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 当て書き

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「あのさぁ」
と佐々木史朗が言うので
「はい」
と吉田郷太が応える。


「何年か前にさぁ」
「はい」
「本屋でさぁ、騙し絵のキバって小説置いててさぁ」
「ああっ、はい、ありましたねぇ」
「読んでないんだけどさぁ」
「俺、映画観ましたよ」
「俺、歴史小説以外、殆ど読まないからさぁ」
「そうですね」
 苦笑しながら吉田が頷く。

「まぁ、読んでないんだけどさぁ」
「はい、読んでないけど」
「表紙が大泉さんでさぁ」
「そうですね」
「最初から主人公は大泉さんがイメージで」
「はいはいはい」
「当て書きっていうの?大泉洋イメージの主人公なのね」
「はい、そうですね、そうでしたね」


「でね」
「はい」
「もし俺が小説家なら、大泉さんを当て書きで、どんな小説を書くかなって考えたの」
「ハハハハハハッ、何で?」
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