ミスティック・ツアーズ〜転移魔法の旅行会社〜

きたじまともみ

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24 お土産のドーナツ

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 次のエリアに行く途中でレストランを見つける。もうすぐ十二時になるから、お昼ご飯にしようと入店した。

 好きなものを注文して、運ばれてくると「いただきます」と声を揃えて食べ始める。
 隣の子とおかずを交換してよそ見をしているうちに、みんなは苦手なものを勝手に私のお皿に入れた。

「全部美味しいよ。苦手な食材もちゃんと食べなさい」

 それぞれに返して、食べ切るところを見届ける。
 お腹いっぱいになって、食後に搾りたてのフルーツジュースを飲んだ。

「前にステラちゃんがお土産で買ってきてくれたブドウジュース美味しかったね」
「気に入ったなら、また買ってくるよ」

 グタンのブドウジュースの味を思い出すと、口の中で唾液が溢れた。
 買いに行く時に、フィンも連れて行ってあげよう。イレーネさんたちに会いたいだろうから。

 そこでふと思考を止める。
 なんでさっきから、フィンのことばかり思い出しているんだろう。
 やっぱり絆されてる?

「ステラちゃん、次のところ行こうよ」

 全員飲み終わっていて、私はジュースをあおる。

「そうだね、次に行こう」

 ノエルと手を繋ぎ、ゾロゾロとお店を出る。
 今はこの子達とパークを楽しむことだけ考えよう。フィンのことは頭の隅に追いやった。

 次のエリアはマジパンで作られた可愛らしい動物が戯れていた。
 ここは動物たちと触れ合うことができ、ネコやウサギを抱っこさせてもらう。

 普段触ることのできないライオンやワニも撫でられて、子供たちは興奮して叫び声を上げている。

「もうすぐ動物たちのショーがあるので、よろしければいかがでしょう?」

 キャストの人が声をかけてくれて、席に案内してくれた。
 ワクワクと期待に胸を躍らせながら「楽しみだね」と待つ。

 動物たちが舞台に姿を現した。
 まずは軽快な音楽に合わせてダンスを披露してくれる。
 手拍子をして応援した。

 小さな鳥やネコは可愛らしく、大きなゾウやカバは迫力満点。
 大きなボールを転がしたり、縄を飛んだりと盛り上がる。
 最後に全員が浮いている輪をくぐって決めポーズをとり、ショーが終了した。

「あれってどうやって動いてるの?」
「どうだろう? 風の魔法とか?」

 セレスティアさんは風を操って空を飛んだり物を浮かせたりする。セレスティアさんの魔法に似ている気がした。

 その後もビスケットで作られた迷路や、隠されたキャンディーを探す宝探しと、楽しい体験型アトラクションを満喫する。

 一番小さなノエルははしゃぎ疲れて眠そうにしていたからおんぶをした。すぐに寝息が聞こえる。
 背中が温かく湿り、涎を垂らされたな、と苦笑した。

 みんなでのんびりパーク内を歩き、ショトケーキのように白くて大きなホールに入った。
 その中は入り口でもらったお菓子を飾りつける、お菓子の家が連なっている。
 今までパークに遊びにきた人たちが全員で作り上げた、立派な家だ。

「好きなところに飾り付けしていいけど、終わったら戻ってきてね」

 みんなは一斉に駆け出した。

「ノエル起きて。お菓子の家を作ろう」

 むにゃむにゃと聞こえたから降ろすと、ノエルは目を擦りながら私の指を握る。

「はい、ノエルのお菓子」

 星型のクッキーをポシェットから出せば、一気に覚醒したように顔を明るくした。ノエルは大事そうに両手で受け取る。

「どこに飾ろうか?」
「屋根の上がいい」

 ノエルを抱き上げると、屋根の上にそっとクッキーを乗せる。

「いいなー。私も屋根の上に飾ろうかな」
「ステラちゃん、ぼくの隣が空いてるよ」

 ノエルが「ここだよ」と指を差して教えてくれる。

「一緒に乗せようか」

 マカロンを二人で持って、星型のクッキーの隣に飾った。
 ノエルの屈託のない笑顔を見て、私も口元が緩む。

 入り口に戻ると、全員が集まっていた。
 ホールを出ると、空は青からオレンジに変わろうとしていた。

「帰る前にお土産ショップに寄ろう。ドーナツがすごく美味しいから、みんなで買って食べよう」

 ティナが「私はいらない」と呟く。

「なに? また遠慮してんの? 気にしなくていいって言ったでしょ」
「そうじゃなくて、私の分でママとパパに買って欲しいの」
「僕もいらない」
「私も」
「俺も」

 みんなが自分はいらないから、大好きなママとパパにお土産を買いたいとねだる。いい子たちすぎて、目頭が熱くなった。

「ドーナツは全員分買うし、もちろんママとパパにも買うから。みんなで一緒に食べるんだからね」

 それぞれ好きな味のドーナツを選び、ママとパパにも全員で真剣に味を選んでいた。

 別でシンプルなドーナツを四つ買い、明日お店に持って行こうと決める。
 名残惜しく思いながら、パークを出た。

「帰るよ。私の周りに集まってね」

 行き同様、私を中心にぎゅうぎゅうに固まる。
 魔法陣が光を放った。

「王都のフィルチ孤児院へ」

 眩しい光に全身が包まれる。
 すぐに光は消え、目の前には孤児院が現れた。

 中庭でママとパパが「おかえり」と優しく出迎えてくれる。
 建物に入って手洗いを済ませると、テーブルにパンとシチューが並んでいた。

 そこに買ったばかりのドーナツも添える。
 ママとパパの席にも配り、嬉しそうに「ありがとう」と言われると、みんなが満面の笑みを見せた。

 食事をしながら思い出話を聞かせ、ママとパパは笑顔で相槌を打ちながら聞いてくれる。

 私が選んだドーナツは、なにもついていないプレーン味。
 揚げているのにふわふわと軽くて、噛めば噛むほど小麦粉の優しい甘さが口の中に広がる。
 これだけでも美味しいけれど、大好きなみんなと食べるからもっと美味しい。
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