魔女の喫茶店

たからだから

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――出会い――

色男と魔女

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 ミアは唖然としていた。誰が見ても間抜けな顔を晒してしまっているだろう。だが、それも当然である。見知らぬ男が弟子にしてくれなんて頼んでくるのだ。
 ミアはいきなり何だと驚いたまま固まっていた。
「……あれ?聞こえてんの?魔女さん」
「……聞こえてるわよ。いきなり、何かしら?弟子だなんて。そんなもの募集した覚えは無いわよ」
「あ、聞こえてる。良かった」
「……いや、アンタ話聞いてるの?」
 噛み合わない会話に思わず苦笑いを浮かべたミアは溜息をこぼしながら笑う男の顔を見つめた。
 珍しいプラチナブロンドの髪の毛は見ただけで触り心地の良い、サラサラとした髪だろうと分かる。
 二重で少し垂れている目はどこか色気を感じさせる。雰囲気だろうかとミアは考えてしまう。
 瞳は青く、この国の人間なのか不思議なくらい整い過ぎた顔立ちであり漂う雰囲気は正に、色男。

「そんなに見つめてどうしたの?俺の顔、変?あ、それとも俺に惚れた感じ?」
「もう閉店時間なの。帰ってもらえるかしら?」
「えー、そんな冷てえ事言わなくていいじゃん。俺、魔女さんの弟子になりたいわけ」
「だーかーらー!募集してないってば!」
 思わず大きくなる声にミアは腹が立っていた。
 ミアは外に吹き飛ばしてやろうかと杖を構えようとすると、男は両手をヒラヒラと胸の前で振る。
「あー、ちょっとそれは勘弁」
「だったら出て行って」
「……んー、少しは話聞いてほしいんだけどなあ」
 男の言葉にミアは何か依頼で来たのだろうかと杖を持った手を下ろした。仕方ないと息を吐き出せば扉に杖を向けばOPENからCLOSEにプレートを変え、カーテンも全部閉めた。

「……取り敢えず座って。飲み物、何が良い?」
「じゃあ、美味しいって評判のコーヒーを1杯」
「……かしこまりました」
 ミアは慣れたようにコーヒーを淹れ、香りを漂わせながらコーヒーカップを男の前に置く。
 ついでに自分のご飯を済ましてしまおうと思い、作り置きしていたおにぎりを温め、男の隣に座る。
「へえ、評判通り美味しいコーヒーだ」
「それはどうも。で、本題だけど弟子ってどう言う事?」
「その名の通り魔女さんの弟子にしてほしいの。理由を言えって言われれば、そうだな……死の使いスノードロップに関して、かな」
 男の言葉にミアは目の色を変える。そして、その様子に男は気付いていた。、と言わんばかりに。
 ミアの追い続けている、闇の組織だ。
「……死の使いスノードロップに関して、何?」
「噂で聞いたんだよ、魔女さんが死の使いスノードロップの情報が欲しい、ってね。俺もちょっと死の使いスノードロップとは色々あるからさ」
 男の目はこれ以上聞くな、と言う目だと分かっていた。きっと男の言うだろう。
「それで?弟子になりたい理由が見えないけど」
「んー、そうだなあ、俺強くなりたい訳。……守りたい人が居るんだ、だから、さ」
 伏せ目がちに言う男に少し察した。ミアも大切な人を守りたいのは同じだった。親友、友達、思い出の学校。ミアは大切な人を、場所を、これ以上失いたくなかった。残るのは優しい思い出と悲しい思い出だけ。

「……理由は分かったわ」
「じゃあ……!」
「でも!それとこれは別。……私、弟子を作る程凄い魔法使いじゃないのよ。……後、魔女って呼ばれ方可愛くないからあんまり好きじゃないの、やめて。ミア、よ」
「ええ~、俺結構好きだけどなあ……。じゃなくてさ、ミアちゃんがそう思ってるのとは関係無しに、俺はミアちゃんの弟子になりてえの」
「……じゃあ、聞くけど私に何を教わりたい訳?」
「魔法」
「そう言う事じゃなくて……」
 何度目かの溜息がこぼれる。全く読めない男だとミアは頭を抱える。今すぐ、この場に心を読める親友を連れて来たいところだがあまり現実的では無い。
 弟子になりたいと言う男の理由を察してしまっては断り辛いのがミアの性格だ。しかし、教える立場になれる程大層な人間では無い。様々な大切な人を、場所を失ってしまったのだから。
「あー、もう!分かったわ。貴方、この店の従業員って事で良いなら、採用したげるわ。……忙しい時1人居たら楽出来るし、研究もしやすくなるし」
「弟子になりたかったけど、良いや。お世話になります、師匠」
 語尾にハートが付きそうな口調に少し、否、かなり後悔した。

「ところで名前は?」
「ああ、紹介してなかったな。俺はギル・ベックフォード、よろしく」
 テーブルに肘を着き、手の甲に顔を乗せる仕草はとても色っぽいものだった。ただ、顔を乗せているだけなのに。魅力チャームの魔法でも使っているのかと疑いたくなるが、実際美しい顔なのだからと納得はする。

「因みにいくつ?」
「24」
「え、嘘!同い年!?」
「何でそんな驚いてんの?」
「……み、見えないと思って」
「若いって?嬉しい事言うじゃんミアちゃんってば」
「……ちょっと違う」
 口にはしなかったが同い年とは思えない色気に確かに若そうではあったが、正直自分より上だと思っていたのが本音。
 微笑むギルの心は分かる訳は無いが、何を考えているか分からない。不思議な人、とミアは思いながらプラチナブロンドの髪に目をやる。
 珍しく綺麗な髪にどこか見覚えがあった。しかし、それがどこかあまり思い出せない。

 あれ、何処だっけ……?

「あ!オキザリス!居たわよね!?あれー、何ですぐ思い出せなかったんだろ……?こんな綺麗な髪絶対覚えてるんだけどなあ……」
「……そっか、覚えてんだ、そこは」
 小さくギルが呟いた言葉はミアの耳には届かなかった。
「何か言った?」
「いいや、何でも。へえ、覚えてんだ、嬉しいねえ。そ、俺達同級生」
「え、もしかして私の事知ってるの?」
「勿論、スペードクラスのクイーン、だったからね」
「わ、懐かしいその響き」
 思わず笑みがこぼれるミアにギルは小さく笑った。
 2人が通っていたオキザリス魔法学校は名の通り、魔法使いのみが通える学校なのだ。
 4つのクラスがあり、全寮制。スペード、ハート、ダイヤ、クラブと言ったクラスで分かれており、魔力の量や質と性格に素質と様々なものを考慮してクラス分けが行われる。最も優秀な者が集まるのがスペードと言われているが、実際性格や素質が重視ではないだろうか。
 クラスで成績トップの男女はキング、クイーンと呼ばれミアは首席だった為学年が変わってもクイーンのまま卒業した。

 努力は必死にしていたが表には出していなかった為、学校生活自体は青春と言える程楽しんでいた。悪戯したり、夜中寮から抜け出し校内や敷地内を散歩して怒られたり、と。恋愛も少しだけしたが、あまり分からなかった。恋愛としての好き、が。

「私達同じクラスじゃなかったのかしら?」
「ああ、そうだよ。俺はハート。しかも、こう見えて一応キング、だからね」
「え、意外」
「結構失礼な事言うね」
 おにぎりを1口かじれば弟子になりたいと口にしていたのだ、きっと何でも屋についても知っているのだろう。ギルも死の使いについては知っていそうな様子だとミアは思い、明日からの生活を少し考えなければいけないと考えつつ、ギルに問い掛ける。
「ギルって、コーヒー淹れるの出来る?」
「……あー、全然だわ」

 ミアはまずはコーヒーの入れ方からだ、と溜息を吐き出した。
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