魔女の喫茶店

たからだから

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――警察殺し編――

魔女の居ない喫茶店

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 ギルはカウンターテーブルに並べられた2つのコースターにグラスを乗せた。
 カーテンは閉められ、スカーレットの営業はここ数日していなかった。ギルは最初こそ、ミアの為に営業しようと考えたものの、何も手が付けれず諦めた。
 ミアが執行部に連行されてから6日が経っていた。面会は勿論出来ず、裁判の日付だけ知らせると書いてある手紙が届いてからは音沙汰無しだ。
「……魔法政府も動揺を隠せてないよ。急にミアを裁判に掛けるなんて言い始めたから」
 エミリアは俯いたまま話すと、いつもの笑顔は消え去っていた。親友のミアを心配しては、関係者の1人と数えられ暫く職場への出勤を禁止されてしまった。
「しかし、魔法大統領ではなく執行部の独断行動だろ? ……どう考えてもオブリの力が働いているな」
 ルークはグラスに口を付けてはいつも以上に鋭くなった目をエミリアに向けては、ルークもエミリアと同じ理由で出勤禁止命令が出ていた。
 関係者と言うが詳細は何も聞かされておらず、ナルシスの裁判よりも優先する事なのかと溜息を零す。
「最初は魔法大統領も何故か、って抗議してたんだけど急に裁判の許可をしたの。……多分、あらぬ疑いを掛けられてるんじゃないかな……」

 ギルは作業台に置いた新聞を手に取ると、魔法新聞と書かれたノーマジとは違う新聞をである。
 大きな見出しは【魔女裁判決定】と書かれてあり、ミアの写真が大きく載っていた。
 詳しい内容までは書いておらず、日付も未定だと記載されておりギルは思わず眉を寄せてしまう。
「……本来ナルシスの後に裁判だろ。このままだとアイツ、やってもない罪で地獄の檻行きだぞ?」
「何とか心を聴けた人が居たんだけど、ナルシスと共謀した事にしようとしてるみたいなんだよね。……それ以上は閉鎖術が強すぎて聴けなかった……ごめんね」
 今にも泣き出しそうなエミリアの肩を優しく叩くルークに、エミリアは顔を上げ力無く笑う。
 何故、力になって助けたい時に何も出来ないのだろうとエミリアは気分が落ち込んでしまっていた。同時に、心眼術をもっと強くしなければと決意したエミリアはグラスに口を付け、アイスコーヒーを喉に流し込んだ。

「店、本当は開きたいんだけどね~。……出来ないなあ。魔女が居ない喫茶店なんてスカーレットじゃないよ。……とても、寂しい気持ちだ」
「ミアに会いたい……」
「……落ち込んでても仕方がねえ。良いか、運が良い事に裁判自体は行けるんだ。……証言させてもらえるかは分からねえが、証拠を出すには1つだけ方法がある」
 ルークはグラスをコースターの上に置くと、真剣な表情で話す。2人、頼れる人物を知っている。それはルークだけでは無く、ギルもエミリアも知っている人物だ。
「……方法?」
 エミリアは不思議そうに首を傾げるとルークは続けた。
「ああ、とある人物に頼む。……きっと、ミアの容疑を晴らし今回のオブリ家について明らかにしてくれる人だ」
「……ルークさん、連絡は取れたんですか?」
「いや、魔法政府に監視されていて迂闊には出せない。……だから、部下に頼んでおいた」
 話が通じている2人の様子にエミリアは困惑した様に、交互に顔を見ていた。
「え、待って、あたし分かんないんだけど……」
「エミリアちゃんもよーく、知ってる人だよ~」
「……ああ、とても頼りになる」
 エミリアは少し考えるとある2人の姿が脳裏に浮かんだ。納得した様に笑顔になると、エミリアは頼もしい2人ならば何とかなるのでは、と期待した。




 ――――
 ―――――――


 月明かりに照らされた店内にギルは1人静かにカウンターの椅子に座ったまま、昼間の出来事を思い出していた。
 新聞を見て心配して駆け付けてくれた常連に話をし、ミアは死の使いスノードロップで無い事を信じている言葉にギルは自然と笑みが零れていた。
 スカーレットの常連はミアの優しさと、温かさを知っている。だからこそ、彼女が闇に染まる事等無いと信じている。

 ギルはミアの笑顔を脳裏に浮かべると、静かな店内と自宅は寂しくミアの身が心配だった。
 珍しく足元に擦り寄ってくるオスカーを抱き上げると、小さく笑う。
「……君も寂しいのかい?……俺もだよ」
 素直に抱かれたままのオスカーの表情は、何処か寂しそうに見えた。

 魔法政府の一部は闇に染まっている。ミアの言う正義を貫ける人はどれくらい居るのだろうか、と考えては小さく息を吐き出す。
 ギルは正義を信じて突き進もうとするミアの後ろ姿が眩しく感じながらも、自分が思った通りの人物に笑みが零れる。
 学生時代からずっと好きだった彼女には、このまま闇に染まらず突き進んでほしい。例え、何があっても。
 交わってしまったのだから覚悟はしている。それが、ギルの信じた正義だから。
「……まだ、側に居ても良いよね。ごめんね、ミアちゃん」
 ギルはオスカーを膝の上に乗せると寂しそうに笑った。覚悟をしていても寂しく、側に居れば居る程欲が出てきてしまうのだ。困ったものだと、眉を下げて自分に呆れてしまう。
 愛する人を守る為ならば何にでもなれ、何でも出来るのだ。覚えていなくても、ギルは良かった。
 記憶を消した事も後悔はしていない。

「俺ってほんと、ミアちゃんにベタ惚れだなあ~。……オスカーもそう思うかい?」
「にゃーん」
 まるで返事をする様に鳴くオスカーに笑えば、優しく頭を撫でてやる。初めて膝の上に乗り、リラックスしている姿にギルは驚きながらも少し、嬉しかった。
「やっぱり、この喫茶店には魔女が居ないとダメだねえ」
 小さく呟いた言葉に反応する者は誰も、居なかった。静かな店内にはプラチナブロンドを輝かせた色男と猫だけだった。
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