魔女の喫茶店

たからだから

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――警察殺し編――

ビッグ・ベン

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「キャアアアアッ!」
 清々しい朝、の筈がミアの叫び声と共に何かが爆発する音でそうもいかなかった。飛び起きた男2人は慌ててリビングへと向かった。
「ミアちゃん!?」
「ミア! どうした!?」
 焦った表情の2人にミアは気まずそうに笑えば、2人はミアが指を指したフライパンに目を移した。
「……えーと、寝ぼけて卵爆発させちゃったわ……。……あー、言いたい事は分かるんだけど、その……ごめんなさい」
 ミアの言葉に2人は深い溜息を零したのだった。
「……いいよ、ミアちゃん。俺が作るから。ルークさん苦手な物あります?」
「……何でも食べれる」
「……ご迷惑お掛けします……」



 ―――――
 ――――――――



 3人はビッグ・ベンに来ていた。大昔の戦争で建物は所々崩れ落ち、国会議事堂として使われていたが今は歴史ある世界遺産として観光地にもなっている。
 但し、許可証が必要。
 昼間のビッグ・ベンは当時に負けないくらい、輝いている様に見えた。魔法使いの戦争よりも前、ノーマジの戦争によって使われてはいなかったが。
 時計の時刻は魔法使い達の戦争前まではきちんと動いていたが、襲撃された時間で止まったままになっている。部屋は全て撤去されてしまい、廃墟と化してしまってるものの大昔の建物であり世界遺産と言う事もあり、とても人気だ。
 何故、3人がビッグ・ベンに来ているかと聞かれればミアが書類を見ていて殺害された共通点が、ビッグ・ベンにあったのだ。

「……皆殺害された場所がビッグ・ベンって言うのが分かった途端、都合良く通報が来るなんて……」
「でも、ルークさん1人じゃ逆に怪しまれるんじゃないの?」
 ミアとギルはビッグ・ベンが見える建物の影に隠れて話す。ミアの手元には通信玉シグナルボールがあり、ルークからの合図に使うようだ。
「……怪しまれるどころか向こうは気付いてる筈よ。じゃなきゃこんな昼間のタイミングに通報なんて入らないわ。……いつも警官が襲われているのは夜だったんだから」
 ミアは石造りで出来た建物の壁に背中を預けると、溜息を零す。
 警官は夜になると事件以外は外出せず、パトロールは空飛ぶ魔法具によって行われた。その時点では被害を出さない為、と言う表向きの理由ではあるが誘き出すと言う作戦までは分からないだろう。そう思っていた。
 勘が良いのか、向こうが誘き出そうとしているのかまではミアには分からない。しかし、感づかれているのは確かだ。
「まあ、手っ取り早かったから良いんだけど」
「……防御魔法しておいて良かったね~。こんな昼間に戦闘なんて、ノーマジに被害出ちゃうしねえ」
「ほんとね。まあ、目眩しの呪文もしてあるから、見えないとは思うけど」
 ミアの言葉にギルはビッグ・ベンを見つめると、予め掛けておいた防御魔法と目眩しの呪文によって薄く、透明な膜が見えた。
 ノーマジには見えない膜は中で何か起きていても知る事は無い。

「でも、ビッグ・ベンで何故こんな事をするのかは疑問ね」
「別の場所で殺害されて、持って来た形跡もあったからね~」
「……クレープは後よ」
「え、バレてた?」
 驚くギルに呆れた様な目を向ければ、出店のクレープ屋を見てるのだから分かるだろうと溜息を吐き出したくなる。
 ギルは甘い物が好きらしく、家でもよくスイーツを食べているのを見ている。事件が終わったら何か買ってあげようか、と少し考えてしまう。
「ミアちゃんってほんとやっさし~」
「……うるさい」
「あ、照れてるの~? かっわい~」
「……喋れなくするわよ?」
 揶揄からかうギルを睨むと相変わらずの緩い笑みに何度目かの溜息を零した。緩く笑っているだけなのに、色気があるのだから不思議である。

 仕事の休憩中だろうか、女性達がギルを横目で見ては頬を赤らめている様子が目に映る。ミアは黙っていればカッコイイのに、と思うが口にはしない。
 ギルは女性の視線には慣れているのか目が合うと垂れた目を細め、優しく笑う。黄色い声を上げる女性達にミアは随分とファンサービスが良い事だと、腕を組みビッグ・ベンの時計を見つめた。
「……ねえ、戦争ってまた起きると思う?」
「それは、死の使いスノードロップが戦争を起こす、って意味かい?」
「ええ、そういう意味になるわね」
「……まあ、今の現状を見たらそうなるんじゃないかな。平和的な組織じゃないからねえ」
 ギルの言葉にミアはぼんやりと、ビッグ・ベンを見つめたままだった。
 何かを考えているであろうミアの顔を覗き込むと、頬を優しく抓る。
「……どう言うつもり?」
「ミアちゃんは笑ってる方が可愛いよ~」
「……何よそれ、口説いてるつもり?」
「俺が本気で口説いたらミアちゃん大変だよ?」
 ギルの言葉に小さく笑えば頬を抓る手を退かすと、通信玉シグナルボールが光り出す。
「おい、ミア! どういう事だ! ……ケネディが来たぞ!?」
「え? 待って、ずっと見てたけど私達ケネディ警部の姿、見てないわよ?」
「ああ、俺も見てたけど誰かが入る姿は無かったですよ」
「……ギルはクレープに興味津々だったでしょ」
「いや~、あれは別にずっと見てたわけじゃないから、ね?」
「……お前等は何してたんだよ……」
 ルークの呆れた声にミアは誤魔化す様に話を続ければ、ギルは小さく笑ってその様子を見ているだけだった。

「……つまり、そこに居るのはルークとケネディ警部の2人って事よね?」
「ああ、そうだ。訳を聞けば、誰かに呼び出されただとよ」
「不用心過ぎない?」
 警察殺しがあっていると言うのに呼び出した相手が分からないまま、素直にその場に行くのは警察官としてどうなのかと呆れるが、権力だけで成り上がった男なのだ。仕方ない、と小さく息を吐き出せばミアは嫌な予感がしていた。
「良いわ、私達もそっちに行くわ。……嫌な予感がするのよね。ナルシスにケネディ警部……その場から動かないで」
 ギルに目を向けると、小さく頷くのを見てはミアはビッグ・ベンへと足を進めた。
「……動きたくないのは山々だが、そうもいかねえな、これは」
「まさかとは思うんだけど……」
 ミアは苦笑いを浮かべながら問い掛ける。嫌な予感は早速、的中してしまうのかと。
 ミアは走り出すと、杖を軽く振りギルと共にノーマジから姿を見えない様にした。
「ああ、そのまさかだ。……奴のお出ましだ」
 ルークの言葉に通信玉シグナルボールを宙に浮かせると、生きているが如くミアの後を付いてくる。
 横目で確認しながらビッグ・ベンの壊れた窓から入り込むと、奥の方に人影が見える。
「あれね……。ギル、行くわよ!」
「瓦礫だらけだね~。ヒールで転けないようにね」
「……心配するとこそこじゃないでしょ」

 中は広く、壁は所々穴が空いたように崩れてはいるが元の形はしっかりと残っているようで、ミア達が入った場所は以前お土産広場として、使われていた場所の様で小さな店があった形跡がある。
 ルーク達がいる場所はセントラルホールだろうとミアは考えながら、床に転がる瓦礫を踏まないよう注意しながら走る。
「……ッ! いきなり魔法飛ばすってどう言う事よ!」
「もう戦闘になってる!」
「ギル! 防御魔法お願い!」
「分かったよ!」
 ギルはルークとケネディ警部に防御魔法を発動させるとミアは杖先から炎を出す。世界遺産に傷を付けてしまうのは大問題だ。細心の注意を払いながら見覚えのある男に火の塊を飛ばす。
「ギャハッ! おいおい、魔女さんのお出ましじゃねえ~か!」
「……世界遺産で殺人だなんて悪趣味ね」
「嬉しい墓場だろ?」
 ミアはルークの元へ辿り着くと、楽しそうに笑うナルシスを睨む。
 横目でケネディを見れば本人は恐怖からか、腰を抜かしてしまっている。その姿に権力で成り上がったとは言え、情けない姿に頭を抱えそうな気持ちになりナルシスへと目を向けた。
「今回の事件はアンタの仕業ね? ナルシス・オブリ」
「流石だなあ~。もう、全部分かっちまってるんだろ? 恥ずかしいねえ、ギャハハッ!」

 ナルシスは笑ったかと思えば一瞬にして、ケネディを睨み付ける。憎しみ、殺意、様々な感情の混じった瞳はケネディを更に恐怖へと突き落とす。
「俺は、お前を殺したくてしょうがないんだよ」
 ミアはその姿を鋭い眼差しで見ながら、通信玉シグナルボールをその場から消した。
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