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 典型的な普通の人

 みんな自分を、ドラマの主人公だと思う

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「でね」
「はい」
「俺が言いたいのは」
「先輩が、言いたいのは」
「俺が本当に言いたい事は」
「はい、本当に言いたいことは」
 苦笑しながら吉田が応える。

「ドラマとか映画とかでさぁ」
 佐々木が指を回す。
「主人公がさぁ、自分は繊細で純粋で、気を使って、まぁそういうキャラで」
「はい」
「周りの人間は鈍感で、図々しくて、自分勝手で、ガサツでみたいな話じゃん」
「まぁモノにもよりますけど、そういうのもありますよね」

「それでみんな自分を主人公だと思って、織田裕二を、阿部サダオを自分だと思うわけじゃん」
「織田裕二、はい、織田裕二」
「で、八嶋智人や温水さんの嫌なヤツを、誰かに、自分の周りの誰かにあたはめるわけじゃん」
「はいはい、そうですね、それがドラマですから」
「でも、あたはめられ相手も、自分を織田裕二だと思ってるわけじゃん」
「そうですね」


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