魔女の喫茶店

たからだから

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――警察殺し編――

正義

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「……ギャハ。そういや部下の死に様、知りてえか? そりゃもう、傑作だったぜ~?」
 ナルシスは笑みを消した表情から一変し、口角を上げルークを見ては笑う。やはり、犯人はナルシスだったのだと確信すればルークは、ナルシスに鋭い眼差しを向けた。
 元々目付きが悪いルークだ、その表情は人相が悪くとても警察官とは思えない表情だった。
「……どうやら随分可愛がってくれたらしいな」
「安心しろよ。……ちゃーんと、天国に送ってやったんだからよぉ~。魂が消えるよりマシだろ?」
 魂が消える、その言葉にミアは激しい怒りを感じる。両親の死を思い出し、睨み付けるとナルシスは気にしないとでも言うように笑う。
「お前はここで捕まるんだ」
「ギャハハッ! 俺は捕まらない! ソイツを殺さなきゃならないんだよ」
「……殺させないわよ」
 ミアはナルシスに杖を向けると、ナルシスの目が此方に向く。ゆっくりと首を傾げ、目を見開き問い掛けてくる。その表情は小さい子供の様にも見えた。
「……なあ、ソイツ庇う必要あんの?」

 ミアから視線をルークに移し、最後は腰を抜かしたケネディを見つめる。ケネディはナルシスに見つめられ小さい声を上げる。とても、情けない声だ。
 人を殺せる度胸があったのか、とミアは密かに思う。
「人を殺しといて、犯罪者を捕まえる警察なんて笑えるだろ。……権力があれば、人を殺して良いのかよ!?」
 叫ぶように喋るナルシスにミアは横目でケネディを見る。
 権力があれば殺人は隠され、殺した本人は警察官になり犯罪者を逮捕する。殺された側の気持ちを考えると憎む気持ちは分かるが、ミアはナルシスに目を向け口を開いた。
「……そうね、こんな奴庇う必要なんて無いわね」
「そうだろ? やっぱり魔女は分かってんなあ」
「だからと言って殺すのはダメよ」
「……何でだよ? 生きてる価値なんてないぜ?」
 ミアはナルシスの言葉に犯罪者を庇うつもりは全く無い。だが、罪を償わせなければならない。例え被害者が死を望んでいても。
 綺麗事だとミア自身よく分かっている。両親を殺した相手が目の前に現れればきっと、同じ事をしてしまうから。
「……でも、アンタが殺してしまえばどうなるの? 権力で何でも隠せてしまって、世間には公表されない。ケネディ警部が殺人犯だと。……それで充分かもしれないけど、それじゃ何も変わらないのよ」
 権力に負けじと必死に正義を貫き戦う人物をミアは知っている。
「私は、信じてるわ。魔法警察も、魔法政府も正義を貫いてくれる未来を。……その為には1つずつ表に出さなきゃいけないの。庇う、庇わないの話じゃないのよ。……死んでしまったら、アンタのお母さんの死の真相は闇に葬られたままになるの」

 ナルシスはミアの言葉に杖を強く握り締め、母親が殺されたあの日を思い出す。父親は悲しんでいたのに犯人が分かると、媚びへつらい何事も無く隠す。
 愛した女性を殺されたと言うのに。
 警察も犯罪者を野放しにした挙句、その犯罪者を警察官にするのだ。この世は狂っている、ナルシスはそう感じた。
 だから、あの方から声を掛けられた時は運命だと思った。理想の世界、自由、考える事全てがナルシスを魅力した。
 例え、復讐心を利用されていたとしても。
「……そんな綺麗事、俺は聞きたくないぜ……」
「私だって綺麗事だって分かってるわよ。……アンタ達を1人残らず殺してやりたいくらい、憎んでる」
 ギルはミアの一歩後ろに立ち、小さな背中を見つめた。本音の言葉に目を伏せると小さく、小さく笑った。
「……それじゃ根本的な解決にはならない。これ以上私や、アンタみたいな被害者を増やしちゃいけないわ。……そんなの、悲しくて辛いじゃない」
 眉を下げ、小さく笑うとナルシスを見つめた。その瞳は同情でも何でもなく、ただ優しいだけでありナルシスは少しばかり戸惑う。
 優しい瞳を向けられた事は母親が死んで以来、無かった。あの方とは違う瞳に母親を思い出してしまう。

「……お、俺は! ケネディ警部だぞ! 人殺しなんてやってるわけな、ないだろ!」
 震える足で立ち上がるケネディはナルシスに震える手で、杖を向けるとその場に居た人間は冷たい視線を送っただろう。
「……だったら思い出させてやるよ! ”ディス・ター苦しめ”!」
「”ポーター守れ”!」
 ミアは防御の呪文を唱えると魔法を跳ね返し、情けない声を上げるケネディに溜息を零した。
「……貴方ってほんと、救いようの無い馬鹿ね」
「ミ、ミアちゃん! 俺の事が好きだから、庇ってくれるんだろう!?」
 腰に抱きつこうとしてくるケネディを押し返すと、呆れた様に見つめながら魔法を防御する。
「……あのねえ、悪いけど私、貴方みたいな人大嫌いなのよ」
「わ、分かった! 父上に話をしてやろう! 金だろ? 金が欲しいんだな?」
「……おい、ミア。こんな馬鹿には構うな」
「そうね、頭が痛くなるわ……」
「でも、その人どうするんだい? このままじゃ狙われるだけだよ?」
「……死ぬ気で守って、死ぬ気でナルシス捕まえるわよ」
「……ワオ、アバウトだね~」
 ミアの大雑把な言葉にギルは驚いた顔をわざと作り見せてやると、面白そうに笑う。オーバーリアクションにミアもつられて笑えば、ギルはケネディ警部を庇う様に前に立つ。
 前線はミアとルークだ。

「腐った警察は俺が潰してやるぜ! ギャハハッ!」
「腐ってて悪いが、全部までは腐ってねえぞ。……お前の殺した奴等は皆! 権力に抗っていた! そいつ等を殺したんだテメエは!」
「……ふーん。……そんなの俺の知った事じゃねえよ」
 冷めた目でルークを見るナルシスは移動術でルークの背後に移動する。瞬間移動の様な魔法の移動術はミア達が使う移動術と少し、違うのだ。
 闇魔法と光魔法にはそれぞれ特定の場所に移動するのではなく、飛ぶように移動出来る魔法がある。死の使いスノードロップはその魔法を使い、自在に移動をする。
「っ、”スターチ石になれ”!」
 ミアは急いで振り向くと杖を振ったが、寸前で避けられるとナルシスの杖が此方に向く。
「”ブロー・ヴェイ吹き飛べ”!」
「っぐ!」
 魔法に当たったミアは吹き飛ばされてしまい、壁に背中を打ち付けた。痛みと衝撃に顔を歪ませてしまいながらも、立ち上がり杖を振ると光に包まれ一瞬にしてナルシスの背後へ現れる。
 ミアは光魔法の移動術を使ったのだ。今まで上手く成功はしなかったが、本番に強いのか1発で成功してみせると内心喜ぶ。
「”ポッパー弾け”!」
 ナルシスの杖に魔法が当たると杖は手から離れていき、地面に音を立てて転がる。
 ミアはそのまま覆い被さる様に押し倒すと、馬乗りになり杖をナルシスの額に当てて小さく笑った。
「……女に馬乗りになられるなんて幸せだぜ~?」
「あら、余裕たっぷりなのね」
「ギャハッ、俺は杖使わなくたって魔法は使えるぜ?」

 背後から魔法が飛んでくる気配を感じたミアは振り向くと、同時に防御魔法で跳ね返されるのを目にする。ルークが防御魔法を掛けてくれたのだと分かると、ナルシスに足で退かされてしまい急いで体制を整えた。
「……ギャハハッ! 良いねえ、楽しいなあ~?」
 言葉通り楽しそうに笑うナルシスはミアの背後に現れ手をかざすが、ルークの魔法を避けるかの様にその場から姿を消すとミアとルークの周りを現れては消え、を繰り返しながら魔法を飛ばす。
 ミアとルークは背中を合わせると、防御して攻撃してを繰り返し対応した。
「……このままじゃ、埒が明かないな」
チェーンで締め上げて、石にするのが早いんだけど……。動きが速いわね」
 ミアとルークはどう捕まえるか考えていたが、急に現れた死の使いスノードロップ達に驚きを隠せずにいた。
「俺1人だと思ったか? ギャハハッ! 残念でした~! 仲間もちゃーんと、居るぜ?」
 ミア達は黒い服に身を包んだ闇の魔法使い達に囲まれ、見渡すと眉を寄せたのだった。
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