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7 経費の攻防
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翌朝職場に行くと、セレスティアさんとライナスの空気が甘ったるく……なっているわけもなく、いつもと変わらなかった。
自分の席に着いて肩をすくめる。
せっかく二人っきりにしてあげたんだから、ライナスはセレスティアさんにもっとアピールをすればいいのに。こっそりと息を吐く。
ライナスの気持ちはダダ漏れだけど、セレスティアさんはライナスをどう思っているのかわからないんだよな。
仲はいいけれど、私と接する時と変わらないような気がするし。
ドアベルが鳴り、全員でそちらに目を向ける。
「みんなおはよう!」
体に比例するような大きな声で入ってきた三十代の男性は、オーナーのグラディオン・アーキス。
「「おはようございます」」
セレスティアさんとライナスが声を揃えて頭を下げる。
オーナーはドカリと音を立ててセレスティアさんの前に座った。オーナーが座ると、普通のイスが小さく見える。
「オーナーおはよ」
私はセレスティアさんの隣に移動して、食べたいお店をピックアップしたノートを開く。それをグッとオーナーの顔にくっつけるほど近付けた。
「オーナー、経費を上げて。1000ゼニーじゃ諦めなきゃいけない素敵なお店がいっぱいあるの」
「近すぎて見えん」
オーナーがノートを受け取って目を通してはページを捲っていく。
「よく調べているな」
「でしょ? だから上げてよ」
「不足分は自腹を切ればいいだろう」
「経費で食べるから、余計に美味しいんでしょ!」
頬を膨らますと、オーナーは苦笑して再び真剣な目つきでノートに目を落とす。
「ステラのオススメするお店、お客様からも評判がいいんですよ。ステラ、食べた物を書いたノートもお見せしたら?」
セレスティアさんが助け舟を出してくれて、私はもう一冊ノートを差し出した。
オーナーはそれを受け取って見比べる。
私は『経費を上げろ!』と念を込めてオーナーに視線を送る。
「ここ、美味そうだな。今度連れてってくれよ」
オーナーがノートを指差して、白い歯を見せて笑う。
「そのお店はめちゃくちゃオススメだけど、そうじゃないんだって!」
地団駄を踏んで、カウンターをバンバンと叩く。
……もうこうなったら色仕掛けしかないか。
小首を傾げて指を顎の下で組み、上目遣いでオーナーを見上げる。目をこれでもかというほど大きく開くけれど、目が乾くから諦めた。
「ねぇ、オーナー。経費を上げて。お願い」
猫撫で声を出すと、オーナーの顔から笑顔が消えた。スンと無表情になる。
「ちょっと! なんでそんな顔するの?」
「俺は妻一筋だから」
「それは知ってるけど、そんな反応しなくてもいいじゃん」
不満で口を尖らせる。
「あの、本当に評判いいんですよ。だから、検討してあげてくれませんか」
セレスティアさんが慌ててフォローしてくれて、後ろからライナスの大きなため息が聞こえた。
オーナーにノートを返される。
「上げないとは言っていない。ステラのノートを見て、俺も食べてみたいと思った店があった。お客様にも喜ばれるだろう」
顔をパッと明るくして、オーナーの言葉を待つ。
「とりあえず1500ゼニーにしてみるか」
「本当? オーナーありがとう!」
「上げるからには、お客様に勧める為に役立てろよ」
「もちろん!」
両手の拳を握って、グッと脇を締める。
500ゼニー上がるだけでも、選択肢がかなり増えた。
いろんなお店で食べて、お客様のニーズに合わせてお店をオススメできる。
「オーナー、お土産も経費になりませんか? ライナスが買ってきてくれるお土産もいつも美味しくて、お客様に伝えると喜んでいただけます」
セレスティアさんの言葉にオーナーは「うーん」と唸り声をあげてライナスへ視線を送る。
ライナスは手と首を振った。
「いえ、経費にしていただかなくて大丈夫です。セレスティアさんへのお土産は自分で買いたいので」
「じゃあ私に経費でお土産を買ってきなさいよ」
不満を漏らせば、ライナスがそっぽを向く。
「なんで僕がステラのためにお土産を選ばなきゃいけないんだ」
わざとらしく竦める肩と、盛大なため息がむかつく。
「じゃあこうするか。経費は一食1500ゼニーまで。土産も1500ゼニー。使う使わないはお前たち次第だ」
私は両手をあげて喜んだ。
「私もお土産買ってくる!」
オーナーは眉を下げて笑う。
「楽しむのはいいが、お客様のため、というのが前提だからな」
「わかってるって。お客様に喜んでもらえるように、いっぱい食べるね」
経費を上げてもらい、心が弾む。
食べたかったけれど諦めていた料理を、経費で食べることができる。
頭の中でお店をいくつか浮かべ、楽しみで仕方がない。
「じゃあ任せたからな。何かあったら連絡よこせよ」
オーナーはイスを軋ませながら立ち上がり、店を後にする。
奥さんと五歳の双子の娘と出かけるのだろう。後ろ姿がウキウキとしていた。
「もうすぐご旅行のお客様がいらっしゃるわ。二人ともよろしくね」
「任せてください!」
ライナスは背筋を伸ばして胸を張る。
「私も頑張ります」
今なら無限に転移魔法を使える気がする。実際は五回なんだけど。
すぐにお客様がいらして、三人揃って「いらっしゃいませ」と頭を下げた。
張り切って目的地まで案内した。
自分の席に着いて肩をすくめる。
せっかく二人っきりにしてあげたんだから、ライナスはセレスティアさんにもっとアピールをすればいいのに。こっそりと息を吐く。
ライナスの気持ちはダダ漏れだけど、セレスティアさんはライナスをどう思っているのかわからないんだよな。
仲はいいけれど、私と接する時と変わらないような気がするし。
ドアベルが鳴り、全員でそちらに目を向ける。
「みんなおはよう!」
体に比例するような大きな声で入ってきた三十代の男性は、オーナーのグラディオン・アーキス。
「「おはようございます」」
セレスティアさんとライナスが声を揃えて頭を下げる。
オーナーはドカリと音を立ててセレスティアさんの前に座った。オーナーが座ると、普通のイスが小さく見える。
「オーナーおはよ」
私はセレスティアさんの隣に移動して、食べたいお店をピックアップしたノートを開く。それをグッとオーナーの顔にくっつけるほど近付けた。
「オーナー、経費を上げて。1000ゼニーじゃ諦めなきゃいけない素敵なお店がいっぱいあるの」
「近すぎて見えん」
オーナーがノートを受け取って目を通してはページを捲っていく。
「よく調べているな」
「でしょ? だから上げてよ」
「不足分は自腹を切ればいいだろう」
「経費で食べるから、余計に美味しいんでしょ!」
頬を膨らますと、オーナーは苦笑して再び真剣な目つきでノートに目を落とす。
「ステラのオススメするお店、お客様からも評判がいいんですよ。ステラ、食べた物を書いたノートもお見せしたら?」
セレスティアさんが助け舟を出してくれて、私はもう一冊ノートを差し出した。
オーナーはそれを受け取って見比べる。
私は『経費を上げろ!』と念を込めてオーナーに視線を送る。
「ここ、美味そうだな。今度連れてってくれよ」
オーナーがノートを指差して、白い歯を見せて笑う。
「そのお店はめちゃくちゃオススメだけど、そうじゃないんだって!」
地団駄を踏んで、カウンターをバンバンと叩く。
……もうこうなったら色仕掛けしかないか。
小首を傾げて指を顎の下で組み、上目遣いでオーナーを見上げる。目をこれでもかというほど大きく開くけれど、目が乾くから諦めた。
「ねぇ、オーナー。経費を上げて。お願い」
猫撫で声を出すと、オーナーの顔から笑顔が消えた。スンと無表情になる。
「ちょっと! なんでそんな顔するの?」
「俺は妻一筋だから」
「それは知ってるけど、そんな反応しなくてもいいじゃん」
不満で口を尖らせる。
「あの、本当に評判いいんですよ。だから、検討してあげてくれませんか」
セレスティアさんが慌ててフォローしてくれて、後ろからライナスの大きなため息が聞こえた。
オーナーにノートを返される。
「上げないとは言っていない。ステラのノートを見て、俺も食べてみたいと思った店があった。お客様にも喜ばれるだろう」
顔をパッと明るくして、オーナーの言葉を待つ。
「とりあえず1500ゼニーにしてみるか」
「本当? オーナーありがとう!」
「上げるからには、お客様に勧める為に役立てろよ」
「もちろん!」
両手の拳を握って、グッと脇を締める。
500ゼニー上がるだけでも、選択肢がかなり増えた。
いろんなお店で食べて、お客様のニーズに合わせてお店をオススメできる。
「オーナー、お土産も経費になりませんか? ライナスが買ってきてくれるお土産もいつも美味しくて、お客様に伝えると喜んでいただけます」
セレスティアさんの言葉にオーナーは「うーん」と唸り声をあげてライナスへ視線を送る。
ライナスは手と首を振った。
「いえ、経費にしていただかなくて大丈夫です。セレスティアさんへのお土産は自分で買いたいので」
「じゃあ私に経費でお土産を買ってきなさいよ」
不満を漏らせば、ライナスがそっぽを向く。
「なんで僕がステラのためにお土産を選ばなきゃいけないんだ」
わざとらしく竦める肩と、盛大なため息がむかつく。
「じゃあこうするか。経費は一食1500ゼニーまで。土産も1500ゼニー。使う使わないはお前たち次第だ」
私は両手をあげて喜んだ。
「私もお土産買ってくる!」
オーナーは眉を下げて笑う。
「楽しむのはいいが、お客様のため、というのが前提だからな」
「わかってるって。お客様に喜んでもらえるように、いっぱい食べるね」
経費を上げてもらい、心が弾む。
食べたかったけれど諦めていた料理を、経費で食べることができる。
頭の中でお店をいくつか浮かべ、楽しみで仕方がない。
「じゃあ任せたからな。何かあったら連絡よこせよ」
オーナーはイスを軋ませながら立ち上がり、店を後にする。
奥さんと五歳の双子の娘と出かけるのだろう。後ろ姿がウキウキとしていた。
「もうすぐご旅行のお客様がいらっしゃるわ。二人ともよろしくね」
「任せてください!」
ライナスは背筋を伸ばして胸を張る。
「私も頑張ります」
今なら無限に転移魔法を使える気がする。実際は五回なんだけど。
すぐにお客様がいらして、三人揃って「いらっしゃいませ」と頭を下げた。
張り切って目的地まで案内した。
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