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第2章 働かざるもの食うべからず
4リアムの家で
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イケメンなだけに冷酷さが3割がた増しているようにも感じる青白いアルベルトの腕にすがりつき私は叫ぶ・・
「アルベルトぉぉ~!あなたの婚約者のリサです。あなたを信じてここに来たリサです。私を愛していると言って下さい」
そんな私を、煩わしそうに払い除けたアルベルト皇太子殿下は冷たく言い放った。
「リサ?そんな名前は聞いたこともないわ・・皇太子の婚約者を語るなど、厚かましいにもほどがある・・さっさと目障りな女を追い出すのだ」
見たこともないような恐ろしい顔でアルベルト皇太子殿下が言っている。
「あ~っ!!助けて!」
私はショックと恐怖のどん底で叫んだ・・・と思った・・その時だった。
ドンドンドン・・
ドアを叩く音がしたかと思うと、
「リサ!!リサ!!朝だ!何時だと思っている?いい加減に起きてこい!」
けたたましく私の名前を連呼する声がして私は目覚めたのだった。
気がつくとすでに食べ物の香りがする・・もしかして、これは朝食の香り?そうそう、昨日私はとんでもない不幸のどん底に突き落とされたのだ。けれど、捨てる神あれば拾う神在りとはよく言ったもので、私に寝る場所とそして心を励ましてくれる料理まで作ってくれるよき人に巡り合ったのだったっけ。
「は~い」
そう返事だけはしたものの、身体がまだついてきていない。ううう・・目が腫れぼったい気がする・・昨日の晩は思い切り泣いたからなぁ。おかげで頭の芯が少しまだ痛い。身体を起こそうとして、思わず悲鳴を上げそうになる・・
「あ、イタタタ・・・」
そうだ・・昨日、ひったくりを追いかけて、いきなり全力疾走したんだった。これは筋肉痛だ。堪えるぅ・・。しかし、のろのろしていて、おばあちゃんに追い出されたら大変だ。痛みを堪えて、大急ぎでエプロンを着けた私は、ドアを開けた。
すると、そこには、しかっめつらをしたリアムが立っていた。
「すみません。明日からはもう少し早く起きます」
私の謝罪の言葉をサラリと聞き流し、リアムはうんざりしたような表情で言った。
「おまえ、どんな悪夢を見たかは知らないが、随分うなされていたようだな。ドアの外まで叫び声が聞こえたぞ。ほんとうに手のかかるやつだ。さっさと、台所に行け」
前言撤回・・よき人に巡り合ったの下りは、訂正・・料理は美味しかったけど、口は悪い。
慌てて台所に走った私は、テーブルに座っているおばあちゃんに丁寧にお辞儀をしてから挨拶をした。
「お、おはようございます」
「ごゆっくりなお目覚めだねぇ。枕が変わってもそれくらい図太く眠れるくらいの神経がちょうどいいねぇ」
おばあちゃんが皮肉たっぷりに言った。
「ごめんなさい。明日からは早く起きて働きます」
「まあ、いい。お前はリアムからは料理もまともにできないし、おそらく家事はやったことなさそうだと聞いている。だが、ちょっと、お前さんは面白い力を持っていそうだね。黒猫を連れていたり、他にもお客さんを呼び込んでいるようだしね・・ふふふ・・」
「おばあちゃんは、黒猫が見えるんですか?」
「あれ?そんなこと言ったかね。ふふふ・・」
なんだか すっとぼけていて、何を考えているかわからないところが不気味なおばあさんだ。でも、まあ、私のことを働けないとけなしている割には、今日のおばあちゃんの機嫌はそんなに悪くはなさそうだった。それ幸いと、私はリアムのところに行き、すでに出来上がった朝食をテーブルに運ぶ手伝いをし始めた。
朝食は、サラダとパンと目玉焼きが盛られた皿と昨晩のスープがカップに注がれていた。3人で静かに朝食を取った後はリアムがコーヒを入れてくれた。おばあさんが、美味しそうにコーヒーを口に含んで言った。
「リアムのコーヒは、世界一美味しいねぇ。安物の豆でもたちまち美味しく香ばしくしてしまうねぇ」
と目を細めながら言った。私も同感だった。料理も美味しいけれど、コーヒーも最高に美味しい。リアムの料理人としての腕は一流だと思った。
「おまえさん、名前はなんと言ったかな」
「はい、リサです」
「リサ、これから皿の片付けが終わったら私の仕事場においで」
おばあさんがそう言うと、リアムがちょっとふてくされたように言った。
「ばあちゃん、めずらしいなぁ。俺がばあちゃんの仕事場に行くのは駄目だと言っているのに、リサはいいんだな」
「まあまあ・・そこのところはいろいろある。リアムにはリアムにしかできない仕事があるさ。人には人それぞれの特性があるのでね。ふふふ・・」
「まあ、ばあちゃんにも何か考えがあるんだな・・」
リアムは納得したという風ではなかったが、絶対的に力関係ではおばあちゃんのほうが上なのは明らかで、無理やり納得したようだった。
「リサ、分かったね」
「はい」
私は返事しながら、リアムが立入禁止のおばあちゃんの仕事と言うのが何なのか・・・怖いもの見たさ・・もあってワクワクしてきたのだった。
「アルベルトぉぉ~!あなたの婚約者のリサです。あなたを信じてここに来たリサです。私を愛していると言って下さい」
そんな私を、煩わしそうに払い除けたアルベルト皇太子殿下は冷たく言い放った。
「リサ?そんな名前は聞いたこともないわ・・皇太子の婚約者を語るなど、厚かましいにもほどがある・・さっさと目障りな女を追い出すのだ」
見たこともないような恐ろしい顔でアルベルト皇太子殿下が言っている。
「あ~っ!!助けて!」
私はショックと恐怖のどん底で叫んだ・・・と思った・・その時だった。
ドンドンドン・・
ドアを叩く音がしたかと思うと、
「リサ!!リサ!!朝だ!何時だと思っている?いい加減に起きてこい!」
けたたましく私の名前を連呼する声がして私は目覚めたのだった。
気がつくとすでに食べ物の香りがする・・もしかして、これは朝食の香り?そうそう、昨日私はとんでもない不幸のどん底に突き落とされたのだ。けれど、捨てる神あれば拾う神在りとはよく言ったもので、私に寝る場所とそして心を励ましてくれる料理まで作ってくれるよき人に巡り合ったのだったっけ。
「は~い」
そう返事だけはしたものの、身体がまだついてきていない。ううう・・目が腫れぼったい気がする・・昨日の晩は思い切り泣いたからなぁ。おかげで頭の芯が少しまだ痛い。身体を起こそうとして、思わず悲鳴を上げそうになる・・
「あ、イタタタ・・・」
そうだ・・昨日、ひったくりを追いかけて、いきなり全力疾走したんだった。これは筋肉痛だ。堪えるぅ・・。しかし、のろのろしていて、おばあちゃんに追い出されたら大変だ。痛みを堪えて、大急ぎでエプロンを着けた私は、ドアを開けた。
すると、そこには、しかっめつらをしたリアムが立っていた。
「すみません。明日からはもう少し早く起きます」
私の謝罪の言葉をサラリと聞き流し、リアムはうんざりしたような表情で言った。
「おまえ、どんな悪夢を見たかは知らないが、随分うなされていたようだな。ドアの外まで叫び声が聞こえたぞ。ほんとうに手のかかるやつだ。さっさと、台所に行け」
前言撤回・・よき人に巡り合ったの下りは、訂正・・料理は美味しかったけど、口は悪い。
慌てて台所に走った私は、テーブルに座っているおばあちゃんに丁寧にお辞儀をしてから挨拶をした。
「お、おはようございます」
「ごゆっくりなお目覚めだねぇ。枕が変わってもそれくらい図太く眠れるくらいの神経がちょうどいいねぇ」
おばあちゃんが皮肉たっぷりに言った。
「ごめんなさい。明日からは早く起きて働きます」
「まあ、いい。お前はリアムからは料理もまともにできないし、おそらく家事はやったことなさそうだと聞いている。だが、ちょっと、お前さんは面白い力を持っていそうだね。黒猫を連れていたり、他にもお客さんを呼び込んでいるようだしね・・ふふふ・・」
「おばあちゃんは、黒猫が見えるんですか?」
「あれ?そんなこと言ったかね。ふふふ・・」
なんだか すっとぼけていて、何を考えているかわからないところが不気味なおばあさんだ。でも、まあ、私のことを働けないとけなしている割には、今日のおばあちゃんの機嫌はそんなに悪くはなさそうだった。それ幸いと、私はリアムのところに行き、すでに出来上がった朝食をテーブルに運ぶ手伝いをし始めた。
朝食は、サラダとパンと目玉焼きが盛られた皿と昨晩のスープがカップに注がれていた。3人で静かに朝食を取った後はリアムがコーヒを入れてくれた。おばあさんが、美味しそうにコーヒーを口に含んで言った。
「リアムのコーヒは、世界一美味しいねぇ。安物の豆でもたちまち美味しく香ばしくしてしまうねぇ」
と目を細めながら言った。私も同感だった。料理も美味しいけれど、コーヒーも最高に美味しい。リアムの料理人としての腕は一流だと思った。
「おまえさん、名前はなんと言ったかな」
「はい、リサです」
「リサ、これから皿の片付けが終わったら私の仕事場においで」
おばあさんがそう言うと、リアムがちょっとふてくされたように言った。
「ばあちゃん、めずらしいなぁ。俺がばあちゃんの仕事場に行くのは駄目だと言っているのに、リサはいいんだな」
「まあまあ・・そこのところはいろいろある。リアムにはリアムにしかできない仕事があるさ。人には人それぞれの特性があるのでね。ふふふ・・」
「まあ、ばあちゃんにも何か考えがあるんだな・・」
リアムは納得したという風ではなかったが、絶対的に力関係ではおばあちゃんのほうが上なのは明らかで、無理やり納得したようだった。
「リサ、分かったね」
「はい」
私は返事しながら、リアムが立入禁止のおばあちゃんの仕事と言うのが何なのか・・・怖いもの見たさ・・もあってワクワクしてきたのだった。
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