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宇佐美定満
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景虎は、ジッと宇佐美駿河守定満を見つめる。
年は父の為景と、あまり変わらないはずだ。
しかし景虎の記憶に唯一ある、大きな手の為景に対し、小柄で痩せている。
お世辞にも、強そうには見えない。
だが為景を打ち負かし、隠居まで追い込んだ男だ。
為景の専横を快く思わなかった越後守護上杉定実が頼ったのが、越後一の知恵者、切れ者宇駿と呼ばれる、宇佐美定満である。
定実は密かに定満を呼び、為景をなんとかする様に命じた。
定満は動いた。しかし密かにである。
為景は戦さ上手だ。その為景に、正面切って戦さを仕掛ける事は無い。
戦さ上手の為景だが、その父の能景と違い、国衆たちにそれほど人望は無い。
むしろ国衆たちの中には、為景を憎んでいる者も多い。
為景が、黒田秀忠など側近を重用し、彼らに領地を与えたり、名族の家を継がせたりしているからである。
そこに目を付け、定満は国衆たちを説いて回って行く。
定満が切れ者なのは、それだけでは無い。
為景も愚か者では無い。定実が自分に不満なのは知っている。
そこで定満は、定実の弟の、上条定憲を使う。
日頃から定憲に、為景への不満を、国衆たちに行って回ると言う事をさせたのだ。
当然、為景は定憲に目を光らせる。
定憲が国衆たちを率い、自分を攻めてくるのではと、警戒させたのだ。
その隙に定満は国衆をまとめ上げ、為景を攻撃。隠居に追い込む。
「お父上に・・・・・」
目を細め、景虎の顔を眺めながら、定満は呟く。
「似ておりますなぁ」
そう・・・ですか、と答えて、己の頬を景虎は撫でる。
父の顔は、よく憶えていない。
周りの者も、あまりそう言わないので、それほど似ていないのだろうと思っていた。
「顔はそこまでではありませぬが・・・・」
ニコリと微笑み、定満は続ける。
「心根が似ております」
そんですか、と今度は強く景虎は頷く。
「ええ、勇猛果敢で気概があり」
そして・・・・とニヤリと笑い、定満が告げる。
「愚かだ」
「・・・・・それがしは愚かですか?」
「ええ、愚かです」
笑顔のまま、定満は頷く。
「私めが首を刎ね、兄上に献上するとは思わなかったのですか?」
くくくっ、と景虎は苦笑する。
「兄の事を、あま利ご存知ないようだ」
「というと?」
定満が首を傾げる。
「それがしの首を献上しても、褒美は出すでしょうが、駿河守どのを重く用いる事は無いでしょう」
ほぉ、と定満は呟く。
「兄は駿河守どのの様な、優れて、そして油断ならない人物を、受け入れる人ではありませぬよ」
ふふふっ、と定満は笑い、景虎に尋ねる。
「では平三どのは、どうですか?」
「それがしは・・・・・」
ジッと景虎は、定満を見つめる。
「毒にも薬にもならぬ者などに、興味無いです」
ほほぉ、定満は声を上げる。
定満は景虎の用件を見抜いていた。しかしそれに景虎驚かない。
むしろそのくらいの事も分からない者に、力を借りる気はない。
分かりました、と定満は頷く。
「この宇佐美駿河守定満」
ゆっくりと定満は頭を下げる。
「謀叛のお手伝いをいたしましょう」
ニヤリと景虎は微笑み、
「宜しくお願い致す」
と頭を下げる。
年は父の為景と、あまり変わらないはずだ。
しかし景虎の記憶に唯一ある、大きな手の為景に対し、小柄で痩せている。
お世辞にも、強そうには見えない。
だが為景を打ち負かし、隠居まで追い込んだ男だ。
為景の専横を快く思わなかった越後守護上杉定実が頼ったのが、越後一の知恵者、切れ者宇駿と呼ばれる、宇佐美定満である。
定実は密かに定満を呼び、為景をなんとかする様に命じた。
定満は動いた。しかし密かにである。
為景は戦さ上手だ。その為景に、正面切って戦さを仕掛ける事は無い。
戦さ上手の為景だが、その父の能景と違い、国衆たちにそれほど人望は無い。
むしろ国衆たちの中には、為景を憎んでいる者も多い。
為景が、黒田秀忠など側近を重用し、彼らに領地を与えたり、名族の家を継がせたりしているからである。
そこに目を付け、定満は国衆たちを説いて回って行く。
定満が切れ者なのは、それだけでは無い。
為景も愚か者では無い。定実が自分に不満なのは知っている。
そこで定満は、定実の弟の、上条定憲を使う。
日頃から定憲に、為景への不満を、国衆たちに行って回ると言う事をさせたのだ。
当然、為景は定憲に目を光らせる。
定憲が国衆たちを率い、自分を攻めてくるのではと、警戒させたのだ。
その隙に定満は国衆をまとめ上げ、為景を攻撃。隠居に追い込む。
「お父上に・・・・・」
目を細め、景虎の顔を眺めながら、定満は呟く。
「似ておりますなぁ」
そう・・・ですか、と答えて、己の頬を景虎は撫でる。
父の顔は、よく憶えていない。
周りの者も、あまりそう言わないので、それほど似ていないのだろうと思っていた。
「顔はそこまでではありませぬが・・・・」
ニコリと微笑み、定満は続ける。
「心根が似ております」
そんですか、と今度は強く景虎は頷く。
「ええ、勇猛果敢で気概があり」
そして・・・・とニヤリと笑い、定満が告げる。
「愚かだ」
「・・・・・それがしは愚かですか?」
「ええ、愚かです」
笑顔のまま、定満は頷く。
「私めが首を刎ね、兄上に献上するとは思わなかったのですか?」
くくくっ、と景虎は苦笑する。
「兄の事を、あま利ご存知ないようだ」
「というと?」
定満が首を傾げる。
「それがしの首を献上しても、褒美は出すでしょうが、駿河守どのを重く用いる事は無いでしょう」
ほぉ、と定満は呟く。
「兄は駿河守どのの様な、優れて、そして油断ならない人物を、受け入れる人ではありませぬよ」
ふふふっ、と定満は笑い、景虎に尋ねる。
「では平三どのは、どうですか?」
「それがしは・・・・・」
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むしろそのくらいの事も分からない者に、力を借りる気はない。
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「この宇佐美駿河守定満」
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「宜しくお願い致す」
と頭を下げる。
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