉が似合うからだ。本人は不満そうではあるが。

 ドアが開かれると同時に鈴の音が店内に響き、ミアは振り向く。優しい笑顔を浮かべた老人の常連客だ。ミアはその客の名前を思い出す。毎日のように来てくれていたのに、名前を知ったのは実は最近だったりする。
「ロドリィさん!今日も来てくれたのね!」
「魔女のコーヒーはとっても美味しいからね」
「もー、その呼び方ロドリィさんはしないでって言ってるのに」
「すまんすまん、つい」
「ふふ、じゃあいつもので良いわよね?」
「ああ、頼むよ」

 ミアは微笑むと杖を軽く振る。杖の先は光珈琲豆が動き出す。
 空中に浮かんだ珈琲豆は次々粉へと変われば、準備したドリッパーに流れるように入っていった。横目でロドリィを見れば目が合う。
「ロドリィさんっていつも見つめてくるわよね」
「ミアちゃん可愛いからね。それに、僕は君がコーヒーを淹れる姿が好きなんだよ」
「嬉しい事言ってくれるわね」
 白髪と白髭の似合うロドリィの優しい言葉にミアの口元は緩み、嬉しそうに笑った。

 杖をお湯の入ったドリップポットに向ければ空中に浮かび、先が細くなった注ぎ口からお湯が出てはペーパーに乗ったコーヒーの粉の中心にそっと注がれる。少し注いでは粉が膨らむのを見て、再びゆっくり円を描く様に注いでいく。
「ロドリィさんの今日のご予定は?」
「そうだねえ、暫くここでコーヒを飲みながら新聞を読んで、ミアちゃんと話したら妻の墓にでも行こうかと思っているよ」
「ロドリィさん奥さん大好きだものね」
「ああ、ずっと好きだよ」
 愛おしい、そう伝わってくる優しげな瞳を見つめてミアはドリッパーに目を向けた。ロドリィの妻は一昨年亡くなったそうだ。とあるによって。

 カップ1杯分の量を注げはコーヒーが落ちていく姿を見つめ、ドリップポットを元の位置に戻した。
 ミアは少し考えてしまった、自分がこの店をもっと早くに開いてたら、と。考えても仕方ない事だ。しかし、ミアは考えられずにいられなかった。店を開いた理由はこうやって悲しむ人を出さない為にするからだ。

 魔法使いが多く存在するが皆、良い人達ではない。ノーマジと呼ばれる魔法使いでは無い人間からは不審がられる事だってある。だが、自分の目的の為に行動しながらミアは思っていた。自分の様に憎み、悲しむ人を出したくないと。だからこそ事件や依頼を受けては解決する事をしだしたのだ。
 表向きは喫茶店だが本当の姿は全く別なのだ。

「ミアちゃん?どうしたんだい、ボーッとして」
「……あ、えっと、今日は何をしようかなって」
「ミアちゃんは薬作ったり忙しいからねえ」
「今、色々研究してるのよ。……上手くいってるかは微妙なんだけど」
「大丈夫、ミアちゃんなら出来るよ」
「ありがとう、ロドリィさん」
 心配するロドリィに笑顔を向ければ白いコーヒーカップにコーヒーを注ぐ。勿論手には杖だ。
 基本的に魔法使いは杖を使って日常生活を送る事が多く、家事等呪文を唱えれば勝手に動いて洗濯や料理等出来てしまう。誰にでも出来る訳ではなく、元々家事の呪文が苦手な人は洗剤を部屋に撒いたりしてしまう。

 コーヒーカップにコーヒーを注げばいつもの呪文を唱える。
「……美味しくなあれ」
 言葉の魔法である。




 ――――
 ――――――

 今朝の新聞を読みながらゆっくりコーヒーを飲み、読み終えればミアと談笑をしたロドリィは笑顔で店を後にした。
 笑顔で見届けたミアは誰も居ない店内を見て一息つく。
「さて、と。薬作って研究の続きでもしようかしら」
 呟いたミアは早速作業に取り掛かった。

 ミアの住む国、イルビアは大昔イギリスと呼ばれており世界には沢山の魔法使いが存在する。ミアもその1人だ。
 膨大な魔力は髪の毛にまで出ており、赤色が混じった髪の毛は魔法を使うと赤みが強くなる。
 腰まで伸ばした髪の毛は全体的に緩くウェーブが掛かっており猫っ毛故細い髪質。だから、赤みの強くなる姿が似合うと言う人は多い。
 本人はあまり気に入っては無いが、親友から大好きだと言われてからは気にしなくなった。

 ミアが23歳の頃に喫茶店スカーレットを営業し始めたのは、闇の魔法使いや魔術師が集う死の使いスノードロップから人を助ける為、もそうだがが欲しいからだ。
 表向きは喫茶店と営業しているものの、助けや依頼をしたい人物がやってくる何でも屋だったりする。最近は特に良い情報も無い為ミアは焦っていた。しかし、ここで焦っては全てが無駄になってしまうと我慢をしながらも、喫茶店での生活は楽しいものだった。

 ノーマジとの確執も完全に無いとは言えないのでノーマジは何でも屋の場合入店させている。助けや困っていなければこの店は見えないように魔法を掛けているのだ。とは言っても、元々首都のロアーグから少し離れた木々の多い場所に店を構えているせいか見付けにくいのだが。

 ミアは杖をテーブルに置いたまま薬草を調合する。必ず杖を使う訳では無いが、杖を使わずに魔法を掛けるには魔力や技術が必要でありミアは条件に見合っている為使わずとも魔法を掛ける事が可能である。努力の結果とも言える。

「……少し、疲れた……って、もうこんな時間!?またご飯食べてないわ……」
 時計を見てみれば驚く、外はもう暗いのだ。
 今日は客が少なかったと店内を見渡す。月曜日だからだろうかとミアは考えながら立ち上がる。
 スカーレットは常連客も沢山出来、それなりに売上も良い。だが、勿論波はある。しかし経営に不安は無いミアは気にしない。寧ろ研究に没頭出来て良かったと思っている。

 黒いテーブルの上には分厚い本と薬草、そして動物の爪や羽を詰めた瓶等が置いてある。蓋を閉めたり片付けをしているとドアが開き、鈴の音が響く。閉店時間だと告げようと振り向けば驚く程顔の整った男が笑顔で立っていた。

「こんばんは、魔女さん。俺を弟子にしてくれない?」



「…………は?」
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