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25 社員旅行先
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翌朝はフィンが迎えにきて、一緒に仕事に向かう。
お土産のドーナツをセレスティアさん、ライナス、フィンに渡した。
残る一つはオーナーのために取っておく。
「ステラは食べないの?」
「私は昨日食べました。すっごく美味しいので食べてください」
ここでも食べるために、もう一つ多く買っておけばよかったと後悔する。
ライナスがドーナツを半分に割って、私に差し出した。
「そんなに見られると食べにくい」
「一緒に食べる方が美味しいですよね」
「ステラも一緒に食べましょう」
フィンとセレスティアさんも半分ずつくれて、私の手には一個半あることになる。
「私が一番いっぱいになった」
「いっぱい食べてください」
「ありがとう!」
半分こしてくれたドーナツは時間が経っているのに、幸せいっぱいの味がした。
開店直前にオーナーが「おはよう」と大きな声で入ってくる。
ドーナツを渡すとペロリと食べきって、「どこのドーナツだ?」と聞かれた。「リトルパフベールだよ」と教える。気に入ってくれたみたいで嬉しい。
オーナーはカウンターの前のイスに座る。いつも通りイスが悲鳴を上げた。
オーナーが座るたびに壊れるんじゃないかと思って見ているけれど、丈夫なようでなかなか壊れない。
「社員旅行なんだが、子供たちがエーテルナに行きたいと言っているんだがどうだろうか?」
ライナスとセレスティアさんは「いいですね」と相槌を打つが、フィンは入社間もないからどんなところかわかっていないようで目を瞬かせていた。
「エーテルナはどんなところなんですか?」
フィンは隣のセレスティアさんに聞いている。
「エーテルナは水の都と呼ばれている、とっても綺麗な街よ。街の中を運河が流れていて、街の中心にある大きな噴水が観光スポットとして人気ね」
パイシチューが名物で、美味しいものがある場所という私のリクエストも叶っている。
「フィン、一泊二日で宿を手配してくれ。予算は一人ニ万ゼニー。俺の家族が泊まる四人部屋が一部屋と、セレスティアとステラ、ライナスとフィンの二人部屋が二部屋」
「はい、わかりました」
フィンは背筋を正す。
「お子さんはなぜエーテルナを選んだんですか? あまり子供向けの街ではないと思いますが」
ライナスが訊ねるが、オーナーは水晶端末を操作して画面を見せる。
「お姫様の格好がしたいんだと」
画像を見せられる。民族衣装を着ている女性が写っていた。
トップスは胸の部分だけが隠れており、肩やお腹が出ている。透け感のあるパンツはゆったりと脚を包み、足首で絞られていた。キラキラとした装飾がエキゾチックな雰囲気を醸し出している。
「絵本に出てくる砂漠の国のお姫様が、こういう格好をしてるんだよ。それに最近ハマっていて、同じ格好がしたいからエーテルナに行きたいと言っていた」
フィンが真剣な瞳で画面を見ていた。
「オーナーのお子さんは、お姫様に憧れているんですね。それならホテルもお城みたいなところがいいですか?」
オーナーがフィンの頭を雑に撫でる。
セレスティアさんは顔の横で手を合わせて、顔を輝かせた。
「フィン、素敵な考え方ね。お客様のことを第一に思っている証拠よ」
「接客を一人で任せてもいいんじゃないか?」
「そうですね。練習してみましょうか。予算二万ゼニーで、フィンの考えるホテルをプレゼンしてみて」
オーナーとセレスティアさんに褒められて、フィンは「はい」と声を弾ませて水晶端末を操作する。
真剣に選んでいる途中に開店時間になり、ライナスがドアの札をオープンに変えに行く。
フィンの引き結ばれていた口が綻んだ。
「ここなんていかがでしょう? ホテルの外観は真っ白で洗練されていて、室内はおとぎ話に出てくるお姫様の部屋のイメージそのものです」
広々とした部屋の中では、天蓋付きの大きなベッドと、繊細な彫刻が施されたドレッサーが目を引いた。
レースのカーテンも柔らかそうなソファも、お姫様気分を高めてくれる。
オーナーが首を捻り、セレスティアさんは口元を押さえてフィンに耳打ちをする。
「フィン、素敵なお部屋だけれど、ゼロが一つ多いわ」
フィンが目を見張って、慌てて視線を下げる。
人差し指で数えて、値段に青ざめた。
「一泊で二十万ゼニーなんて部屋があるんですか?」
「あるわ。もう一つゼロが多いホテルもあるところにはあるの」
フィンは慌てて「すみません!」と頭を下げる。下げすぎてカウンターに額をぶつけていた。
「落ち着け。おかしいと思ったんだよ。二万ゼニーでこんな部屋に泊まれるのかって」
オーナーが「気にするな」と豪快に笑いながらフィンの肩をバシバシ叩く。
「これはフィンに任せた仕事だから、頑張れよ」
「はい、わかりました」
「今すぐに決めなくてもいいから、ゆっくり悩め。決めたらセレスティアに確認をしてもらって予約を取ってくれ」
フィンは肩をすくめて「すみません」と漏らす。
「大丈夫よ。一番大切なお客様のことを考えるということがフィンはできているから。あとは慣れるだけ」
「はい、頑張ります!」
フィンはセレスティアさんのアドバイスを、メモを取りながら聞いている。
「今日は旅行のお客様はいるか?」
「お昼前に二組と、夕方に一組お迎えがあります」
「じゃあ時間はあるな。ステラとライナスをギルドに連れて行くから、セレスティアとフィンの二人で頼むぞ。昼前には戻るから」
「はい、わかりました」
私とライナスはオーナーの後を追って店を出た。
歩きながら口を開く。
「ギルドで何をするの?」
「業務提携を結んだだろう。ギルドマスターがギルド本部にゲートを繋いで欲しいと言っていた。うちの店だと大人数は入れなくて、外で待たせてしまうだろ? そういう時はギルド本部に行って、転移魔法を使って欲しい」
ギルド本部に着き、広いエントランスでギルドマスターに立ち会ってもらいながら魔法陣を描いて行く。
ライナスの方が先に書き終わっていて、書き方のクセを変えるのはまだ難しい。
でもいつかライナスより早くゲートを繋げるようになりたいし、転移回数だって増やしたい。
「二人とも、よろしくお願いします」
ギルドマスターがゆっくりと腰を折る。
私とライナスも慌てて頭を下げた。
ゲートを繋いでお店に戻ると、フィンが一生懸命接客をしていた。
セレスティアさんは見守りながら、サポートに徹している。
フィンが一人で接客をする日も近そうだ。
お客様を案内して、経費でランチを食べて、閉店時間まで働いた。
お土産のドーナツをセレスティアさん、ライナス、フィンに渡した。
残る一つはオーナーのために取っておく。
「ステラは食べないの?」
「私は昨日食べました。すっごく美味しいので食べてください」
ここでも食べるために、もう一つ多く買っておけばよかったと後悔する。
ライナスがドーナツを半分に割って、私に差し出した。
「そんなに見られると食べにくい」
「一緒に食べる方が美味しいですよね」
「ステラも一緒に食べましょう」
フィンとセレスティアさんも半分ずつくれて、私の手には一個半あることになる。
「私が一番いっぱいになった」
「いっぱい食べてください」
「ありがとう!」
半分こしてくれたドーナツは時間が経っているのに、幸せいっぱいの味がした。
開店直前にオーナーが「おはよう」と大きな声で入ってくる。
ドーナツを渡すとペロリと食べきって、「どこのドーナツだ?」と聞かれた。「リトルパフベールだよ」と教える。気に入ってくれたみたいで嬉しい。
オーナーはカウンターの前のイスに座る。いつも通りイスが悲鳴を上げた。
オーナーが座るたびに壊れるんじゃないかと思って見ているけれど、丈夫なようでなかなか壊れない。
「社員旅行なんだが、子供たちがエーテルナに行きたいと言っているんだがどうだろうか?」
ライナスとセレスティアさんは「いいですね」と相槌を打つが、フィンは入社間もないからどんなところかわかっていないようで目を瞬かせていた。
「エーテルナはどんなところなんですか?」
フィンは隣のセレスティアさんに聞いている。
「エーテルナは水の都と呼ばれている、とっても綺麗な街よ。街の中を運河が流れていて、街の中心にある大きな噴水が観光スポットとして人気ね」
パイシチューが名物で、美味しいものがある場所という私のリクエストも叶っている。
「フィン、一泊二日で宿を手配してくれ。予算は一人ニ万ゼニー。俺の家族が泊まる四人部屋が一部屋と、セレスティアとステラ、ライナスとフィンの二人部屋が二部屋」
「はい、わかりました」
フィンは背筋を正す。
「お子さんはなぜエーテルナを選んだんですか? あまり子供向けの街ではないと思いますが」
ライナスが訊ねるが、オーナーは水晶端末を操作して画面を見せる。
「お姫様の格好がしたいんだと」
画像を見せられる。民族衣装を着ている女性が写っていた。
トップスは胸の部分だけが隠れており、肩やお腹が出ている。透け感のあるパンツはゆったりと脚を包み、足首で絞られていた。キラキラとした装飾がエキゾチックな雰囲気を醸し出している。
「絵本に出てくる砂漠の国のお姫様が、こういう格好をしてるんだよ。それに最近ハマっていて、同じ格好がしたいからエーテルナに行きたいと言っていた」
フィンが真剣な瞳で画面を見ていた。
「オーナーのお子さんは、お姫様に憧れているんですね。それならホテルもお城みたいなところがいいですか?」
オーナーがフィンの頭を雑に撫でる。
セレスティアさんは顔の横で手を合わせて、顔を輝かせた。
「フィン、素敵な考え方ね。お客様のことを第一に思っている証拠よ」
「接客を一人で任せてもいいんじゃないか?」
「そうですね。練習してみましょうか。予算二万ゼニーで、フィンの考えるホテルをプレゼンしてみて」
オーナーとセレスティアさんに褒められて、フィンは「はい」と声を弾ませて水晶端末を操作する。
真剣に選んでいる途中に開店時間になり、ライナスがドアの札をオープンに変えに行く。
フィンの引き結ばれていた口が綻んだ。
「ここなんていかがでしょう? ホテルの外観は真っ白で洗練されていて、室内はおとぎ話に出てくるお姫様の部屋のイメージそのものです」
広々とした部屋の中では、天蓋付きの大きなベッドと、繊細な彫刻が施されたドレッサーが目を引いた。
レースのカーテンも柔らかそうなソファも、お姫様気分を高めてくれる。
オーナーが首を捻り、セレスティアさんは口元を押さえてフィンに耳打ちをする。
「フィン、素敵なお部屋だけれど、ゼロが一つ多いわ」
フィンが目を見張って、慌てて視線を下げる。
人差し指で数えて、値段に青ざめた。
「一泊で二十万ゼニーなんて部屋があるんですか?」
「あるわ。もう一つゼロが多いホテルもあるところにはあるの」
フィンは慌てて「すみません!」と頭を下げる。下げすぎてカウンターに額をぶつけていた。
「落ち着け。おかしいと思ったんだよ。二万ゼニーでこんな部屋に泊まれるのかって」
オーナーが「気にするな」と豪快に笑いながらフィンの肩をバシバシ叩く。
「これはフィンに任せた仕事だから、頑張れよ」
「はい、わかりました」
「今すぐに決めなくてもいいから、ゆっくり悩め。決めたらセレスティアに確認をしてもらって予約を取ってくれ」
フィンは肩をすくめて「すみません」と漏らす。
「大丈夫よ。一番大切なお客様のことを考えるということがフィンはできているから。あとは慣れるだけ」
「はい、頑張ります!」
フィンはセレスティアさんのアドバイスを、メモを取りながら聞いている。
「今日は旅行のお客様はいるか?」
「お昼前に二組と、夕方に一組お迎えがあります」
「じゃあ時間はあるな。ステラとライナスをギルドに連れて行くから、セレスティアとフィンの二人で頼むぞ。昼前には戻るから」
「はい、わかりました」
私とライナスはオーナーの後を追って店を出た。
歩きながら口を開く。
「ギルドで何をするの?」
「業務提携を結んだだろう。ギルドマスターがギルド本部にゲートを繋いで欲しいと言っていた。うちの店だと大人数は入れなくて、外で待たせてしまうだろ? そういう時はギルド本部に行って、転移魔法を使って欲しい」
ギルド本部に着き、広いエントランスでギルドマスターに立ち会ってもらいながら魔法陣を描いて行く。
ライナスの方が先に書き終わっていて、書き方のクセを変えるのはまだ難しい。
でもいつかライナスより早くゲートを繋げるようになりたいし、転移回数だって増やしたい。
「二人とも、よろしくお願いします」
ギルドマスターがゆっくりと腰を折る。
私とライナスも慌てて頭を下げた。
ゲートを繋いでお店に戻ると、フィンが一生懸命接客をしていた。
セレスティアさんは見守りながら、サポートに徹している。
フィンが一人で接客をする日も近そうだ。
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