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第二章 殿下、私のことはお好き?
3.ペパーミントティーとシフォンケーキ
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「馬車酔いとは、こちらの配慮が足りなかった。すまなかったね。ちょうどお茶も来たようだ。ゆっくりとお茶を楽しもう」
アルベルト皇太子殿下は気分を害した様子もなく、いつもの笑顔を浮かべていた。
「本当に、スミマセンでした。せっかくの機会を台無しにしてしまいました・・・」
期待に添えなかったことに心は傷んだままではあったが、ペパーミントの香りが漂ってきて鼻孔をくすぐる。
「う~ん、いい香り」
今日はペパーミントティーのようだ。ミントティーは気持ちのリフレッシュに効果があると聞いたことがある。殿下の心遣いが身に染みる。
ティーポットから湯気をたてながら注がれるお茶が、まっすぐカップに吸い込まれて行く様子に思わず見とれてしまう。
「どうぞ」
お腹がまさにティーポットと同じような曲線を描き、ハゲた頭がつるつるして光っている給仕のサントは、お茶をつぐ名人だ。見事と言うしかない。
「いただきます」
カップを持つとミントのスッキリとした香りが、私をうっとりさせる。口に含むとローズマリーもブレンドされていることに気がつく。本当にここのお茶は美味しい。
お茶を口にし、爽やかになった絶妙のタイミングで、メインのお菓子が運ばれてきた!
シフォンケーキだ!
15センチの高さに焼き上げられたシフォンケーキは中心角30度で切り分けられて白いお皿の上に横たわっている。その隣には真っ赤に熟した苺と生クリームがふわりと盛られている。クリームの上には緑のミントの葉が添えてある。食欲をそそる完璧な盛り付けだ。
両手を合わせ
「いただきます」
と言った私は、シフォンケーキにフォークを入れた。切り口が滑らか、かつ、柔らかい!ナイフで切り分けて口に入れる。空気をいっぱいに含みしっとりと焼き上げられたシフォンケーキはふわふわしていて、卵と小麦粉の焼けた芳ばしい香りと砂糖とはちみつの優しい甘さを残して口の中で溶けていく。
「最高!」
次はシフォンケーキに生クリームをたっぷりとつけて口に入れる。生クリームがあっさりとしたシフォンケーキを濃厚な味わいにし、ケーキの食感をより、滑らかにする。
「あ~っ!美味しい!!」
幸せいっぱいだ。
最後は苺、生クリーム、シフォンケーキを一緒に味わう。酸味の少ない甘い苺を使ってあるが、苺を噛むとじゅわっと甘酸っぱい果汁が溢れ、生クリームとケーキと融合していく。あっという間にお皿は空っぽになった。
「ごちそうさまでした」
手を合わせたところで、向かいに座る殿下のことに気づく。またもやってしまった。食べ物を目前にするとすべてを忘れ去ってしまう。殿下はこちらを見て微笑んでいるようだが、やはり恥ずかしい。
「シフォンケーキも気に入ってくれたようだね。よかった」
「は、は、はい。最高に美味しかったです」
その時、食堂のドアをノックする音が聞こえた。ウィリアムスだった。
「殿下、お伝えしたいことがあります」
「分かった。部屋まで来てくれ」
少しの時間ではあったが一緒に過ごした気安さから、私はウィリアムスの方を見ていたが、ウィリアムスは真剣な顔で殿下の方を見ていた。
「リサ、すまないが、私は用事ができたので先に失礼する」
「はい、分かりました」
食堂に一人残された私は、特に何をするでもなくて、2杯目のお茶を飲んだ。ふと殿下が座っていた場所に目をやると、シャノンと名乗った黒猫が、テーブルの上にチョコンと座り、背筋を伸ばし気取った様子でこちらを見ている。
「レイラ、猫がテーブルの上に!」
慌ててて私のそばに来たレイラは、テーブルの上を見回していたが、シャノンは見えていないようだった。
「リサ様、猫はいないようです」
「・・・」
「レイラ、私、部屋に戻ります」
「承知しました」
私以外の人には見えない、あの生意気な黒猫は一体何?私は部屋に帰って少し現状を整理して見ようと思った。
アルベルト皇太子殿下は気分を害した様子もなく、いつもの笑顔を浮かべていた。
「本当に、スミマセンでした。せっかくの機会を台無しにしてしまいました・・・」
期待に添えなかったことに心は傷んだままではあったが、ペパーミントの香りが漂ってきて鼻孔をくすぐる。
「う~ん、いい香り」
今日はペパーミントティーのようだ。ミントティーは気持ちのリフレッシュに効果があると聞いたことがある。殿下の心遣いが身に染みる。
ティーポットから湯気をたてながら注がれるお茶が、まっすぐカップに吸い込まれて行く様子に思わず見とれてしまう。
「どうぞ」
お腹がまさにティーポットと同じような曲線を描き、ハゲた頭がつるつるして光っている給仕のサントは、お茶をつぐ名人だ。見事と言うしかない。
「いただきます」
カップを持つとミントのスッキリとした香りが、私をうっとりさせる。口に含むとローズマリーもブレンドされていることに気がつく。本当にここのお茶は美味しい。
お茶を口にし、爽やかになった絶妙のタイミングで、メインのお菓子が運ばれてきた!
シフォンケーキだ!
15センチの高さに焼き上げられたシフォンケーキは中心角30度で切り分けられて白いお皿の上に横たわっている。その隣には真っ赤に熟した苺と生クリームがふわりと盛られている。クリームの上には緑のミントの葉が添えてある。食欲をそそる完璧な盛り付けだ。
両手を合わせ
「いただきます」
と言った私は、シフォンケーキにフォークを入れた。切り口が滑らか、かつ、柔らかい!ナイフで切り分けて口に入れる。空気をいっぱいに含みしっとりと焼き上げられたシフォンケーキはふわふわしていて、卵と小麦粉の焼けた芳ばしい香りと砂糖とはちみつの優しい甘さを残して口の中で溶けていく。
「最高!」
次はシフォンケーキに生クリームをたっぷりとつけて口に入れる。生クリームがあっさりとしたシフォンケーキを濃厚な味わいにし、ケーキの食感をより、滑らかにする。
「あ~っ!美味しい!!」
幸せいっぱいだ。
最後は苺、生クリーム、シフォンケーキを一緒に味わう。酸味の少ない甘い苺を使ってあるが、苺を噛むとじゅわっと甘酸っぱい果汁が溢れ、生クリームとケーキと融合していく。あっという間にお皿は空っぽになった。
「ごちそうさまでした」
手を合わせたところで、向かいに座る殿下のことに気づく。またもやってしまった。食べ物を目前にするとすべてを忘れ去ってしまう。殿下はこちらを見て微笑んでいるようだが、やはり恥ずかしい。
「シフォンケーキも気に入ってくれたようだね。よかった」
「は、は、はい。最高に美味しかったです」
その時、食堂のドアをノックする音が聞こえた。ウィリアムスだった。
「殿下、お伝えしたいことがあります」
「分かった。部屋まで来てくれ」
少しの時間ではあったが一緒に過ごした気安さから、私はウィリアムスの方を見ていたが、ウィリアムスは真剣な顔で殿下の方を見ていた。
「リサ、すまないが、私は用事ができたので先に失礼する」
「はい、分かりました」
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「レイラ、猫がテーブルの上に!」
慌ててて私のそばに来たレイラは、テーブルの上を見回していたが、シャノンは見えていないようだった。
「リサ様、猫はいないようです」
「・・・」
「レイラ、私、部屋に戻ります」
「承知しました」
私以外の人には見えない、あの生意気な黒猫は一体何?私は部屋に帰って少し現状を整理して見ようと思った。
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