44 / 48
――警察殺し編――
魔女の居ない喫茶店
しおりを挟む
ギルはカウンターテーブルに並べられた2つのコースターにグラスを乗せた。
カーテンは閉められ、スカーレットの営業はここ数日していなかった。ギルは最初こそ、ミアの為に営業しようと考えたものの、何も手が付けれず諦めた。
ミアが執行部に連行されてから6日が経っていた。面会は勿論出来ず、裁判の日付だけ知らせると書いてある手紙が届いてからは音沙汰無しだ。
「……魔法政府も動揺を隠せてないよ。急にミアを裁判に掛けるなんて言い始めたから」
エミリアは俯いたまま話すと、いつもの笑顔は消え去っていた。親友のミアを心配しては、関係者の1人と数えられ暫く職場への出勤を禁止されてしまった。
「しかし、魔法大統領ではなく執行部の独断行動だろ? ……どう考えてもオブリの力が働いているな」
ルークはグラスに口を付けてはいつも以上に鋭くなった目をエミリアに向けては、ルークもエミリアと同じ理由で出勤禁止命令が出ていた。
関係者と言うが詳細は何も聞かされておらず、ナルシスの裁判よりも優先する事なのかと溜息を零す。
「最初は魔法大統領も何故か、って抗議してたんだけど急に裁判の許可をしたの。……多分、あらぬ疑いを掛けられてるんじゃないかな……」
ギルは作業台に置いた新聞を手に取ると、魔法新聞と書かれたノーマジとは違う新聞をである。
大きな見出しは【魔女裁判決定】と書かれてあり、ミアの写真が大きく載っていた。
詳しい内容までは書いておらず、日付も未定だと記載されておりギルは思わず眉を寄せてしまう。
「……本来ナルシスの後に裁判だろ。このままだとアイツ、やってもない罪で地獄の檻行きだぞ?」
「何とか心を聴けた人が居たんだけど、ナルシスと共謀した事にしようとしてるみたいなんだよね。……それ以上は閉鎖術が強すぎて聴けなかった……ごめんね」
今にも泣き出しそうなエミリアの肩を優しく叩くルークに、エミリアは顔を上げ力無く笑う。
何故、力になって助けたい時に何も出来ないのだろうとエミリアは気分が落ち込んでしまっていた。同時に、心眼術をもっと強くしなければと決意したエミリアはグラスに口を付け、アイスコーヒーを喉に流し込んだ。
「店、本当は開きたいんだけどね~。……出来ないなあ。魔女が居ない喫茶店なんてスカーレットじゃないよ。……とても、寂しい気持ちだ」
「ミアに会いたい……」
「……落ち込んでても仕方がねえ。良いか、運が良い事に裁判自体は行けるんだ。……証言させてもらえるかは分からねえが、証拠を出すには1つだけ方法がある」
ルークはグラスをコースターの上に置くと、真剣な表情で話す。2人、頼れる人物を知っている。それはルークだけでは無く、ギルもエミリアも知っている人物だ。
「……方法?」
エミリアは不思議そうに首を傾げるとルークは続けた。
「ああ、とある人物に頼む。……きっと、ミアの容疑を晴らし今回のオブリ家について明らかにしてくれる人だ」
「……ルークさん、連絡は取れたんですか?」
「いや、魔法政府に監視されていて迂闊には出せない。……だから、部下に頼んでおいた」
話が通じている2人の様子にエミリアは困惑した様に、交互に顔を見ていた。
「え、待って、あたし分かんないんだけど……」
「エミリアちゃんもよーく、知ってる人だよ~」
「……ああ、とても頼りになる」
エミリアは少し考えるとある2人の姿が脳裏に浮かんだ。納得した様に笑顔になると、エミリアは頼もしい2人ならば何とかなるのでは、と期待した。
――――
―――――――
月明かりに照らされた店内にギルは1人静かにカウンターの椅子に座ったまま、昼間の出来事を思い出していた。
新聞を見て心配して駆け付けてくれた常連に話をし、ミアは死の使いで無い事を信じている言葉にギルは自然と笑みが零れていた。
スカーレットの常連はミアの優しさと、温かさを知っている。だからこそ、彼女が闇に染まる事等無いと信じている。
ギルはミアの笑顔を脳裏に浮かべると、静かな店内と自宅は寂しくミアの身が心配だった。
珍しく足元に擦り寄ってくるオスカーを抱き上げると、小さく笑う。
「……君も寂しいのかい?……俺もだよ」
素直に抱かれたままのオスカーの表情は、何処か寂しそうに見えた。
魔法政府の一部は闇に染まっている。ミアの言う正義を貫ける人はどれくらい居るのだろうか、と考えては小さく息を吐き出す。
ギルは正義を信じて突き進もうとするミアの後ろ姿が眩しく感じながらも、自分が思った通りの人物に笑みが零れる。
学生時代からずっと好きだった彼女には、このまま闇に染まらず突き進んでほしい。例え、何があっても。
交わってしまったのだから覚悟はしている。それが、ギルの信じた正義だから。
「……まだ、側に居ても良いよね。ごめんね、ミアちゃん」
ギルはオスカーを膝の上に乗せると寂しそうに笑った。覚悟をしていても寂しく、側に居れば居る程欲が出てきてしまうのだ。困ったものだと、眉を下げて自分に呆れてしまう。
愛する人を守る為ならば何にでもなれ、何でも出来るのだ。覚えていなくても、ギルは良かった。
記憶を消した事も後悔はしていない。
「俺ってほんと、ミアちゃんにベタ惚れだなあ~。……オスカーもそう思うかい?」
「にゃーん」
まるで返事をする様に鳴くオスカーに笑えば、優しく頭を撫でてやる。初めて膝の上に乗り、リラックスしている姿にギルは驚きながらも少し、嬉しかった。
「やっぱり、この喫茶店には魔女が居ないとダメだねえ」
小さく呟いた言葉に反応する者は誰も、居なかった。静かな店内にはプラチナブロンドを輝かせた色男と猫だけだった。
カーテンは閉められ、スカーレットの営業はここ数日していなかった。ギルは最初こそ、ミアの為に営業しようと考えたものの、何も手が付けれず諦めた。
ミアが執行部に連行されてから6日が経っていた。面会は勿論出来ず、裁判の日付だけ知らせると書いてある手紙が届いてからは音沙汰無しだ。
「……魔法政府も動揺を隠せてないよ。急にミアを裁判に掛けるなんて言い始めたから」
エミリアは俯いたまま話すと、いつもの笑顔は消え去っていた。親友のミアを心配しては、関係者の1人と数えられ暫く職場への出勤を禁止されてしまった。
「しかし、魔法大統領ではなく執行部の独断行動だろ? ……どう考えてもオブリの力が働いているな」
ルークはグラスに口を付けてはいつも以上に鋭くなった目をエミリアに向けては、ルークもエミリアと同じ理由で出勤禁止命令が出ていた。
関係者と言うが詳細は何も聞かされておらず、ナルシスの裁判よりも優先する事なのかと溜息を零す。
「最初は魔法大統領も何故か、って抗議してたんだけど急に裁判の許可をしたの。……多分、あらぬ疑いを掛けられてるんじゃないかな……」
ギルは作業台に置いた新聞を手に取ると、魔法新聞と書かれたノーマジとは違う新聞をである。
大きな見出しは【魔女裁判決定】と書かれてあり、ミアの写真が大きく載っていた。
詳しい内容までは書いておらず、日付も未定だと記載されておりギルは思わず眉を寄せてしまう。
「……本来ナルシスの後に裁判だろ。このままだとアイツ、やってもない罪で地獄の檻行きだぞ?」
「何とか心を聴けた人が居たんだけど、ナルシスと共謀した事にしようとしてるみたいなんだよね。……それ以上は閉鎖術が強すぎて聴けなかった……ごめんね」
今にも泣き出しそうなエミリアの肩を優しく叩くルークに、エミリアは顔を上げ力無く笑う。
何故、力になって助けたい時に何も出来ないのだろうとエミリアは気分が落ち込んでしまっていた。同時に、心眼術をもっと強くしなければと決意したエミリアはグラスに口を付け、アイスコーヒーを喉に流し込んだ。
「店、本当は開きたいんだけどね~。……出来ないなあ。魔女が居ない喫茶店なんてスカーレットじゃないよ。……とても、寂しい気持ちだ」
「ミアに会いたい……」
「……落ち込んでても仕方がねえ。良いか、運が良い事に裁判自体は行けるんだ。……証言させてもらえるかは分からねえが、証拠を出すには1つだけ方法がある」
ルークはグラスをコースターの上に置くと、真剣な表情で話す。2人、頼れる人物を知っている。それはルークだけでは無く、ギルもエミリアも知っている人物だ。
「……方法?」
エミリアは不思議そうに首を傾げるとルークは続けた。
「ああ、とある人物に頼む。……きっと、ミアの容疑を晴らし今回のオブリ家について明らかにしてくれる人だ」
「……ルークさん、連絡は取れたんですか?」
「いや、魔法政府に監視されていて迂闊には出せない。……だから、部下に頼んでおいた」
話が通じている2人の様子にエミリアは困惑した様に、交互に顔を見ていた。
「え、待って、あたし分かんないんだけど……」
「エミリアちゃんもよーく、知ってる人だよ~」
「……ああ、とても頼りになる」
エミリアは少し考えるとある2人の姿が脳裏に浮かんだ。納得した様に笑顔になると、エミリアは頼もしい2人ならば何とかなるのでは、と期待した。
――――
―――――――
月明かりに照らされた店内にギルは1人静かにカウンターの椅子に座ったまま、昼間の出来事を思い出していた。
新聞を見て心配して駆け付けてくれた常連に話をし、ミアは死の使いで無い事を信じている言葉にギルは自然と笑みが零れていた。
スカーレットの常連はミアの優しさと、温かさを知っている。だからこそ、彼女が闇に染まる事等無いと信じている。
ギルはミアの笑顔を脳裏に浮かべると、静かな店内と自宅は寂しくミアの身が心配だった。
珍しく足元に擦り寄ってくるオスカーを抱き上げると、小さく笑う。
「……君も寂しいのかい?……俺もだよ」
素直に抱かれたままのオスカーの表情は、何処か寂しそうに見えた。
魔法政府の一部は闇に染まっている。ミアの言う正義を貫ける人はどれくらい居るのだろうか、と考えては小さく息を吐き出す。
ギルは正義を信じて突き進もうとするミアの後ろ姿が眩しく感じながらも、自分が思った通りの人物に笑みが零れる。
学生時代からずっと好きだった彼女には、このまま闇に染まらず突き進んでほしい。例え、何があっても。
交わってしまったのだから覚悟はしている。それが、ギルの信じた正義だから。
「……まだ、側に居ても良いよね。ごめんね、ミアちゃん」
ギルはオスカーを膝の上に乗せると寂しそうに笑った。覚悟をしていても寂しく、側に居れば居る程欲が出てきてしまうのだ。困ったものだと、眉を下げて自分に呆れてしまう。
愛する人を守る為ならば何にでもなれ、何でも出来るのだ。覚えていなくても、ギルは良かった。
記憶を消した事も後悔はしていない。
「俺ってほんと、ミアちゃんにベタ惚れだなあ~。……オスカーもそう思うかい?」
「にゃーん」
まるで返事をする様に鳴くオスカーに笑えば、優しく頭を撫でてやる。初めて膝の上に乗り、リラックスしている姿にギルは驚きながらも少し、嬉しかった。
「やっぱり、この喫茶店には魔女が居ないとダメだねえ」
小さく呟いた言葉に反応する者は誰も、居なかった。静かな店内にはプラチナブロンドを輝かせた色男と猫だけだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
年増令嬢と記憶喪失
くきの助
恋愛
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」
そう言って思い切りローズを突き飛ばしてきたのは今日夫となったばかりのエリックである。
ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。
「吐き気がする!」と言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。
年増か……仕方がない……。
なぜなら彼は5才も年下。加えて付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。
次の日事故で頭を強く打ち記憶が混濁したのを記憶喪失と間違われた。
なんとか誤解と言おうとするも、今までとは違う彼の態度になかなか言い出せず……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる