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20 人質
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「ステラさん、大丈夫ですか?」
フィンが駆け寄ってきて、縄を解いてくれる。
縄で擦れた手足に治癒魔法をかけてくれた。傷も痛みもなくなった。
オーナー、セレスティアさん、ライナスも集まってくる。
「何があった?」
オーナーに支えられて立ち上がる。
私はことのあらましを話した。
「オーナー、すぐにギルドか騎士団に連絡して。今から戻れば、全員捕まえられるかもしれない」
「わかった、ギルドに行ってくる。騎士団へはギルドマスターに話を通してもらう」
オーナーが勢いよく店を出て行った。
「無事に帰ってきてくれてよかった」
セレスティアさんに抱きしめられた。顔が肩に埋まり、そこが温かく濡れていく。
「ステラ、ギルド員と一緒に僕も連れて行ってくれ。僕もゲートを繋ぐ。そうすれば、後続のギルドか騎士団を連れていくことができる」
「わかった。フィンも着いてきて。ライナスがゲートを繋いでる間、ライナスを守って欲しい」
「わかりました。剣を取りに行ってきます」
フィンが店を飛び出す。隣のアパートだから、すぐに戻ってきた。
オーナーがギルド員を連れて帰ってくる。その中にレオンもいた。
「私の近くに集まって。すぐに向かう」
魔法陣が浮かび上がる。集中して転移魔法を発動させた。
先ほどまでいた部屋に転移できてホッとする。ギルド員たちが士気を高めるように雄叫びを上げ、扉を蹴破って部屋を飛び出す。
私はカーテンを開けて、窓から外を覗いた。
やっぱり王都だ。
マルデリの近くにある、一階がパン屋の建物の三階だろう。
「私は戻って、また連れてくるから」
「ああ、僕もゲートを繋げる」
ライナスが魔法陣を描き始めたのを確認して、フィンに目を向けた。
「ライナスのこと、守ってね」
「もちろんです。ステラさんも無理をしないでください」
フィンは心配そうに眉を下げる。
「ありがとう。それじゃあ戻るから」
転移魔法で再び店に戻る。
立て続けに三回も転移魔法を使ったから、頭が少しクラクラした。
一日に五回が限度だから、私が連れて行けるのはこれで最後。
セレスティアさんに場所を伝えると、十人くらいのギルド員は外から向かう、と駆けて行った。
もう少しだけ頑張らなきゃ。
ここに残っているギルド員が私の周りに集まる。
魔法陣が光を放つと、転移魔法が発動した。
目的の部屋に辿り着き、部屋の外から叫び声や金属がぶつかり合うような剣戟音が響いている。
ギルド員たちは次々に部屋を飛び出していった。
疲労から足がふらつき、フィンに支えられる。
「大丈夫ですか?」
「ちょっと疲れただけ」
「僕は戻る。ステラは休んでいろ。フィン、ステラを頼む」
「はい、任せてください」
ライナスが転移魔法を使い、部屋の中は私とフィンだけになる。
「ステラさんは俺の後ろにいてください。この部屋に入ってきた敵は倒しますので」
フィンが剣の柄を握り、扉の奥を睨みつける。
五分ほど経つと、扉が開いてフィンが剣を抜いた。
でも入ってきたのはギルド員二人で、一人が肩に腕を回して支えられている。
「こいつが怪我をしたから治して欲しい」
フィンは剣を鞘に収めた。
「はい、すぐに治します」
フィンが治癒魔法を使えるって知っているということは、レオンを助けた時にいた人なのだろう。
怪我をした人をイスに座らせると、フィンがその人の前で膝を突き、治癒魔法をかける。
怪我人を連れてきて人は私の方に歩いてきた。
フィンの代わりにこの人が守ってくれるのかな? なんて思っていたら、腕を掴まれて強い力で引っ張られる。背後から首元を太い腕でガッチリと拘束された。
反対の手にはナイフが握られており、冷たい金属が頬に触れて声すら上げることができない。
「お前、何してんだ!」
怪我が治った人が大声を上げ、こちらに背を向けていたフィンが振り返る。
驚愕に目を見張り、下唇を噛んだ。
ギルドに犯人の仲間がいるってわかっていたのに。仲間を助けるために戻ってきたんだと、完全に油断した。
「お嬢ちゃんの顔に傷をつけたくなきゃ、武器を捨てておとなしくしろ」
フィンたちが剣を私たちの足元に放る。私を拘束している人がそれを蹴り、剣は滑って壁に当たった。部屋の隅に二本の剣が落ちている。
「ステラさんを離せ。俺が代わりになるから」
フィンが普段とはかけ離れた低く重い声を出すが、私の後ろで男が嘲笑う。
「お前みたいな鍛えた男より、華奢なお嬢ちゃんの方が人質として楽なんだから、変えるわけねーだろ」
私は部屋を連れ出される。扉は閉められ、フィンたちと離された。
目の前ではギルドと犯人の激しい戦いが繰り広げられており、何人かが床に転がっている。
やっぱり犯人は六人ではなく、十人以上いたらしい。
「ギルドは今すぐに武器を捨てろ。このお嬢ちゃんがどうなってもいいのか?」
喧騒の中でも、よく通る声だった。
全員が動きを止めて、私たちに注目する。
ギルド員たちは仲間が私にナイフを突きつけていることに愕然としていた。
犯人たちがこちらに集まってくる。
私が捕まっていることで動けないギルド員の中にレオンもいた。視線が絡む。
私が最初に連れてこられたのはこの部屋だ。この部屋は、犯人のゲートがすでに繋がっている。
ここで転移魔法を使われたら、私はもう自力で逃げることはできない。
頬に触れているナイフの硬い感触に恐怖で視界が滲む。
嫌だ、怖い。でも、連れて行かれるのはもっと怖い。
瞼を下ろして呼吸を整える。
……大丈夫、刺されてもすぐにフィンが治してくれる。
奥歯を噛み締めて、瞼を持ち上げた。
レオンに向かって精一杯腕を伸ばす。
「レオン! 助けて、んぐ」
叫ぶと口を覆われた。
「ステラ!」
レオンが足を踏み出すけれど、犯人は腕を伸ばして、逆手に持ったナイフの先を私に向ける。
勢いよく刺される前に瞼をぎゅっと閉じて衝撃に耐えようとしたが、後ろから呻き声が聞こえて私を拘束する腕が解かれた。
足に力が入らなくて崩れ落ちそうになる体を、強い力で引かれた。
目を開けると、フィンの胸に顔を埋めていた。
フィンに片手でキツく抱きしめられる。
首を捻ると、フィンの剣がナイフを持っていた手に突き刺さっていた。
「怖い思いをさせて、すみません」
フィンの優しい声と体温がひどく落ち着いた。
私の無事を見届けて、ギルド員たちが再び武器を手に戦い始める。
「そこまでだ! おとなしく投降しろ」
白を基調に金糸の刺繍が施された隊服を着た騎士たちが扉を開く。
ライナスが連れてきてくれたんだ。
入口の方からも少し遅れて突入してきた。
セレスティアさんに場所を伝えておいてよかった。
人数で不利だと思ったのか、犯人たちは抵抗をしなかった。
だが、犯人たちの足元に魔法陣が浮かび上がる。
このまま逃げる気だ。
「その帽子を被っている男が転移魔法を使ってる。すぐに魔法陣の範囲から出して!」
私が叫ぶと、ギルドと騎士が犯人たちに一斉に攻撃を仕掛けた。
犯人たちは帽子の男を守ろうと盾になるが、人数差がありすぎて帽子の男は体を引っ張られて魔法陣の外に出る。
光っていた魔法陣が消えた。
「近くにいると転移魔法は使えるから、早くこの部屋から出して」
犯人たちは次々に拘束される。
帽子の男は魔法を制限されるブレスレットをはめられた。
どんな魔法でも使えなくなる。
これで逃げることはない。
安心したら腰が抜けたけれど、フィンに抱きしめられているから膝を折ることはなかった。
犯人たちが連れていかれたが、ライナスが後続の騎士を連れてきた。
「大丈夫か?」
ライナスが心配そうに声をかけてくる。
私はフィンの胸に手をついて腕を伸ばす。フィンの体が離れていった。
「フィンが助けてくれたから平気」
「でも、ステラさんを危険な目に合わせてしまいました。俺が怪我人に気を取られていたから」
「フィンのせいじゃない。私だって気付けなかった。犯人も捕まったし帰ろう。疲れちゃった」
フィンが駆け寄ってきて、縄を解いてくれる。
縄で擦れた手足に治癒魔法をかけてくれた。傷も痛みもなくなった。
オーナー、セレスティアさん、ライナスも集まってくる。
「何があった?」
オーナーに支えられて立ち上がる。
私はことのあらましを話した。
「オーナー、すぐにギルドか騎士団に連絡して。今から戻れば、全員捕まえられるかもしれない」
「わかった、ギルドに行ってくる。騎士団へはギルドマスターに話を通してもらう」
オーナーが勢いよく店を出て行った。
「無事に帰ってきてくれてよかった」
セレスティアさんに抱きしめられた。顔が肩に埋まり、そこが温かく濡れていく。
「ステラ、ギルド員と一緒に僕も連れて行ってくれ。僕もゲートを繋ぐ。そうすれば、後続のギルドか騎士団を連れていくことができる」
「わかった。フィンも着いてきて。ライナスがゲートを繋いでる間、ライナスを守って欲しい」
「わかりました。剣を取りに行ってきます」
フィンが店を飛び出す。隣のアパートだから、すぐに戻ってきた。
オーナーがギルド員を連れて帰ってくる。その中にレオンもいた。
「私の近くに集まって。すぐに向かう」
魔法陣が浮かび上がる。集中して転移魔法を発動させた。
先ほどまでいた部屋に転移できてホッとする。ギルド員たちが士気を高めるように雄叫びを上げ、扉を蹴破って部屋を飛び出す。
私はカーテンを開けて、窓から外を覗いた。
やっぱり王都だ。
マルデリの近くにある、一階がパン屋の建物の三階だろう。
「私は戻って、また連れてくるから」
「ああ、僕もゲートを繋げる」
ライナスが魔法陣を描き始めたのを確認して、フィンに目を向けた。
「ライナスのこと、守ってね」
「もちろんです。ステラさんも無理をしないでください」
フィンは心配そうに眉を下げる。
「ありがとう。それじゃあ戻るから」
転移魔法で再び店に戻る。
立て続けに三回も転移魔法を使ったから、頭が少しクラクラした。
一日に五回が限度だから、私が連れて行けるのはこれで最後。
セレスティアさんに場所を伝えると、十人くらいのギルド員は外から向かう、と駆けて行った。
もう少しだけ頑張らなきゃ。
ここに残っているギルド員が私の周りに集まる。
魔法陣が光を放つと、転移魔法が発動した。
目的の部屋に辿り着き、部屋の外から叫び声や金属がぶつかり合うような剣戟音が響いている。
ギルド員たちは次々に部屋を飛び出していった。
疲労から足がふらつき、フィンに支えられる。
「大丈夫ですか?」
「ちょっと疲れただけ」
「僕は戻る。ステラは休んでいろ。フィン、ステラを頼む」
「はい、任せてください」
ライナスが転移魔法を使い、部屋の中は私とフィンだけになる。
「ステラさんは俺の後ろにいてください。この部屋に入ってきた敵は倒しますので」
フィンが剣の柄を握り、扉の奥を睨みつける。
五分ほど経つと、扉が開いてフィンが剣を抜いた。
でも入ってきたのはギルド員二人で、一人が肩に腕を回して支えられている。
「こいつが怪我をしたから治して欲しい」
フィンは剣を鞘に収めた。
「はい、すぐに治します」
フィンが治癒魔法を使えるって知っているということは、レオンを助けた時にいた人なのだろう。
怪我をした人をイスに座らせると、フィンがその人の前で膝を突き、治癒魔法をかける。
怪我人を連れてきて人は私の方に歩いてきた。
フィンの代わりにこの人が守ってくれるのかな? なんて思っていたら、腕を掴まれて強い力で引っ張られる。背後から首元を太い腕でガッチリと拘束された。
反対の手にはナイフが握られており、冷たい金属が頬に触れて声すら上げることができない。
「お前、何してんだ!」
怪我が治った人が大声を上げ、こちらに背を向けていたフィンが振り返る。
驚愕に目を見張り、下唇を噛んだ。
ギルドに犯人の仲間がいるってわかっていたのに。仲間を助けるために戻ってきたんだと、完全に油断した。
「お嬢ちゃんの顔に傷をつけたくなきゃ、武器を捨てておとなしくしろ」
フィンたちが剣を私たちの足元に放る。私を拘束している人がそれを蹴り、剣は滑って壁に当たった。部屋の隅に二本の剣が落ちている。
「ステラさんを離せ。俺が代わりになるから」
フィンが普段とはかけ離れた低く重い声を出すが、私の後ろで男が嘲笑う。
「お前みたいな鍛えた男より、華奢なお嬢ちゃんの方が人質として楽なんだから、変えるわけねーだろ」
私は部屋を連れ出される。扉は閉められ、フィンたちと離された。
目の前ではギルドと犯人の激しい戦いが繰り広げられており、何人かが床に転がっている。
やっぱり犯人は六人ではなく、十人以上いたらしい。
「ギルドは今すぐに武器を捨てろ。このお嬢ちゃんがどうなってもいいのか?」
喧騒の中でも、よく通る声だった。
全員が動きを止めて、私たちに注目する。
ギルド員たちは仲間が私にナイフを突きつけていることに愕然としていた。
犯人たちがこちらに集まってくる。
私が捕まっていることで動けないギルド員の中にレオンもいた。視線が絡む。
私が最初に連れてこられたのはこの部屋だ。この部屋は、犯人のゲートがすでに繋がっている。
ここで転移魔法を使われたら、私はもう自力で逃げることはできない。
頬に触れているナイフの硬い感触に恐怖で視界が滲む。
嫌だ、怖い。でも、連れて行かれるのはもっと怖い。
瞼を下ろして呼吸を整える。
……大丈夫、刺されてもすぐにフィンが治してくれる。
奥歯を噛み締めて、瞼を持ち上げた。
レオンに向かって精一杯腕を伸ばす。
「レオン! 助けて、んぐ」
叫ぶと口を覆われた。
「ステラ!」
レオンが足を踏み出すけれど、犯人は腕を伸ばして、逆手に持ったナイフの先を私に向ける。
勢いよく刺される前に瞼をぎゅっと閉じて衝撃に耐えようとしたが、後ろから呻き声が聞こえて私を拘束する腕が解かれた。
足に力が入らなくて崩れ落ちそうになる体を、強い力で引かれた。
目を開けると、フィンの胸に顔を埋めていた。
フィンに片手でキツく抱きしめられる。
首を捻ると、フィンの剣がナイフを持っていた手に突き刺さっていた。
「怖い思いをさせて、すみません」
フィンの優しい声と体温がひどく落ち着いた。
私の無事を見届けて、ギルド員たちが再び武器を手に戦い始める。
「そこまでだ! おとなしく投降しろ」
白を基調に金糸の刺繍が施された隊服を着た騎士たちが扉を開く。
ライナスが連れてきてくれたんだ。
入口の方からも少し遅れて突入してきた。
セレスティアさんに場所を伝えておいてよかった。
人数で不利だと思ったのか、犯人たちは抵抗をしなかった。
だが、犯人たちの足元に魔法陣が浮かび上がる。
このまま逃げる気だ。
「その帽子を被っている男が転移魔法を使ってる。すぐに魔法陣の範囲から出して!」
私が叫ぶと、ギルドと騎士が犯人たちに一斉に攻撃を仕掛けた。
犯人たちは帽子の男を守ろうと盾になるが、人数差がありすぎて帽子の男は体を引っ張られて魔法陣の外に出る。
光っていた魔法陣が消えた。
「近くにいると転移魔法は使えるから、早くこの部屋から出して」
犯人たちは次々に拘束される。
帽子の男は魔法を制限されるブレスレットをはめられた。
どんな魔法でも使えなくなる。
これで逃げることはない。
安心したら腰が抜けたけれど、フィンに抱きしめられているから膝を折ることはなかった。
犯人たちが連れていかれたが、ライナスが後続の騎士を連れてきた。
「大丈夫か?」
ライナスが心配そうに声をかけてくる。
私はフィンの胸に手をついて腕を伸ばす。フィンの体が離れていった。
「フィンが助けてくれたから平気」
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