異世界で皇太子妃になりましたが、何か?

黒豆ぷりん

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第三章 私のできること

12続続新たな一歩

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シャノンの言葉は、穏やかに続いていた。私はシャノンが私と言う身体を使ってアルベルト皇太子殿下やアイデン皇太子殿下に語りかけている声を、じっと静かに聞いていた。

「私は、アイデンやアルと過ごした幸せな時間を決して忘れることはないわ。二人には感謝してもしきれないくらいよ。なのに、事故のことで、アイデンもアルもそれぞれが、自分のことを責めたり、自分を苦しめたりしている。私は二人が築いていた友情が、そんなことで壊れてしまうことが悲しくて仕方がないの。私がいたことで、二人が傷つけあうことだけはしてほしくない。お願い・・・」

シャノンは穏やかだけれども、意思のはっきりした声で言った。

「シャノン、君は相変わらず素敵だ。今すぐにでも、この腕で君をぎゅって抱きしめたいたいよ・・」

アイデンはリサの肩に右手を置き、ポンポンしながら言った。

「でも、それはもう、叶わないことなんだな。」

そういうと、私の膝の上にいるシャノンの方を見ながら、ゆっくり殿下と私の間の椅子に腰を掛けた。

「そうね・・。私も残念だけれど・・」

シャノンは、きっとアイデンの方を見つめていたのだろう。けれど、アイデンとは視線は合わない現実は辛いだろうなと思った。その後、シャノンは努めて明るい声で続けた。

「私は2年前の二人が大好きだった。誰よりも二人が大切だった・・」

アイデンとアルベルトはお互いに顔を見合わせていた。アルベルトの胸はきゅっと締め付けられるようだった。そう、アルベルトは友だち以上の感情をずっと胸に秘めていた。けれど、アイデンには決して言えない気持ちだった。これからも、ずっと、胸に秘めて暮らし続けるのだろう。

「あなた達が、私の気持ちに、もし、応えてくれるのであれば・・・
2年前のように、アイデンもアルもお互いに切磋琢磨して、それぞれの国のために学んでほしいと思う。そして、以前のようにセントクリストファー王国とサルーン王国が友好関係を保ちながら、お互いの国がより豊かな国になるように協力したり、学びあえたり、貿易を交えたりできるようにしてほしい。それぞれが争うことなく、豊かに成長しあえるような国政をそれぞれに担ってほしいの。あなた達二人に・・・」

しばらく、アイデンもアルベルトも、シャノンの言葉をじっと考えているようだった。ゆったりと時間が流れた後、

「シャノンはやっぱり男前だな。君が男だったらよかった・・と思うよ」

アルベルトは冗談ともつかないことを口にしていた。

「妖精になれちゃったから私は、もう無敵かも・・」

シャノンが微笑みながら、軽い調子で言った。
「あなた達がいい加減なことしていたら、すぐにリサと一緒にお尻をたたくわよ・・・」

「こりゃ、参ったな」

アイデンは笑いながら言った。そして、真剣な顔になり、アルベルトの方を見た。

「アル、君には、とても悪いことをした。許してほしい。なんの落ち度もないことは分かっていたが、頭では理解していたが、ここが・・」

アルは胸をドンドンと叩いていた。
「気持ちが、シャノンの死を受け入れられなかったのだ。すまなかった」

そういうと、アルベルトに向かって深く頭を下げていた。

「君のせいではない。頭を上げてくれ。すべて僕自身の問題だったんだ。僕の方こそ、君に対して申し訳ないと思っているんだ」

そういうと、アルベルトはアイデンのそばに行き、右手を差し出した。
「握手?」
「そうだよ、もしかして僕が君を殴るとでも思ったか?」
「いいや」
と言いながら、アイデンはアルベルトにタックルするようにしてぶつかった。
「うっ!!何をするんだ!」
アルベルトも負けていなかった。
二人は、力任せにぶつかり、もつれ合っていた。

「はぁ・・もう、男二人って、めんどくさい」

シャノンはそう言うと、微笑みながら

「よかった」

と私にだけ聞こえるような声で言うと、のんびり私の膝の上で丸くなり、眼をつむった。私は丸くなったシャノンの背中をゆっくりと撫ぜていた。
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